表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
円卓の緑黄色野菜【カオスな短編集】  作者: 鈴木@異世界
33/42

こんばんは、月がきれいですね

ふわりと跳べば重力は無く。

夜風を切れば、頬に冷たく。


「あなたが欲しいんです」

窓辺には、小さなヴァンパイア。

「また来たの? いーい? おねえさんは、あなたの遊びに付き合ってる暇は無いの」

「遊びじゃない! 食事です」

黒づくめのジャージの(!)ちびっこは、むきになって言い返す。


「食事でも何でもいいから! 帰りなさい」

「だっておねえさん、とっても美味しそうなんです」

懇願するも、おねえさんは、ベッドの上であぐらをかき、がしがしと頭をかくばかりだった。


「だーからー、あたしはあんたの食事じゃないの!! あぁ、もう。そんなにお腹空いてるなら、何か作ってあげるわよ。何がいいの? オムライス? ハンバーグ? あ。カレーがいいわね、甘口の」

「おねえさん、ひどい…」


「ひどくないじゃない。あたしはとっても親切なの。夜中に訪れたちびっこに、カレー作ってあげるんだから」


ぐつぐつ、とレトルトのカレーは鍋の中で煮えている。

IHクッキングヒーター。電気のチカラで暖めます。


「おれはおねえさんが、食べたいんですけどー」

「はいはい。そういう台詞は、あと10年したらね」


大人のひとは、「カレーの王子様」なんてパッケージに書かれた可愛いカレーは食べない。


そのくらい知ってる。

でもそのカレーは、おねえさんの台所の下に、買い置きされてキレイに並んでいる。


「平成のヴァンパイアが、墓場に住んでるとでも思ってるんですか? 僕が欲しいのは、おねえさんです」

「ほら、カレー食べて帰んなさい。おねえさんは、明日も4時からオシゴトなの。パン屋さんは、朝早いの」


仕方ないので、出されたホカホカのご飯と、上にとろりと黄金色に輝くゾル状物質に銀色のスプーンを入れる。


暖かい。

味は感じないけど、あったかい。


だから…さぁ。


「おねえさんが、欲しいんですけど」

「はいはい」

おねえさんは、カレーを食べる僕に背を向けて、ベッドにごろりと横になる。

「食べたら帰るのよ。おやすみ」

3秒で、寝息。


どんだけ疲れてるんですか。

…はぁ。まあ、いいですけどね。朝になったら首もとに牙の痕を見つけて、せいぜい、びっくりすればいいんです。


いただきまーす。



深夜零時。今日もヴァンパイアが、ウチの窓辺に立っている。

「こんばんは、月がきれいですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