第10話 彼女のいない旅
ゲームの世界では、マドリガルが離脱するという計算外の事態が発生してしまった。
バンビーノとカノンは冷静な一方、ルウ、アリア、カブキは動揺を隠せずにいたが、それでも立ち止まっているわけにはいかないため、残った5人で物語を進めていくことになった。
町を後にすると、彼らはこれまで行けなかった場所にも足を踏み入れるようになった。
彼らがやってきたのは山賊団がねぐらにしている洞くつだった。
「ここね。人々からお宝を盗んでいるという山賊団のアジトは。」
「彼らを倒せば私達は困っている人達の役に立ちそうですね。」
「とはいえ、山賊達はとても強いと聞いていますけれど。」
「今の俺達ならどんな奴らが相手だろうと、恐れることはないぜ。」
アリア、カブキ、カノン、バンビーノは立ち向かう気満々だった。
(あれからマドリガルは戻ってくる気配が無さそうだけれど、元気でいるのだろうか…。果たして戻ってきてくれるのだろうか…。)
ルウはこんな時になっても彼女のことが心配でたまらなかった。
しかし来てしまった以上は引き返せないため、彼は気持ちを切り替え、仲間達と一緒に洞くつの奥へと入っていった。
途中では何度も山賊の連中と戦闘になった。
その中には男性だけでなく女性も含まれており、力任せの攻撃に加えて回復アイテムや催眠術を使って遅延行為をしてきた。
(まともに攻撃を受けては面倒だな。こうなったらこうするまで。)
アリアは得意の先制攻撃で山賊の男性の持っている武器を叩き落とした。
「おのれ!よくも俺様の自慢の武器を!」
相手の男は素手で攻撃を繰り出してきたが、アリアは素早くかわし、その武器を遠くに蹴り飛ばしてしまった。
カブキは催眠術を使い、何人かの動きを封じた。
それを見てルウとバンビーノは一人を降参させた。
その後、アリアは弱点攻撃をしてまた一人をKOさせ、残りの3人は総攻撃をして戦闘を有利に進めた。
やがてルウ達に軍配が上がると、降参した山賊達は叩き落とされた武器を拾おうともせずに一目散に逃げていった。
「よし。アイテムを手に入れたぜ。これは幸先良さそうだな。」
バンビーノはそれを拾い上げると早速装備し、若干だが攻撃力を上げた。
そして彼がそれまで装備していた日本刀はカブキの手にわたり、こちらも攻撃力が上がった。
しばらくすると奥の方から『ムザムザと逃げ帰ってくるとは、このバカ者!』という大きな声が聞こえてきた。
『も、申し訳ございません!ですが、やってきた連中は強いです!』
『私達でも歯が立ちませんでした。何か対策を立てなければ!』
『言い訳は聞かぬ!要はお前達が弱いということだ!死ぬ気で戦ってこい!』
ボスと思われる男の声が聞こえると、部下と思われる人達は仕方なさそうに『ははっ!』と答えた。
「ということは、また彼らと戦闘になりそうだね。」
「まあ、相手は手負いだから、簡単に勝てるだろうけどな。」
「でも、背水の陣とか窮鼠猫を噛むという言葉があります。」
「それに火事場のバカ力というのもありますし、油断は禁物です。」
スタメンを担当しているルウ、バンビーノ、アリア、カブキは気合いを入れた。
それから間もなく、先程の山賊達が彼らの前に現れ、再度戦闘になった。
アリアは今度も先制を取り、弱点攻撃をして先程武器を叩き落とした男性に大ダメージを与えた。
「む、無念だ…。今度こそおしまいだ…。」
彼は悔しそうな表情を浮かべながらその場に倒れ込んだ。
次にカブキは先程と同じく催眠術を使用した。
「みんな、目を閉じて!眠ってしまうわ!」
女性の山賊はそう叫び、他の人達に忠告をした。
結果、仲間をかばう形になった彼女は術にかかってしまったが、他の連中はとっさに回避行動をしたため、被害にあったのは一人だけだった。
しかし少しばかり隙が出来たため、ルウとバンビーノは集中攻撃をして一人をKOさせた。
一方、背水の陣の山賊達は死に物狂いで襲い掛かってきたため、ルウとカブキはかなりのダメージを受けてしまった。
「いけない!回復をしなければ!」
