4話
よく働く藤吉郎は信長の馬引きを任され、そして信長の最愛の女性である生駒吉乃邸へと派遣された……
男「今日はよ、おみゃあ大殿様の馬引かすわ、御無礼な事すんな」
藤吉郎「大殿の……」
男「ずっと馬の綱持って門まで歩きゃええて、大殿様が馬乗ったら馬引っ張って門まで綱持って歩くだけだがや、大丈夫だでよ、おみゃあ口達者だで余計な事言わんようにのう」
藤吉郎「はい」
男「大丈夫だぎゃ、おみゃあなら何でもやれそうだで」
藤吉郎「いやあ、へへ……(わしが信長様の馬の手綱引くんか……おそぎゃあて(恐ろしい))」
侍「大殿様おいでになられるゆえ馬の用意いたせ!」
木下藤吉郎「はっ!」
馬を引いて城の出入り口に連れてゆく
藤吉郎「…………」
城の出入り口から上品な衣装を身にまとった長身で端正な顔立ちの青年が足早と姿を現す
藤吉郎「あ………………」
青年は藤吉郎の引く馬の元へ駆け寄ると素早くまたがった
藤吉郎『引かねば!引かねば!』
藤吉郎は無我夢中で門外まで馬を引いていった
男「藤吉郎!どうだった!」
藤吉郎「もう…………でぇりゃあて……あれが…………」
男「慣れりゃあ大した事ねえで、俺らおみゃあがまたべらべらといらん事話しおって斬られてまったかと案じとったんだわ!」
藤吉郎「ははは、そらねえて…………」
藤吉郎『あれが…………織田の信長様か…………とんでもねえお方だがや……』
城の者「藤吉郎!」
木下藤吉郎「はっ!」
城の者「おみゃあの働きよく耳にするで、ようやっとるみたいだの」
藤吉郎「ありがとうごさいます」
城の者「だで、生駒さま(信長の側室)の方へ回ってくれんか?」
藤吉郎「いこまさま……はい、それはもちろんどこへでも!(誰だぎゃ…)」
城の者「ほんならすぐ行こみゃあ、わしが連れてくでよ、付いて来やぁ」
藤吉郎「はい!(えぇ…………)」
那古野城から三里も歩かない内にある大きな屋敷に辿り着く
城の者「ここでよ、城ん時のような働きしてくれたらええわ、しばらくここで精出してちょう」
藤吉郎「はい」
城の者「ほんで奉公しとるもんババア1人しかおらんのだわ、おみゃあ評判ええで頼んますわ」
藤吉郎「はい!(どうなるもんか…………まあなんとかなるか)」
生駒の方の屋敷に来て5日目
藤吉郎は持ち前の器用さで生駒邸でもうまく仕事をこなしていた……
奉公婆(60代)「おみゃあさんほんまにえりゃあ働きなさるなぁ」
藤吉郎「いや、御城でやっとった事を必死にやっとるだけだがや、はははは」
奉公婆「ほんまに助かるわ、ほんまに!おみゃあさん来る前まではよ、来るもん来るもん全然働かんもんとか逃げ出しおったりするもんばっかでよ、ほんまに助かるわ!」
藤吉郎『こんな程度で逃げ出すもんがおるんか、わしはこんなん比べもんに出来ん程の辛い事やってきたでよ……』
奉公婆「藤吉郎!」
藤吉郎「はい」
奉公婆「一度吉乃様にお顔お見せせんとかんで、あんの、付いて来やあて、お顔お見せなかん、せなかん」
婆さんが立ち上がり奉公人部屋を出る
藤吉郎「え?」
奉公婆「付いてこやぁ」
婆さんが廊下を進んでゆく
藤吉郎も後に続くと襖4枚で閉ざされた広いであろう部屋の前に着いた
奉公婆「もし、もし」
?「お千?」
奉公婆「はい、きつの様よろしいでしょうか?」
?「どうぞ」
婆さんが襖を開くと20畳ほどの豪華な部屋が姿を現した
そしてその部屋の隅で、灯りのたもとで書物を片手に座っている若い女性がいた
藤吉郎『どえりゃあべっぴんだがや…………なんだぎゃこのお方は……』
奉公婆「吉乃様、こちら此度あたらしゅう入られた木下藤吉郎言う奉公の者です」
木下藤吉郎「こ、こ、こたび那古野の御城から参りました木下藤吉郎ともうしまする!!」
生駒の方「これはこれはようお越しくだされました」
藤吉郎「はっ!!!!!!」
生駒の方「千(奉公婆)1人では大変でと案じておりましたので、そなたがおいで頂いて安心いたしまする」
藤吉郎「はっ!!!!!!!有り難きお言葉に御座ります!!!」
生駒の方「御城にても、よう働いておられたと耳にしておりますよ」
藤吉郎「えっ………………(この天女のようなお方がわしの事知っておられたのか……)」
生駒の方「こちらでも、よう働いてくださりまし、大殿様(信長)もよう参られまするゆえに」
藤吉郎「はっ!!(大殿様もよう来られる……顔覚えていただけるかもしれんて)」




