表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/95

80.人間と天使の間に…

前回のあらすじ:当時子供ながらすげえサブタイトルだと思った物でした。

今回は悲しいお話です。

 爛漫の春でした。桜の様な林檎の花が咲く穣の月(5月)。

 いつもは元気にみんなと一緒に朝食を摂る護児城の天使、ミッシ。

 今朝は長屋の自室から出てこなかった。

 ステラが様子を見に行くと、疲れた様に横になり、起きられないと言う。


 ついに、この時が来た。


******


「ミッシの命が尽きかけている。あと半年持たせたいが、それが限界だ」


 ステラが、表情を失った。他の皆も、この宣告に激しい衝撃を受けた。

「皆に何時言うべきか、悩んでいた。最後まで言うべきではなかったか、もっと早く言うべきだったか。

 私は、最後まで諦めたくなかった。だが、もうこれ以上あの子の命を持たせる事は出来ない」

「え…何。何を言ってるの」ステラは固まったままの顔で問い返す。

 私は何も答えられない。

「死んじゃうの?し、し…」息も絶え絶えに、ステラが聞く。

「御屋、形様な、なら、なんとでも、な、なるんじゃないの?わた、私達を助けてくれたみたいに!」更に畳みかける。ステラの視点が定まっていない。


「ミッシはね。元々、生きる力がとても弱い子だった。先天的…命が芽生えた時から、大きく育てない子だったんだ」

「そんな事が!…。あるのですね」ウェーステが俯く。学校ではおおまかに遺伝子の事や遺伝子異常の事も教えている。

「ねえ、私の体と、ミッシの体を取り換える事出来ないの?!」

「そんな事は決してしない!出来やしないし出来てもやらないよ!」

「出来るんじゃないの!」ステラに私の声は届いているのか?

「出来てりゃとっくにそうしてる!私の体を差し出したさ!でも、人の命と体は切り離せないんだ!」


 他のみんなは、何も言葉に出来なかった。

「酷い、ひどいよ…何であの子なの?」

「実を言えば、この城の子達の中にも先天的に体がうまく育たない子は他にもいた。

 私はそんな子達の、上手く育たない体の部分を、何とか育て、今まで死なずに育ってきた。

 もう死の心配をしなくてよくなった子も、まだ心配が消え去っていない子もいるんだ。

 ミッシの体は、これからあちこちが動かなくなって行く。

 今まで何とか育って、動いて来た器官が、動かなくなって…」

「やめてー!!」ステラが叫ぶ。「また動く様にして!心臓でも肺でも私から切ってミッシに上げて!あの子を死なせないで!」

「同じ様な事はもうやった!それでも、あの子の体が止めてしまうんだ!

 何もしてなかったらずっと前に苦しんで死んでいたんだ!これでも、限界はとっくに超えて今日まで生きて来てくれたんだ!」

 言ってはいけない事を言ってしまった。それに気が付いたアンビーやウェーステの表情は言葉にし難かった。

 しかしステラは。

「どうしよう…私どうしよう…ミッシが死んじゃう…何とかして…」

 ステラが正気を失いかけている。アンビーが肩に手を掛けるが、一瞬ビクっとし、また元に戻ってしまった。


 そのまま、何もできず、何も言えずに時間だけ過ぎた。

 やがて、用があって呼びに来た子達に連れられ、ウェーステが、オイーダが、一人ずつ部屋を出て行った。最後は、私とアンビーがステラの傍にいるだけになった。


 ステラの息が落ち着き、顔色も段々元に戻って来た。

「ミッシに会いに行こう」私の問い掛けに、ステラはこちらを向いた。


******


 ミッシの部屋には、病院で診察を終えたマギカとモネラが付き添ってくれていた。

「食欲が減ってる。でも、少しは食べてくれている」困った様な表情で、しかし何とか笑顔でモネラが教えてくれた。

「御屋形様、ステラお姉ちゃんごめんなさいね。明日は元気に学校行くね…」

 弱弱しくミッシが答える。どうも、眼が回っているらしく、立てない様だ。

「今日はゆっくり寝ようね。明日、元気になったら、みんなと学校に行こうね」私はそれしか言えなかった。

「ごめんなさい」

「悪くなんてないのよ。ミッシちゃんはとってもいい子よ」ステラも、必死に笑顔を作って彼女の頭を撫でた。

「ゆっくり休むのよ。一緒に居てあげる。ねんねんよ?」

「あたし赤ちゃんじゃないよ…」ミッシがかすかに笑った。

 二人だけにして、私達は部屋を出た。


******


 夕食。子供達は元気だった。一部の少女が「ミッシちゃん大丈夫?」と聞いてくると、「ああ。明日には元気になるよ」と答えるのが精いっぱいだ。妻達が、物言いた気にこっちを見る。


