3話
奉公を辞め野に下り、尾張国で針売りをしていた藤吉郎は織田信長への仕官を考えだし那古野城へと向かった……
尾張国中村周辺
藤吉郎「針~針はいらんか~?ええ針だで見てかん?」
青年「藤吉、侍なる言うてまた戻ってきて針売っとるんか」
藤吉郎「うるせえで、わしはこまきゃあ(細かい)もん作るん得意なんだわ」
青年「たあけた事抜かしおって、ははは、ほんならたわけたおみゃあにはたあけた殿様がよう合う思うでよ、織田のうつけ様知っとる?」
藤吉郎「……そら聞いたぐりゃあならな……でえりゃあたわけたお殿様ぐらいは……」
青年「おみゃあ口だけはよう利くで、一度お願いしに参られたら?」
藤吉郎「織田のか?何を……どないな人か分かりゃあせん……」
青年「試しに行きゃあええがや、使ってくだせえってな、あかんかったら又針か野菜でも売りゃあええがや」
藤吉郎「…………(信長様か…………行くか…………)」
尾張那古野城
門番「何用か」
木下藤吉郎(17)「もし!織田様の奉公行いたく馳せ参じました!」
門番「……奉公の志願か、しばし待たれよ!志願の者来たで案内人呼べ…」
案内人「お主か?奉公の志願の……」
藤吉郎「はっ!是非にと!」
案内人「ほんなら付いてき」
藤吉郎「はっ!」
案内人「しばらく城ん中でよ、寝泊まりするけどええな?」
藤吉郎「はっ!」
案内人「おみゃあええ格好して来たつもりかも知らんがみすぼらしいのう」
藤吉郎「はっ……これはこれは(この者めが……)」
案内人「しばらくは掃除片付け馬の餌やりとそんなもんだわ、そこだわ」
粗末な掘っ立て小屋に入ると小汚ない男10数人が座り談笑していた
案内人「おい!新入りだで!色々教えたってちょ!ほなあな、頑張りいや!」
男「名は?」
藤吉郎「木下藤吉郎と言います!」
木下藤吉郎が那古野城で奉公して2ヵ月後……
藤吉郎「ほんで、そのジジイにでえりゃあ怒鳴られてまって逃げ回したんだわ!」
男衆「ははははははははは!!」
藤吉郎「ほんでそのあとまた戻ってわし、また同じ事しよう思うたら又そのジジイによ!また追い回されてよ!」
男衆「ははははははは!!」
藤吉郎は機転の良さと話上手で気配りな性格の事もあって小者衆の心を掴み、全員が藤吉郎の味方になっていたと言う……