#072
それから車内では、妙に明るいミントの声が響き、彼女が行こうとしていた場所へと到着する。
「す、すごい……」
「綺麗なところだな」
ブレシングは両目を見開き、アンが着いた場所の素晴らしさを口にした。
ミントが二人を連れてきたところは、この国の外れにある大きな滝だった。
人の手を離れ、自然のまま放置されたところではあるが。
他国の人間からは観光名所として知られている場所のようだ。
その街を一つ飲み込まんほどのスケールの大きさに、二人を連れてきたミントも驚愕している。
滝壺に落下した水が純白な水けむりを巻き上げ、それが霧となって側に立つ者へ降り注ぐ。
その次第に消えていく水蒸気は、かなり離れて位置から見上げているだけでも心が洗われるようだった。
「二人とも気に入ってくれました?」
ミントがそう言うと、アンもブレシングもコクッと頷く。
「あぁ、あの子たちにも見せてやりたいな」
「じゃあ、次の長期休暇の旅行はここで決まりですね」
「それもいいな……」
そんな二人の傍では、ブレシングがポケットからデバイスを出して滝のことを調べていた。
インターネットで見るに、どうやらこの滝は観光名所として有名なところではあるようだが。
年々周囲を侵食しているらしく、国としては困っているようだ。
「そうだよなぁ……。住んでいる人からすれば、この素晴らしい光景も驚異でしかない……」
「うん? ブレシング? 一体何を見てるんですか?」
「いや、ちょっとこの滝のことを調べてみたんだけどね」
ブレシングがミントにデバイスを見せて、先ほど知った知識を説明し始めた。
そんな二人のことを、アンか無表情で眺めている。
(なにか……恋人というよりは家族みたいだな、あの二人……)
アンは思う。
ミントもブレシングも、短い期間とはいえ寝食を共にしてきたせいか、互いに男女という意識がなくなったのだろうか。
距離が近く、気さくに体に触れあっている様子を見て、やはり自分には色恋沙汰はわからないと、小さくため息をついていた。
「そういえばさ。ここは観光名所なのに、今日は僕たちしか来てないんだね」
「お昼時ですから。たぶん、もう少ししたらたくさんの人たちが来るんじゃないでしょうか?」
「あッ、言ったそばから人が来たよ」
ブレシングが顔を向けているその先に、アンもミントを視線を動かした。
だが、そこに現れた人物を見てアンの無表情が崩れる。
「ノピアッ!?」
それは、昨日に空港を出発できなかったストリング帝国の総帥――ノピア・ラシックだった。