 夕食後に月見櫓で、ミッシに付き添っているステラを除き、妻とミナトナ達、そしてダンとヤミーに、ミッシについて説明した。

 1歳でこの地に来た時から、3~4歳までしか生きられない様な体だったこと、それを無理やり時間魔法を駆使したり、外から物理的な力を与えて機能を助け、成長を促した事等を。

 それ以上の事は、私には話せなかった。非人道的な事については、私が地獄に一人で持って行く事にした。

 そして続けた。これから半年の間に、体の臓器が次々と動かなくなり、死んでしまう事を。

 私には、苦しみが無い様に外部から力を与え続け、機能を止める臓器の順番を調整し、苦しくない様に、出来るだけ眠る様に調整するだけしか出来ないという事を。


 朝に居合わせた妻達に話した事を、再度説明しただけにした。みんな、静かに、涙を堪えながら聞いてくれた。

 話す度、ミッシの笑顔が瞼に浮かぶ。

「最後まで、一日でも長く、ミッシに楽しい日を過ごして欲しい。何をしたらいいかは、前から考えていたが、これからはみんなと一緒に、考えたい…」


「あの子は、誰よりも、いっつもとっても楽しそうに…笑って過ごして、いました。王都に行ったり、修学旅行で、海で遊んだり!天使みたいに微笑んで、可愛くて!」ウェーステが泣きながら話してくれた。

「天使か…本当に…天使の様な子じゃ。コッチの神様とやらは、そんな天使みたいな子を死なせてしまうんか!ぐっ…ううっ!」アンビーも涙を堪え切れない。

「もし…あの子が望むなら、どこへだって連れて行こう、何だって食べさせてあげよう」

「でもっ…あの子はねぇ…みんなと一緒ならね…それが一番なんだと思うわ」涙が流れるままプリンが言ってくれた。ミッシや他の子がここまで大きくなれたのは、プリン達ミナトナの滋養のお蔭でもある。

「そうだね。あの子は、みんなと一緒に、特にステラと一緒にいるのがね。一番、楽しそうなんだって!そう思うよ…!ぁあああー!」ステラと一緒に、時々体調を崩しがちなミッシを世話してくれたオイーダが泣き崩れる。こらえきれず、みんなが泣き出した。


「泣くのは、まだ早い」ダンが半分力を籠めて、半分優し気にそういった。

「まだ…あいつは生きてるんだ!

