お嬢様はいつも一人
土曜日は学校が早く終わって、執筆日和です。
「にしても、まだ人は少ないわね」
妖怪の賢者、八雲紫が創った幻想郷は俺の知っているときほど人がいない。まあ、まだ西暦1000年にもなっていないのだから仕方がないか。文はこの時代にすでに新聞を始めている。なかなか進んでいるな、幻想郷は。
「でも仕方ないだろ。大体誰を連れてくる気だよ」
「私の友達なら外にいるんだけどねぇ、その子人間だし」
「あややや、新しい人が来るならこれもスクープしないとですね!」
妖怪と友達っていう人間は、そうは多くない。どんな奴なんだろうか。
「そいつに会いにいかないか?」
「あ、いいわよ。あの娘いつも家にいるから」
少女はいつも家にいた。しかも一人で。理由?それはあるけどやはり普通でない。
「はあ、これも全部桜と父上のせいだわ」
少女、西行寺由々子はおのれの不運を嘆いていた。有名な歌人であった父は生前よく桜を使った句を多く詠んでいた。そして死ぬ時も家の庭にあるあの桜のたもとで死んだのだ。そこまでなら桜好きだったで終わるかもしれない。しかし父の意志は桜に吸われ、桜は妖怪となった。そして生きているものの生気をすい、死へ向かわせるようになった。その力が私にもうつり、私と親しくなったものは、みな一様に死んでいった。
「でも彼女だけは私のそばにいても平気なのよね」
「それって私のこと?」
「うわっ!」
スキマから現れた紫に由々子は驚いた。いつものことなのだが、今日は考え事をしていたか気づかなかった。
「もぉ~、びっくりさせないでよ紫」
「あら、ごめんない。今日は私だけじゃないのよ」
「どうも、廿楽遊助だ。由々子、よろしく」
「よ、よろしく」
いきなりあらわれた男に由々子は戸惑った。それと同時におそれも抱いた。この人も殺してしまうんじゃないか?そしたらまた周りからいじめられる。
「あら、あなたの能力のことなら心配しなくても平気よ。彼、私と同じ妖怪だから」
由々子は安心した。これでまた話せる人が一人増えたからだ。
「これから毎日来てくれるの?」
「たぶんな。紫が来れないときは俺も来れないが」
「なら大丈夫ね。紫は毎日来てくれるから」
こいつらそんなに仲が良かったのか。意外だな。
「遊助ってすごいのよ。なんたって彼は・・・・」
紫が俺の自慢話を延々としているうちに、月が高く昇っていた。
「あら、もうこんな時間だわ。帰らないと」
「確かにな。由々子、じゃあまた明日な」
俺と紫が帰るときに、彼女は
「じゃあ、また明日も来てね」
と手を振っていた。彼女は死を操るようだが、彼女自身には問題なさそうだ。
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