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81.モアヘイスト、レススピード

前回のあらすじ:魚眼レンズ怖え。

今回から当分コメディに戻ります。

 今を時めく天才少女モネラ様。蛮族侵略の魔手から医術の神の手を借りて大陸の民を救った聖女。

 この城関係者で聖女3人目だよ。


 目下、城内の二之丸病院で診察や各種最近の培養実験、抗生物質の開発などを行いつつ、大陸各地の医療者に内科のみならず外科医療の講義にまで招かれている。

 ただ、殆どは研究と言うより、固陋な医療者に対し、我が故郷の20世紀的な医学を教育するための伝道師として説得している状態だ。内部のイザコザを各国元首にブン投げられている感じである。

「毎度同じ話の繰り返しで疲れる…」とは本人の弁。


「ダキンドン王国、王都騎士団!聖女モネラ様をお迎えに参上いたしました!道中、護衛申し上げます!」元気な若者の声がする。

 毎回モネラの護衛に城までやって来るのはダキンドン王都の騎士、フラーレ君。豪壮な大聖堂の裏側の、不衛生な孤児院にいた腹痛少年だ。

 モネラ達城の子供が便所と風呂を改装し、それ以後病気で苦しんだり死んだりする子は出ていないそうだ。

 それはフラーレ君がモネラの教えを厳しく守り、手洗いうがいや衛生指導を行ったお蔭でもある。

 そんな彼が、2年に及ぶ必死の努力が実り騎士団に入隊し、モネラ護衛の座を勝ち取ったのだ。

 孤児院の少年は騎士団へ、護児城の少女は各国の王都で講演を。みんな、頑張って成長している。


「うれしそうねぇ?モネラぁ?」師であるマギカがからかう。赤くなるモネラ。どうやら満更でもないご様子だ。

「ちょっと頑張り過ぎで上から目線っぽいとこもあるけど、実直でいい子じゃない?それともマッチョはお嫌かしらぁ~おぷっ!」ネチっこく絡む師匠の口を塞ぐ。

「病院は頼れるお師匠様に任せて、君は頑張って来なさい。

 君の一言一言が、多くの人を救うんだ。そんな君を、彼も慕っている」

「御屋形様まで!」珍しくモネラが照れた!

 あとマギカ、手の平を舐め回すんじゃない。


 私達は、南へ向かうモネラ達城の研究者、フラーレ君達護衛の騎士を二之丸駅から見送った。


******


 南へ向かうシン・スーパー…改め大陸縦線、ドワーフの里と帝国南端の港町ポルテを結ぶ南北の大動脈に乗り、更に大陸横線、帝国東端の城塞都市、かつて南部戦線でイテキバンを撃退したタンエン城からフロンタ王国西端の港町までを結ぶ東西の大動脈に乗り換え、フロンタ王国へ向かう。

 今ではシャトー・ダキンドン、皇都マンナに加え、フロンタ王都カスティラの近郊にも日本風の城が聳えている。イテキバン戦争が終わった後すぐ寄せられたフロンタ王妃の熱望に応え…

「ドンジョン(天守)はやっぱり五層ね!」

「会議場や大ホールと別に、ゆっくり寛げる生活空間が欲しいわ」

「温泉って出ないかしら!お肌に良い温泉が…それは無理?あらそうなの」

「天守や御殿を見晴らせる櫓でお茶会もいいわねぇ」

 とスゲー夢盛り盛りの熱望を受け…しまった!護児城も正に夢盛り盛りそのものじゃん!

 奥で頻りに済まなさそうにしていたエンタ王に、後で気にすんなと伝えた。


 かくて結局出来たのは、方形の敷地を持つ二条城…だと思ったでしょう?残念!柳川城でした!

