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27話 カオルの公開処刑タイム


 カオルの秘密を暴く――

 バクダンマの宣言に、リスナーたちはコメントで反応を見せる。



『おっぱいチャンに秘密なんてないだろ!』

『まーたベギーアデかよ』

『三代目ベギーアデ?』

『さっさとおっぱいチャンに倒されろ』

『しつこい仮面野郎だな』

『本当におっぱいチャン来るのかよ』

『どうせ話題作りの釣りに決まってる』

『仮面は手作りか?www』

『おっぱいチャンに手を出すんじゃねぇよ!』

『ハゲタカ野郎が』



 やはりカオルの人気は凄まじい。

 流れるコメントはバクダンマを非難するものがほとんどであるが、しかしそれに反して同接の数字はどんどん大きくなっていく。

 そしてカメラにカオルが映った瞬間、同接はバクダンマの最高記録――猫田リンの不倫スキャンダルを糾弾したときのそれを超えた。



『おっぱいチャンだ!』

『本当に来た!?』

『おっぱいチャンこんなヤツの相手しなくていいから!』

『なんで来ちゃったの?』



 主役の登場にコメント欄も沸いている。

 計画通りだ、とバクダンマはほくそ笑んだ。



「よく来ましたね、カオルさん。リスナーのみなさんもお待ちかねです」


「御託はいい。ライカはどこだ?」



 ライカの偽写真の効果はバツグンのようだ。

 カオルから放たれる凄まじい威圧感にバクダンマの皮膚が粟立つ。

 仮面の力がなければ逃げ出しているところだ。



『ライカ?なんでライカ?』

『もしかしてライカを人質にしておっぱいチャン呼び出したとか?』

『あり得るな』

『まさに外道』

『ライカはどこにいんだよ!』



「まぁまぁ、そう焦らず。ライカは無事ですよ。今はね」



 カオルにそう釘をさす。

 妙なマネをすればライカは無事では済まないと暗に言っているのだ。

 もちろん、ライカを人質になどしていない。きっとこの配信でライカ本人に知れてしまうだろうが――もう遅い。

 カオルは既にバクダンマの前に来てしまったのだから。



「詳しくは言えないんですがね。俺は人の嘘が分かるんですよ。あなたは嘘つきだ。それもとんでもない大嘘つき」


「う、嘘なんかついてないが?」


「ハイ、それも嘘」



 仮面はバクダンマの様々な能力を向上させた。

 彼の目は顔の筋肉の微細な動きを感知し、耳は声の微妙なトーンを聞き分けて嘘を見抜くことができる。

 まぁそんな能力がなくともカオルの嘘を見抜くのは容易いが。

 どうやらカオルは嘘をつくのが下手らしい。



『おっぱいチャンなんか動揺してね?』

『ホントになんか隠し事してるってこと…?』

『嘘だろ…』

『猫田リンみたいになるのは勘弁してくれ』

『弱気になるなよ!俺たちがおっぱいチャン信じないでどうすんだよ!』



 コメントにも動揺が広がっている。

 その不安は各種SNSにも広がり、同接は30万人を突破。

 リスナーたちは固唾を呑んで配信を見守っている。

 そろそろ頃合いだとバクダンマは判断した。



「みなさん見ててくださいね〜。カオルの公開処刑タイムですよ」


「ッ――」



 カオルの動揺が手に取るように伝わってくる。

 バクダンマはまっすぐにカオルの頭上に浮かぶ爆弾を見据えた。

 30万人以上もの観衆の目の前でスキャンダルを暴いてやる。

 そうすればカオルはオシマイ。

 人気配信者の座からまたたく間に転がり落ち、一気にネット民のおもちゃに成り下がる。

 そして頭上の爆弾は大爆発し、盛大な炎上が見られることだろう。

 スキャンダルの内容なんて分からなくても構わない。当てずっぽうで良いのだ。いまのバクダンマを前にしてしらを切り通すなんてことはできないのだから。

 そして――配信者やってる小娘のスキャンダルなんてたかが知れてる。

 バクダンマは高圧的な笑みを浮かべる。



「――男だろ」



 カオルがギョッとするのが分かった。

 その表情を見て、バクダンマは確信を深める。

 他愛もない。

 リスナーにチヤホヤされて喜んでいる若い女配信者のスキャンダルなど、8割方これだ。



「男が、つまり彼氏がいるんだろ? もしかして不倫か?」



