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まちまちリライト  作者: なつみかん


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25/25

Episode.25 ↑↗→↘↓↙←↖↑+○

あたしは上空を見上げてスマホを握りしめる。

二機は空中で勢いよくぶつかり

ギアナイトが押し負けて、勢いよく後方に飛ばされた。

よし! 運動量はFAタケシが上! いける!


あたしは急いでスマホでコマンド入力。

【→↓↘+□】

FAタケシが間合いを詰め、

縦回転しながらアッパーを繰り出す。


ギアナイトはバシュッと避ける。

早い! 小柄な体の機動力は伊達じゃない。


「うぉぉぉ……目が回る、気持ち悪りぃ」

スマホからタケシくんの通信がノイズ混じりに聞こえる。


――ドカッ!!

回転アッパーのモーションの隙を突いて

敵はFAタケシに掌打で衝撃波を打ち込んだ。


「ごふっ!」

FAタケシは空中で飛ばされるが、

装甲に傷など付いてない。さすがだよ! ナノダイヤ装甲!


しかし、その後もFAタケシは

大振りのラッシュ攻撃を繰り出すも

ことごとく躱されてカウンターを食らっていた。


「ねぇ、コマチ、タケキュンの攻撃当たらないよ?

 マジで大丈夫?」

むっちゃんが聞いてくる。

確かに……このままじゃジリ貧になっちゃう。


そういえば、あたしスマホでタケシくんを操縦してる。

これじゃリライトの数式打ち込めないじゃん!

……もしかして、本末転倒なのでは?


「こ、コマっちゃーん、

 これ俺が中に入ってる意味あんのかーっ?!」

悲痛なタケシくんの声。


……作戦失敗、そんな単語が頭をかすめた。

でも、あたしは強引に首を振ってねじ伏せる。


「大丈夫だよ! FAタケシには秘策があるから!」

そうだ。初めてしまったものは仕方ない!

【←↙↓↘→+△】さっさとコマンド入力。


「くらえーっ! フィンガーミサイルー!」

ロボアニメさながらあたしが叫ぶと、

FAタケシがさっと両手を前に伸ばす。


――ドバババババッ!

掲げたFAタケシの指先から

次々とミサイルが発射された。


「あっちぃ! 指、いってぇーーー!」


ギアナイトは当然ミサイルをかわす。――甘いっ!

これは追尾型……ホーミングミサイルだよっ!

ミサイルは急旋回で敵を追いかけ、そのまま着弾。


――ドババババーーーーン!!

敵は爆煙に包まれ視界を遮られている。

今だ! あたしはすかさずコマンド。

【↑↗→↘↓↙←↖↑+○】


FAタケシは爆煙に突っ込み。

敵をガシッとキャッチすると敵を逆さまにして固める。

そのまま超回転して地面に墜落!


「うおぉぉぉ! 死ぬ! 死ぬぅぅぅ!」


――ドッゴォォォォン!!!

爆音とタケシくんの悲鳴ともに

地面を円形状に陥没させる。

ギアナイトは上半身が地面に埋まり沈黙していた。


「……や、やったの?」

FAタケシをあたしたちのほうに来るように操縦する。


「こ、コマっちゃん……体中が痛ぇよ。

 あと、回りすぎて吐きそう……」


そりゃそうだ。本来なら重くて動けないほどの装甲を

脳波を操り、無理矢理猛スピードで動かされてたんだ。

三日くらいは筋肉痛でまともに立てないかもしれない……


「ごめんね。でもタケシくんのおかげでやっつけたよ」


「さっきも言ったけど……本当にこれ、

 俺が中に入ってるの……意味あるのか……?」

ヘロヘロになりながらドスンと倒れ込む。


「…………も、もちろんだよ。

 タケシくんにしかできないことだよー」


嘘をつくしかない……

これってタケシくんが入ってなくても

ラジコンでよかったよね……


冷静に考えると、とんでもないことしちゃった。

本日、二度目の自己嫌悪……

むっちゃんもピクピクしたタケシくんを見て

「あわわわ……」と顔面蒼白。


空気が重い……あたしの暴走のせいだけど……


しかし、そんな空気も読まずに、

二体目のギアナイトが上空から接近してきた。


……まずい! タケシくんごめん、

今はもう一度、FAタケシを動かすしか……!