危険を察知したカノンはカブキと入れ替わりでスタメンに入り、素早くルウを回復させた。
次にアリアは両手で手裏剣投げをして2人にダメージを与えた。
「絶対に負けるものか!」
「こっちは命がけなのよ!」
山賊達は火事場のバカ力とばかりにクリティカルヒットを繰り出し、バンビーノは大ダメージを受けた。
さらに先程手に入れたばかりの武器を奪い返されたため、彼の攻撃力は一気に下がってしまった。
「く、くそ!こっちだってやられるわけにはいかねえんだ!」
彼は渾身の体当たりを繰り出し、HPを減らしながらもかなりのダメージを与えた。
そしてルウの一撃で今度こそKOさせた。
戦闘はその後も続き、ルウ達はどんどん相手を打ち負かしていった。
しかし残された山賊は仲間呼びをしたため、一旦は減った相手の数が再び増えてしまった。
(これじゃきりがないわね。何とか全体攻撃が出来ればいいけれど。)
(相手が多いと回復が追い付きません。困りましたね。)
アリアとカノンは焦りの表情を浮かべていた。
ここでバンビーノに代わってカブキが入り、再度催眠術を使った。
しかし、みんなが素早く目を閉じたために誰も眠らず、しかもここで眠っていた女性山賊も起きてしまった。
(すでに対策を取られていましたか。困りましたね。)
カブキが顔をしかめる中、アリアはまたまた手裏剣投げで2人にダメージを与えた。
カノンはカブキのHPを回復させ、ルウはクリティカルヒットを繰り出して相手一人をKOさせた。
彼らは山賊達の必死の抵抗にあいながらも懸命に戦い続け、最終的に何とか戦闘に勝利した。
「はあ…。手強い相手だった…。」
ルウはこちらもかなりの痛手を負ってしまったことで、ここで一旦撤退をすることにした。
「えっ?じゃあ相手に体制を立て直す隙を与えるじゃねえか。」
「仕方ありません。この後山賊のボス戦が控えているでしょうから。」
バンビーノが反対するのをカノンが説得し、それにカブキとアリアも同意したため、5人は洞くつを後にすることにした。
(ここでマドリガルがいれば全体攻撃魔法でもっと有利に戦えていたはずなのに…。)
ルウは彼女を引き留められなかったことを心の底から悔やんでいた。
山賊の被害に悩む町に戻った5人は、無念そうな表情をしながら住民に目的を果たせなかったことを報告した。
「そうですか。残念です…。」
「大変な任務を依頼してしまいましたね。」
「申し訳ございません…。」
住民から怒られることを覚悟していたルウ達だったが、意外なことにかえっていた返事は謝罪だった。
ルウ「とにかく、僕達は日を改めてまた出発することにします。」
アリア「それまで、せめてここで修業をさせてもらえませんか?」
「分かりました。こちらも出来る限りの協力をしましょう。」
「では、今日はもうゆっくりと休んでください。」
住民達は5人を喜んで受け入れてくれた、
しかし山賊達は夜を見計らって来ることも考えられるため、誰かが夜間の警備をするすることになった。
その結果、アリアが深夜まで見張りをすることになり、途中からバンビーノに交代をすることになった。
(マドリガル、今どこで何をしているんだろう。もしどこかで再び君に会えたら、僕達を許してくれるかな。もう一度仲間に加わってくれるかな…。)
ルウは夜空に浮かぶ月を見ながら、彼女のことを思い続けていた。
その後。町の住民の監修のもとで修行をした結果、ルウは3分の2の攻撃力で2回攻撃を、バンビーノは突っ張りで素手での攻撃力で3回攻撃する技を身に付けた。
さらにカブキは相手を脅かして1ターンひるませる作戦を使うことにした。
そして準備を整えた彼らは再び山賊のアジトに乗り込んでいき、戦況を立て直した相手と再度戦うことになった。
するとカブキが早速脅かしを使用し、何人かをひるませた。
アリアはひるまなかった相手に弱点攻撃をヒットさせ、一気に大ダメージを与えた。
そしてルウとバンビーノは身に付けたばかりの技を使い、ダメージを重ねた。
戦闘はカブキが催眠術や脅かしで動ける人数を減らし、3人が攻撃を重ねて戦況をどんどん有利にしていった。
