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0 その世界

 伝承のドラゴンを象った銀色の機体。その宇宙戦闘機のコクピットで、海賊を思わせる黒いトリコーン帽子と赤いバンダナ姿の乗組員が二人。

 操縦席はセパレートではなく、ある程度スペースが確保されており身動きも取りやすい。


 そんな戦闘機は、光速の10分の一程度のスピードで宇宙を滑走する。

 光速に近づくと、光の粒子が機体に流れそれが波の様に見えていた。


 前面に表示された近隣マップを確認しながら赤いバンダナの20代の女が、もう一人の30代の女へ声をかける。


「少佐、次のジャンプゲートを超えれば合流地点です。都合良くまだ警備艇も常駐艦だけの様です」


「ふっ、まだ任務中だ。呼称は今まで通り《《カシラ》》でいいぞ。にしても敵の動きが遅いな」


 言いながら少佐と呼ばれた女は帽子のツバ先を指で挟み微笑する。


「何十年も二人で盗賊の真似事をしてたもので、合流前に今の言葉遣いを戻しておこうかと。それと帝国にとっては過去の遺物で既に必要の無い物とでも思ってるのではないでしょうか」


「そうかもしれんな……(いいのか悪いのか正直わからんが」


「なにか?」


「いや、なんでもない。では中尉もう一度積荷の確認をした後、ジャンプゲートを使用して王国に戻るとしよう」


「アイアイマム」


 

――――

――その頃、とある大国の謁見の間にて。 


 貴族の集団が頭を垂れ、そのままの姿勢で赤い絨毯が敷かれた部屋と言うには余りにも広いホールを後にする。

 輝く鎧を纏い剣を掲げる兵を両側に配し、階段を数段上がった玉座に座るその国の王。

 詳しくは帝国の皇帝である。

 そこに控える宰相らしき人物が光の円盤に乗り込み、退場する貴族達を見届けながら皇帝に耳打ちする。

  

  

「陛下。神が盗まれました」


「……は?」


「ですから神が盗まれました」


 皇帝は自身の頭に手をやりつつ。


「我のお気に入りの金髪ツインおさげのやつか!」


「陛下、カツラの話ではありません。天にまします神の事でございます」


「そっちであるか……過去の遺物ではある神など今更大事でもあるまいて」


 その言葉に初老に当て嵌まるであろう見た目の宰相が深く頭を垂れる。


「……だが盗まれたと言うのは聞こえが悪いな」


「はい、賊は少数ですので辺境の警備隊のみで対応すれば世間にも広まらず大事に至る事はないかと」


「ふむ。ではそれで」


「御心のままに」

 


――――

――


 人類が宇宙に出たのはいつの頃だろう。

 既にその歴史は過去の物となり、人がどの惑星から発生したのかすら記録を残す星は無い。

 宇宙の広大な距離をゼロとしてしまうゲートが出来て数億年、宇宙の謎はほぼ無くなり。

 人類の寿命は既に五百年を超え千年に至る者まで存在する。


 精神世界すら解析可能となりつつある世界。


 これは永遠の時を刻む宇宙で、ほんの一瞬を駆け抜けた一人の男の物語。


 


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