 俺達がやんなきゃならないのは、あいつに、生きててよかった、幸せだったって、そう思ってもらう事だ。

 泣いてばっかりいたら、優しいあいつは!悲しんだままいなくなっちまう。俺達ががんばんなきゃ…」


 ダンの言葉に、妻達は次第に泣くのを堪えた。

「そうですね…ダン君、ありがとう、あなたのいう通りですね」ウェーステが健気さを取り戻す。

「あたしね、お料理しかできないからね、ミッシちゃんがね、弱まっても美味しいの少しでも食べてもらうように頑張る!」目から涙を流しながらヤミーが気丈に振る舞う。

「わたくしも、教師として頑張りませんとね!」ウェーステも気丈に振る舞った。

「あたしも、玩具を作って…ああ。もうあの子も成人かあ。玩具って年でもねぇの。ぼけえ首飾りにせんといけんの」

「まだミッシちゃんは玩具大好きですよ?」とモエ。

「小さい頃冬の礼拝で貰った花嫁さん人形を…!とっても、大事にしていますよ…」

「そうかあ。花嫁さん人形か。何年か前に作ったもんじゃなあ…もっとええの作らんとなあ…」

「及ばずながら私もお手伝い致す!」クッコが溜まらず誓う。


 こうして三々五々、妻達は二之丸御殿へ向かって行った。帰り際私はダンに礼を言った。

「ダン、有難う。君のお蔭でみんな気持ちが前に向いてくれた」

「でも俺、あいつがいなくなったら、どうなっちまうんだろう」ヤミーがダンに抱き着く。

「ダン兄ちゃんはステラ姉ちゃんを守ってあげて。ステラ姉ちゃんがとっても辛そうなの」

 ステラも、いや。ステラこそ心配だ。


 翌日、眩暈が収まり、力も入る様になったミッシは学校へ行き、普通に過ごした。

 しかし、ステラはミッシの部屋にいた。ミッシの小さい頃に描いた絵や、大切にしている玩具を眺め、魂が抜けた様である。

 私は声もかけられず、傍にいるしか出来なかった。アンビーも仕事を他のドワーフ達に頼んで、横にいてくれた。

「ステラや。あたしらは、ミッシがおる間は、あの子のため出来る事を頑張る事にしたで」


 ステラは答えない。アンビーも、それ以上は言わない。


******


「今夜は普通に過ごさせようよ」とオイーダがステラに声をかけ、ステラはすごすごとミッシの部屋を出た。広間ではミッシは皆と一緒に楽しそうに食事していたが、食は進まない様だ。


 それに気づいたステラがミッシに向かおうとするが、ダンがステラの肩を掴んだ。

 そのまま本丸御殿に連れて行く。

 人のいない本丸でダンはステラを睨んだ。

「姉ちゃん。ミッシはまだ生きてるんだ。俺達は、あの子のために頑張んなきゃ。なあ?」ダンは辛そうに笑った。

 ステラはダンを見つめた。

「ごめんね。ごめんね。」ステラの目に涙が溢れ、声を殺して泣き出した。

「ミッシにさ、一日一日をさ、楽しんでもらおうな?」ダンも、涙を堪え切れなかった。


******


 私にとってミッシは、1歳とは思えないほど栄養が足りずやせ細った状態から今まで過ごしてきた、娘の様な子だ。しかし、実の娘じゃない。

 それでも、おしめを替え、食事を一緒に食べ、成長を喜び、色々な読み書きを教え、まるで故郷の実の子同様に、可愛く大切な子だ。

 それでも、と思う。

 ステラやダン、ヤミーにとっては、同じ故郷から親達から見放され、魔物に殺されそうになった、それからは親の無い中でずっと一緒に生きて来た、愛しい妹なのだ。

 ステラは私と結婚して、子供を諦めている。子供達を慈しむ姿には、どことなく母親代わりでありたく思っている様にも感じる事がある。

 そんな姉妹の様な、子供の様なミッシが居なくなってしまう。ステラは何も出来ない。私も何もしてくれない。そんな状況で、ステラはどうなってしまうだろう。


******


 夏が来た。倒れる日が、寝込む日が多くなった。

 それでも、「みんなと海に行きたいな」という願いを口にした。

 体に負担を掛けない様瞬間移動で行こうと言うと、

「御屋形様が作ってくれた鉄道で、みんなと行きたいの。我儘言ってごめんなさい」

 ステラも、ダンも、アンビーも、城の首脳陣が揃って鉄道で大陸南岸へ向かった。

 長旅なので、途中でミッシを休めて向かった。だが逆に久々の旅の所為か、元気そうに見えた。

 人間、何で活力を得るのか解らないもので、病院から自宅に戻って元気を取り戻す老人もいる。


 翌日。二つの太陽が輝く水平線を眺め、私達は車窓に歓声を上げた。

「海!きれいー!すごくひさしぶりよー!」ミッシはとても嬉しそうだ。11歳の時の修学旅行以来だ。もっと小さい時も連れて行って、はしゃいだ事を思い出す。


 ハっとした。

 私が初めて鉄道を建設した時、夢を見た。ステラ、ダン、ヤミー、アンビー、プリン達と、海を見ながら楽しむ夢を。

 しかし、その夢の中にミッシはいなかった。

 もっと早く、この世を去る-それがあの時見た未来だった。

 それがどうだ!成人手前、立派になったミッシが、とても嬉しそうに、楽しそうに、列車の旅の中に居てくれている!

