31 ウィンド・ベルが告げるには【円卓】
「貴公、謀ったのか!?」
(架空の)ブリテン島に並ぶものなき高潔なる騎士ーー、サー・パーシヴァルは、彼の者を問い詰めていた。
しかし、糾弾されている側は、涼しい顔だ。
「先日、貴公は、『明日もっとも暑くなる時刻、 摂氏36度であろう』と断言した! だがこれはどうだ! 我が館の水銀式温度計は、摂氏39度を示している!」
明白だ。彼は嘘をついたのだ。これは許されることではない。
「言い訳があれば聞こう」
「外出の際は、日傘と帽子をお忘れなく」
これは衝撃だった。あまりの驚きに、パーシヴァル卿は目を見開く。
「侮辱だ! 日傘とは、ご婦人方が陽射しを防ごうとして持つものであろう! それをこの俺に持てというのかッ!?」
「では次は、夏に勝つ! 夏野菜で元気になる料理を作りましょう!」
「なんと!」
再びの衝撃である。これには度肝を抜かれた。
「夏野菜……!! そのようなものがこの世に実在するというのか…ッ!?」
あれは伝説ではなかったのか。遥か海の向こう。高い高い山の上。そこに、その幻の珍味は生育するのだと云うーー。
パーシヴァル卿の喉が、ごくりと鳴った。
腹も、ぐぐぅと鳴いた。
これはーー、メモだ。従者にメモを取らせねばならない。
そして我らが王や、ガウェイン卿にも伝えなければならない。
そうだ、石碑に刻んで、後の世まで伝えよう。詩にするのも、よいかもしれぬ。
夏野菜のレシピは、美しい詩の韻律となって何度も人の口に上り、後世の人々を魅力するのに違いない。
「して、そのメニューとは…!?」
そのとき。突如、空に暗雲が渦巻いたかと思うと、てれびじょんがーー途切れた。
パーシヴァル卿は困惑しーー、落胆し、また、嘆き悲しんだ。かの聖杯の行方にも勝るとも劣らぬ重要な情報は、何者かの手によって隠蔽されたのだ。
「…くっ」
ちりん。
はるか東洋から仕入れた、風鈴が涼やかに鳴いた。
うちひしがれるパーシヴァル卿を嘲笑うかのように、外では、激しい雨が降り始めていたーー
※ 本物のブリテン島の夏は、陽射しと青空の美しい、あついけれど過ごしやすい季節だそうです。※
Thanks for Reading !
夏のキーワードしりーず。「風鈴」「夕立」
良い夏をお過ごし下さいませ!




