#071
――次の日の朝。
ホテルで目を覚ましたアンは、ソウルミューから連絡を受けていた。
「今日のテストは中止か?」
どうやら昨日――。
ソウルミューや研究所の職員たちがアンの脳波を調べてみたところ、もう少し円形ユニット――RELAY-Gの調整が必要になったようだ。
アンの目の前に映るホログラム画面では、朝から酒瓶をラッパ飲みするソウルミューが言葉を続ける。
《あぁ、今日中には調整を終わらせられると思うから、アンタは酒でも飲んで休んでいてくれ》
「仕事して飲んでる君にそう言われると、なんだか違和感を覚えるな」
《そう言うなって。じゃあ、また明日な》
そして、通信が切られる。
アンの傍には、同じホテルに泊まったブレシングとミントの姿かあった。
「聞いての通り、今日は休みになってしまった」
アンが二人にそう言うと、ミントが両手をポンと叩き合わせて口を開く。
「じゃあ、せっかくですし、出掛けちゃいましょう」
「出掛けるって、一体どこへ行くつもりなんだよ? 僕たちはここに来たばかりで、ろくにこの国のことを知らないんだよ」
「フフフ、こんなこともあろうかと、しっかり調べておいたんです」
「こんなことって……。ミント……君は一体どんなことを予想していたんだよ……」
まさか遊びに行くつもりだったのかと、ブレシングはミントに呆れている。
そんなブレシングのことなど気にせずに、ミントは二人に向かって声を張り上げた。
「さあ、行きましょう! この国にはとってもステキなところがあるんですよ!」
それからアンたちは、それぞれ出掛ける支度をし、ミントが手配した自動運転車に乗ってホテルを出た。
まだ行き先を知らされていないアンとブレシングだったが。
二人とも特に気にしてはいないようだ。
むしろブレシングは、これから向かうところよりも、ミントが妙に明るく振る舞っているように感じていて、そのことか気になっている。
(なんか無理しているように見えるけど……。お父さんと何かあったのかな?)
運転席に座っているミントの後頭部を見ながら、ブレシングかそう思っていると、助手席にいるアンが口を開く。
「そういえば、エンチャンテッド氏は君に何の用事だったんだ?」
アンの訊ねられたミントの顔が一瞬だけ曇ったが、彼女はすぐに表情を戻して答える。
「えーと父は……ひ、引っ越しをしたいとかで……。まあいいじゃないですか、そんな話しは」
「……どうやら踏み込んだことを訊いてしまったようだな。すまない」
「もうッ謝らないでくださいよ。それよりも昼食はどうしましょうか? この国の名物料理は――」
アンの謝罪をなかったことにし、デバイスに映るグルメサイトを二人に見せるミント。
ブレシングはそんな彼女を見て、アンの態度を見習うことにした。