 妻達も増え、一緒に楽しみ、酒を飲んで旅を楽しんでいる!

 私は、ミッシのがんばりは、私の見えていた未来を変えたんだ!

 ありがとう!ミッシ!


******


 秋が来た。 

 既に起き上がれる日が週に1日も無い程に、ミッシは弱まっていた。

 私は、呼吸が弱い時には呼吸を助け、消化が辛い時には栄養剤を与え、延命した。

「私ね、もう死んじゃうのね」

「何言うの!大丈夫よ!御屋形様が助けてくれるわ!」ステラが必死で嘘を言った。

 ステラは、ミッシと同じくらいやつれていた。


「ずっとわかってたの。大人になれないなあって。でもね、もうすぐ15歳。大人になれたよ?」

「大人になってね、お嫁さんになってね、ずーっと!幸せに暮らすのよ?」ステラの涙が溢れた。

「私ね、苦しくなりそうになると、体の中からふわーって、苦しさが消えるの。苦しいのとっても怖かったけど、それが消えたらとっても嬉しかった。御屋形様が助けてくれたのね」

 何故か、ミッシには解っていた様だ。本能的なものだろうか、そんな事出来るのは私だけだと解っていたのだろうか。

「今度も何とかしてくれるわよ、ね?」

「もうね、わかるの。お別れが近いって。

 お姉ちゃん、有難うね。大好き。

 一杯迷惑かけちゃってごめんなさいね」

「迷惑なんて無いわよ!お別れなんて嫌!私を置いていかないで!ミッシは一杯幸せになるのよ!」

「もう一杯幸せだよ?私みたいに幸せな子いないよ。

 聖女様とあちこち歌ってお祈りした時にね、外で辛そうな子を一杯見て来たの。

 その時、私って、何て幸せだったんだろうって、神様にありがとうって、あの子達を助けてって、お祈りしたの」

「嫌…いやあ…あなたみたいないい子は、絶対死なないわ!」

「お姉ちゃん、泣かないで。

 御屋形様と、お父さんとずっと仲良くしてね。

 ダン兄ちゃんが怪我しない様しかってね。

 ヤミーお姉ちゃんはずっと美味しい御馳走を造るよね」

「だめ、だめ!死んじゃいや!いやよ!」

「お姉ちゃん、ごめんなさい…」

「ステラ。ミッシは疲れてる。今日は休ませよう」


 ミッシは自分の死を悟っている。ステラの方が辛そうだ。看取る側は時としてそうなる物だ。

「お願い。ミッシを助けて。お願い、ミッシを殺さないで…」

 寝ながらもうなされる様に寝言を言っては、起き上がる。

 私と妻達がステラをなだめ、背中を抱き、優しく撫でて眠りにつく。


******


 ミッシの最期が近い事を城の皆に説明した。年の近い友達たちは泣いた。

 起きる事も出来なくなったミッシを、友たちが訪れ、励ましの言葉を掛けた。

 少しの会話の後に、ミッシは優しく微笑んだ。


 ミッシが話も出来なくなった日、ステラは憔悴しつつ、ずっと添い寝した。

 そして、ある日。

 ステラが見つめる中、ついに私の力がなくては心臓が動かなくなった。既に多くの器官が止まっていた。

 ゆっくりと、苦しくない様に助力を止めていく。

 そして、ミッシの体から魂が天に向かっていくのを感じた。


 私はステラの肩を抱いた。

「あ…あああ、ああー…」ステラが力無く、ミッシの亡骸に縋って、泣いた。

「はああ~…はあああ…」ひたすらに泣いた。

 私は、妻達は、ステラの肩を抱いてあげる事しか出来なかった。


******


 三之丸の司祭は総本山に連絡を取り、列車でコンクラベ枢機卿が来た。葬儀を取り仕切り、南之院で、護児城で最初の葬式が行われる事になった。

 王女オーテンバーからも、飢餓疫病を救済した功労者への賛辞と追悼の書が贈られた。


 結婚の喜びを祝福してくれた林檎並木も、葉がすっかり真っ赤に染まって散り始め、私達の悲しみを見送っていた。

 眠る様に安らかなミッシを収めた棺を、馬車が南之院へ運ぶ。私達は黒い喪服に身を包んで同乗する。


 棺の中のミッシは、純白のドレスに身を包んでいた。花嫁の様だ。