 するとカオルは一瞬ぽかんと口を開けて――そしてすぐに、なぜかすごく嫌そうな顔をした。



「彼氏なんかいるわけないだろ」



 ……嘘じゃない。

 バクダンマの研ぎ澄まされた感覚が、それを証明していた。

 バクダンマは少し呆気にとられて、しかしすぐさま気を取り直す。



「そうだよな。今をときめく人気配信者カオルの秘密が、そんなありきたりなもののはずないよな」



『ふーん、カレシいないんだぁ』

『こん!w』

『さすが俺たちのおっぱいチャンだぜ!』

『ボク彼氏に立候補します‼️』



 バクダンマは顔をしかめた。

 コメント欄が沸いているが――それはバクダンマの意図したものではない。

 だが、まぁ良いとバクダンマは思い直した。そうしていられるのも今のうちだ。

 むしろこれからが本番。

 バクダンマはカオルを指さし、悪事を断罪するように声を張り上げる。



「その胸、豊胸だろ!」


「は? 違ぇよ」



 ……これも、嘘じゃない。



『【朗報】おっぱいチャンの胸、ガチで天然爆乳だったwwwwww』

『マジかwwwwwww』

『イェーイ!あんなん偽乳だろってトイッターでディスってたグラドル見てるぅー?』

『天然おっぱいサイコー!!!』

『(゜∀゜)o彡゜おっぱい!おっぱい!』



 バクダンマはイラつきを覚え始めていた。

 これ以上、このふざけたリスナーたちのコメントを見るのは耐えられなかった。



「……もう手加減しない」



 バクダンマはそう呟き――



「整形してる! 隠し子がいる! 犯罪歴がある! 年齢サバ読んでる! パパ活してる! 闇バイトしてる! 薬やってる! 酒飲んでる! タバコ吸ってる! 脱税してる!」



 思いつく限り、スキャンダルとして有りそうな悪事を叫ぶ。

 しかし。



「そんなことしてねぇよ」


「……!?!?」



 今度はバクダンマが動揺する番だった。

 おかしい。

 カオルの頭上には確かに巨大な爆弾が見える。

 そしてバクダンマは暴露系配信者だ。

 スキャンダルというものには精通している自負があった。

 そのバクダンマが列挙したスキャンダルのどれにも当てはまらないなんて、ありえない。ありえないのだ。



「ええと、あと……あとは……ほ、本当は宇宙人……?」



『動揺してて草』

『おっぱいチャンの無実がどんどん証明されてて草』

『なんてクリーンな配信者なんだwwwwwww』

『おっぱいチャン結婚してくれ!!』

『身を挺しておっぱいチャンのイメージを上げてくれてありがとうwwwww』



 調子づくコメントに、しかしバクダンマは反論する言葉を持たない。

 どういうことだ。カオルには絶対に秘密があるはずなのに。

 数多のスキャンダルをみてきたバクダンマにも思いつかない、なにかもっととんでもないスキャンダルなのだろうか。

 そうバクダンマは考えたが――しかし、どうやら時間切れだった。

 カオルがスマホを取り出して耳に当てる。

 電話の相手は、おそらくはライカ。



「えっ!? いま家なの? でも写真が……え、AI? なんだよそれ……」



 次の瞬間。

 バクダンマは顔面に衝撃を受けた。

 それがカオルの拳によるものであると気付くまで少々の時間を要した。

 その衝撃により数秒間気を失っていたのだ。



「え? ……え?」



 カオルに吹っ飛ばされて尻もちをついたバクダンマは、鼻から滴る血を拭い呆然と声を漏らした。

 そしてゆっくりと視線を上げる。

 ふるふると揺れる大きなおっぱいの上――カオルが鬼の形相でバクダンマを睨みつけていた。



「なんで自分がやられないと思った?」



 カオルは準備運動でもするかのごとく腕を回した。

 大きなおっぱいが揺れる様に恐怖を抱くというのは、バクダンマにとって初めての経験であった。



「俺を叩こうとしたってことは、俺に叩かれる覚悟があるってことだよな!?」



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― 新着の感想 ―
こんにちは。 乳揺れ全力パンチ、略しておっパンチ!相手は痛みと眼福を味わう。
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