あたしが慌ててスマホを握り直すと――


「大丈夫ですよ」

ユウヤさんがいつの間にか隣に来ていた。

機械の腕を前に突きだして構えている。


「……バリエール」

目の前に薄いピンクの幕が広がる。

細身のギアナイトが接近して幕に触れる。


――バリバリバリッ!!

幕に弾かれ敵が距離をとる。


「ユウヤさん! ありがとう」


「いえいえ、コマチさんが連れ去られるのは

 僕にとっても大問題ですから」

ニコリと微笑みながら話し、FAタケシを見る。


「しかし……無茶しますね。

 常人はあんな負荷、耐えられませんよ?」


「み、見てたの?!」


「こちらに向かいながら、ですけどね。

 マチさんといい、あなたといい……

 まぁ、同一人物なんだから当たり前か」

呆れたようにため息。


「そ、それより!ユウヤさん、あいつ倒せるの?」

この話題からは速攻で逃げたい。

あたしは目の前の戦闘に話題を戻す。


「無理ですね」

いとも簡単にあっさりと言う。


「そんな、諦め良すぎない?!」


「僕も前衛で戦える能力はないし、

 コマチさんやマチさんのようにリライトもできない、

 ギアアームの量子トンネルは、

 ある程度座標が定まらないと、それに充填式です」


「おまけに、今度の彼は機動が早い。

 僕のギアアームはもちろん、

 コマチさんの写真でも捉えられないでしょうね」


「うぅ……それは確かに……」


「このままバリアを張って、

 ツトムくんとマチさんが来るのを待ちましょう」


「ツトムきゅん……もうすぐ来ちゃうのかー……」

バチバチと放電している肩を

そっとあたしの背中に隠すむっちゃん。


「もー、そんなに心配しなくても平気だよ」


「いやいやいや、むっちゃん、

 ツトムきゅんにバイバイも言っちゃったっしょ?

 ガチで恥ずいし! ドキドキするー!」


「ドキドキって……どこがです?」

不思議そうにまじまじと胸を見るユウヤさん。


「ちょっ! ユウヤさん! デリカシーっ!

 ニュアンスですよ!ニュアンス!」


「あぁ……はい。すみません」

そう言って視線を前に向けて、ポツリとこぼす。

「でも、彼女がツトムくんを連れて行っていたら

 完全に詰んでいた。良かったです」


そっか、私たちの中で敵の攻撃に耐えられるのは

ツトムくんしかいない……

だから、むっちゃんを使って切り離そうとしたんだ。


肩を隠くそうと不安げに瞳を揺らす、むっちゃんを見る。

……そうだ。ユウヤさんにお願いがあったんだ。


「ユウヤさん、むっちゃんの腕のことなんだけど

 この戦いが終わったら――」


「直しませんよ」

ピシャリと言う。


「え? どうして……?」


「僕がこの時代にきたひとつめの理由、言ったはずです。

 ギアナイトの消滅。例外はありません」

いつも飄々としてるユウヤさんなのに、

これ以上話すなと圧をかけるように瞳が曇る。


「で、でも……っ!」

ギアナイトの設計者、

この人ほどむっちゃんの修理を頼むのに

最適な人なんていない!


「あっ、新手、来ますよ」


――ヴゥゥーン

ユウヤさんがそう言うと、上空が大きく歪み

黒く大きな渦ができる。


――ドッシーーーン!!!

その中から10メートル級の

巨大なギアナイトが落ちてきた。

着陸しただけで大地が震え、

あたしたちは一斉によろめく。


大きい……イカつくデコったFAタケシが

オモチャに見える。


「これはまずい。あの質量で攻撃されたら

 このバリアも保ちませんね」


「えぇっ! じゃあ早く逃げないと……!」

あんな巨大ロボが目の前に現れると

さすがにパニックになるしかない。


「待ってください、ここから出たら

 そこにいる細身のギアナイトの餌食です」


じゃ、じゃあ四人まとめてワープ?

ダメだ、FAタケシが大きすぎて

みんなでスマホの画面になんて入りきれない!

それに今から数式打ち込んで間に合うかどうか……


ユウヤさんは「むぅ」と思考して、一言。


「……万事休す、ですね」

ふぅっとため息。あっさり諦めモード。

この人、死ぬのが怖くないの?!


ドシン、ドシン、と巨大ギアナイトが近づく。

あたしはまだ見えない次の一手を探し続けていた。

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