 アンビーとクッコが協力して作った、結婚パレードの玩具も棺に収められていた。

 皆がミッシに別れを告げ、ムジカ達式典部が出棺を聖典の歌で送る。


「天つみ使い護らせ賜え 彼らの行く道示し賜え

 正しき心に神宿りませ 祈りて願わん御心の賜」


 旅立ちを祝う歌は、死者の帰天を願う歌でもある。


「慈しみ以て守り賜え」


 ミッシの棺は、南之院の北、墓地の中央、私達がこの地に城を築く前までにこの地で果てた人々の亡骸を葬った記念碑のすぐ南に埋葬された。

 土に埋まっていく棺に、皆が声を上げて泣き崩れた。大声で泣いた。

 ステラは、茫然として、ひたすら涙を流していた。


 さようなら。天使の様な、私の大切な、みんなの大切なミッシ。

 みんなもいつかは君の所へ行く。その時はその天使の微笑で皆を天の門の中へ招いて欲しい。

 私は、まだまだそちらへは行けない。


******


 本丸御殿で、追悼の席を設けた。涙を流しつつ、ヤミーは育児部の皆と御馳走を振る舞った。

 妻達は思い思いの酒を手に、ヤミーとの思い出を語った。

「もう泣いてもいいのに、変ですね。心が落ち着いてしまいました。」

「死別の儀式って、そういう心を癒す意味もあるんですよ」と涙に濡れた眼鏡を拭くマギカ。

 ステラは先に寝てしまった。私も来賓に喪主の礼を返した後、彼女に付き添って床に入った。


 泣き疲れて、それまでの看病疲れもあっただろう。ステラは寝入っていた。

 アンビー達も周りで床に就いていた。

 皆が寝静まった後、私は一人で天守に向かい、酒を煽り始めた。


******


 無性に腹が立った。何故私が無駄に何千年も生かされて、あんな心清らかな子が、将来の夢も断たれて死ななければならないんだ。

 私の代わりにあの子達が長生きすれば。幸せになれば!

 過去の世界でも同じ事が何度も繰り返されていた事を思い出し、怒りが込み上げて来た。


「殺すなら俺を殺せばいい!神は卑劣だ!残酷だ!

 何が神だ!手の平で人間の命を弄んでんのか!糞畜生!

 俺を呪ってんのか?呪われるなら貴様が呪われろ!!

 俺を殺してミッシを!ステラのところへ返せ!!

 ナーシーを!インフィーを返せ!ノーシを返せー!!

 幼い命を刈り取って嬉しいのか!

 残酷な人殺し奴ー!!

 俺を殺して!あの子達を返せー!みんなの所へ戻せー!!返してくれえー!!」


 泣いて、叫んだ。喉が切れて血を吐いた。いつもの様に。


 暫くして、思った。いつもの事だが。

 神は居る。絶対に居る。

 そして、地上の人には、全く何もしないのだ、決して何もしてくれないのだ、と。


******


 暫くすれば、皆元の暮らしに戻る。

 飲んだり食べたり、笑い合ったり。

 ふと、誰かに聞かれた。

「ミッシちゃん、もし小さい頃にいなくなってたら、何のために生まれてたんだろう。

 生まれて赤ちゃんのまますぐ死んじゃった子って、何のために生まれて来たんだろう」

 今まで通り過ぎて来た他の世界でも同じことを聞かれた。


「人間の命に意味が無いなんて思いたくない。でも、答えなんて無い。

 あの子の天使の様な笑顔はね。きっと、それでも私達に

『考えて』

 って伝えてくれたんじゃないか。

 あの子の。人間の命の、使命だったんじゃないか」


 私もずっと考える、命について。

 みんなも考える、命について。

 あの子の笑顔と共に。

 人との別れはどうしても避けられない物です。実際にそういう事もありましたので書きました。


 もし楽しんで頂けたら、下の星を増やして頂けるか、ブックマークして頂けると大変嬉しく思います。

 また、感想を頂けると励みになりますので、

「ここの意味がわからん」

「このネタっぽいのがわからん」

「合掌」

等々、お気軽に書き込んで頂けます様、お願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