その結果、今度は仲間を呼ばれる前に決着をつけることが出来、さらに奥に進んだ5人は山賊のボスのところにたどり着いた。
「お前達、よくぞ来た。俺様の名前はセイクリッド。ここまで来られたことをまずは褒めてやる。だが、この俺様達に勝てると思うなよ。」
セイクリッドと名乗った男は、早速仲間を集め、彼を含めて4人体制になった。
「さあ、かかってこい。返り討ちにしてくれるぞ!」
彼が自信ありげに言い放つと、ボス戦がいよいよ始まった。
先制を取ったアリアは側近の一人の武器を叩き落とし、攻撃力を下げた上で、その武器を蹴り飛ばした。
その間にカブキは催眠術を披露し、別の部下2人を眠らせた。
そしてルウはセイクリッドに連続攻撃をヒットさせ、通常攻撃を上回るダメージを与えた。
残った部下のうちの一人はアリアの忍術を習得しているのか、叩き落としをしてきて、バンビーノは武器を失う結果になってしまった。
「おのれ!よくも!」
思わず頭に血がのぼった彼はムキになってその部下を攻撃したが、あまりダメージを与えられなかった。
そしてもう一人は素手でバンビーノに向かってきたが、受けたダメージはわずかだった。
しかしかわした方向にセイクリッドがいたため、バンビーノはかなりのダメージを受けてしまった。
「ここは私の日本刀を使ってください。」
「おおっ!これはありがたい!早速使わせてもらうぜ。」
バンビーノはカブキから武器を受け取ると早速装備した。
次のターンでアリアは両手手裏剣でセイクリッドに連続攻撃をし、カブキは脅かしで部下2人をひるませた。
セイクリッドは気合いを入れたため、攻撃をしてこなかった代わりに自身の攻撃力を上げた。
そしてルウとバンビーノは彼に集中攻撃を浴びせた。
その後はカブキが部下達の動きを阻止しながら他の3人がセイクリッドを集中攻撃して着実にダメージを重ねていった。
「おい!いつまで寝ているんだ!起きろ!」
回復役を担当している女性の部下が役に立たないことに業を煮やしたセイクリッドは彼女に攻撃をしてたたき起こした。
(しめた!チャンスだ!)
その光景を見たルウ達は隙ありとばかりに集中攻撃を浴びせていき、ついにセイクリッドをKOさせた。
「ひいいっ!お許しを!」
「命ばかりはお助けを!」
その場に倒れ込んだボスを見た部下達は途端に戦意を喪失し、アジトから一斉に退散していった。
しかし入口には自警団を結成した町の住民達がおり、彼らによって逮捕された。
先に進める状態になると、ルウ達は大きな壁の前にやってきた。
「どうやらこの奥に盗まれたものが保管されていそうですね。」
「でも鍵穴もなさそうですし、どうやったら通れるようになるんでしょうね。」
ルウとカノンが頭を悩ませていると、バンビーノが持っている武器を駆使して壁を壊そうとした。
しかし、何度攻撃しても効果はなく、彼もとうとうさじを投げてしまった。
結局山賊の討伐こそ成功したものの、奪われたものを取り返すことが出来なかった。
なお、この壁は本来ならマドリガルの魔法で壊すという設定になっていた。
しかし、彼女がいない以上それが出来ないため、アジトを後にする5人に笑顔はなかった。
そして盗まれたものを取り返せなかったことを住民に謝罪することになってしまった。
「残念ですね。これで一件落着になると思ったんですが…。」
「どうしてこんな結果になってしまったんでしょうね。」
「とにかく、山賊が討伐されただけでも良しとしましょう。」
彼らの残念そうな表情を見ることは、5人にとってもつらいことだった。
(くっ。どうしてこうなっちまったんだ。)
(おかしいですねえ。こんな結果になるなんて。)
バンビーノとカノンが首をかしげる中、ルウはマドリガルがいないことをしきりに気にしていた。
(もし彼女が戻って来なかったら、これからどうなるんだろう。何だか嫌な予感がする…。)
名前の由来
セイクリッド(Sacred);意味は「神聖な」で、本人が自分のことをこう考えているだろうという思惑から、この名前にしました。




