18 飛び出せ! 貞子ちゃん!
【ホラー・コメディ】……の、つもりのつもり。
『飛び出せ! 貞子ちゃん!』
俺は新しいテレビを買った。プラズマ液晶テレビ。ブラウン管など、20世紀の遺物だ。
それは薄く、地デジ対応で、ブルーレイ・ディスクも見られる。
PS4も、繋げる。
パソコンでテレビを観ることもできるが、やはり、テレビは、良い。
深夜アニメは、テレビで観るに限る。俺は、新しいテレビに頬ずりした。さらさらとした髪は、シトラスの、すこしツンとした香り。もちろん、枝毛なんかない。つやつやの、サラサラ。
彼女が背負うのは、ピンク色のランドセル。合皮製だが、水にも強く、長持ちする。中には教科書、ノートの類が入っているのだろう。カタカタと音がする。
ロリっ子、といっていい。小生意気な唇。俺を見上げる、ちょっと勝ち気な瞳。
彼女の、愛らしい声が、俺の鼓膜を、春風のように震わせた。
「おまえを、ころす」
「うんうん。そうだね、新型プラズマテレビちゃん。お兄ちゃんをメロメロにしておくれよ」
貞子ちゃん、仮名ーー俺が頬ずりしたと思った新型プラズマテレビは、長い黒髪の小学生を画面から出現させていた。
彼女の構えるカール・グスタフ無反動砲(ごっつい銃)が、俺の腹に押し付けられる。
「未来のために、死んでくれ」
こうして俺は、テレビから出てきた長い黒髪の小学生に惨殺された。あのテレビを買ったことを、後悔はしていない。なぜって、それはーー
☆
彼は、幸福そうな微笑みを浮かべて床に倒れていた。腹部には風穴が空き、内臓がちょっぴり飛び出していた。ひとりの男が、そのテレビの前に立つ。
「貞子ーー」
「依頼はこなしたわ。早く報酬を頂戴」
彼女の小さな手のひらに、男は札束を握らせる。貞子ちゃん(仮名)は嬉しそうにニヤリと笑うと、カール・グスタフ無反動砲を、ピンク色の合皮ランドセルの中にしまい込んだ。
「始末してほしい邪魔者がいたら、いつでもあたちを呼ぶのね」
「ーーフッ。まったく。テレビに住まう電子生命体が殺し屋稼業だなんてーー世も末だ」
「そうね」
彼女は、再びテレビの中へと消えていき、黒スーツにサングラスの男は、その新型プラズマテレビを、丁寧に丁寧に、発泡スチロールとダンボールで梱包した。胸元のポケットから、宅配便の伝票を取り出し、宅配便屋に電話をかける。
「……ああ。このテレビを送りたいんだ。宛先はーー」
宅配便屋の車が、家の前に停まる。薄い、ダンボールの包みを受け取ると、宅配員は、車を発進させた。
それを見送りーー男は、胸ポケットからタバコを取り出した。
あとがき。
ある方の活動報告で、ふざけてお喋りしていたときに生まれたネタです。ありがとです~ ^^ 執筆中だというホラー+恋愛モノ、楽しみにしてますよっ!




