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拾ってはいけないもの

この物語はフィクションです。

少し重たいテーマを含みますが、最後まで読んでもらえたら嬉しいです

夜の空気は、少しだけ冷たかった。

マンションの裏手にあるゴミ捨て場は、昼間よりも静かで、

誰にも見つからない場所みたいだった。

紅葉は、いつもの帰り道を歩いていた。

大学とバイトの帰りで、足取りは少し重い。

そのときだった。

視界の端に、黄色が見えた。

一瞬、ゴミ袋の色かと思った。

でも、違った。

——小さな体が、壁にもたれかかっている。

近づくと、それが子どもだと分かった。

黄色い帽子をかぶったまま、うつむいている。

ぴくりとも動かない。

「……大丈夫?」

声をかけても、返事はない。

少しだけ、ためらったあと。

紅葉は、しゃがみこんで、その顔をのぞきこんだ。

その瞬間、胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。

頬に、うっすらと残る痣。

小さな手は、擦りむいていて、

まるで、どこにも行けなかったみたいに、冷たかった。

——放っておけるはず、なかった。

気づけば、手が伸びていた。

触れた瞬間、びくりと小さく体が揺れる。

「……ごめん、大丈夫。何もしないから」

できるだけ、やさしく声を落とす。

しばらくの沈黙のあと、

かすかに、息をする音が聞こえた。

生きてる。

それだけで、少しだけ安心する。

「立てる?」

問いかけると、ゆっくりと顔が上がった。

暗がりの中で見えた瞳は、ひどく怯えていて、

それでも、どこか縋るように揺れていた。

言葉は返ってこない。

代わりに、小さな手が、

そっと紅葉の袖をつかむ。

——離れたくない、みたいに。

その力は弱くて、今にもほどけそうなのに、

なぜか振り払えなかった。

「……そっか」

小さく息を吐く。

本当は、分かっていた。

ここで関わるべきじゃないって。

でも。

「少しだけ、うち来る?」

返事はない。

それでも、その手は、離れなかった。

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