 故郷は地球、九州の水郷、柳川にかつて聳えていた柳川城の内郭…私が生まれた頃には跡形もなく消え失せていたけど。そんな、本丸と二之丸を横に繋げ、広大な水濠で囲ったものになりました。御殿や唐門は二条城っぽい豪華仕様だ。

 本丸は高級保養所、二之丸は会議場や劇場、パーティ会場等に公開される、これは皇都マンナの御座所と同じ運用方式。その片隅、本丸三重櫓周辺が護児国の大使館。


 本丸御殿と離れた三重櫓近辺の奥書院が、講演を控えるモネラ達のホテルに供され、本丸大広間で夕食となった。モネラは護衛のフラーレも呼んで同席を願った。

「わたわたわた!私ごちょき痛ぇ!」噛んだ。噴き出すモネラ。これも珍しい!

「いつも私のために来てくれてありがとう。お礼を申し上げます」

 更に珍しいモネラの笑顔に、フラーレ君、真っ赤。

「いえいえいえそそそんな!」

「今までずっとお城で育ってきたから、知らない所に行くのについて来てくれる人がいると安心する。ありがとう」

「どどどどどどういたたたた」ケ〇シロウかな?

「私はこれからもあっちこっちに行って、色々な人と話して、間違った治療を止めさせたい。

 正しい医療…本当に正しいか、まだわからないけど、明らかに間違った事は止めさせたい。

 人の命を前にして、間違いを認めて、どこが間違ったか調べられる様にしたい」

「そそそんな聖女様が間違…!!」ひたすら真っ赤になって慌てていたフラーレ君に緊張が走った。

「本当に正しいかどうかなんて、私にはわからない。ひたすら結果を積み上げて、評価するしかないの」

「解りました」真顔になったフラーレ君が答えた。

「自分の間違いを認める、それは勇気が要る事です。

 その勇気がある貴方を、間違いを認めようとしない者達から守るべく、私は命を捧げます」

「無理はしないでね…」

 正気に戻った所為か、この後フラーレ君は無事にモネラと夕食を済ませる事が出来た。

 同席者も給仕も、ニヨニヨして二人を見ている。


******


 その夜。城内にいくつかの死体が転がった。更にいくつかは水堀に浮いた。

「よくぞお気付きで」フロンタの騎士がフラーレに言う。

「この城にはいくつも賊の侵入を知らせる仕掛けがある。それのお蔭だ」とフラーレが返す。

 講演会当日を狙う賊も、事前の暗殺を試みる賊も居る。それらをフラーレは未然に防ぎ、講演会を平和裏に成功させ続けて来たのだ。

「検分は貴国に頼む。私はモネラ様の護衛に戻る」


 翌日の講演会では、モネラの主張する、菌よりも遥かに小さく、顕微鏡と光魔法を組み合わせて漸く目視できる「ウィルス」の繁殖防止に皆が注目した。

 天然痘には牛痘やミナトナの乳のお蔭で勝利したが、風邪に勝つ予防法が無い、という事実。こういう厄介なウィルスには、室温を高め、乾燥を避け、清潔と滋養を心掛けるという対処療法しかない。しかし確実に悪化は防げる。そういった事例を数多くのデータを元にモネラは各地で説明した。


 この世界にも、ペストやインフルエンザはある。大流行が発生する前に、抗生物質を完成させる必要がある。

「まだまだかんばらなきゃね」帰りの列車で、同席させたフラーレ君に、モネラは微笑んだ。

「どこまでも、お守りします!」と、彼はナイス笑顔で返した。この有能イケメン騎士奴!


******


 器用に、ある時は不器用に、しかし常に誠実に頑張る少年のいる一方。

「この度も麗しき聖女王陛下に御目通りが叶いました事、神に感謝致します」と気障に跪くのは、聖女王オーテンバーを前にしたミデティリアン帝国第七皇子ロボシ君。もうこいつも君呼びでいいや。

「帝国との会合には必ず殿下が参加なさりますが、これは皇帝陛下の御意向なのでしょうか?」

「いいえ!私の我儘に存じます!」


 オーティは頭を傾げ、テイソ卿はとても面白い顔でニヨニヨしてる。


******


 皇帝キオミーも頭を抱えていた。

 ダキンドン関連の重要な会議に第七皇子が前面に出て、皇位継承権が上位の皇子とその妻達から苦情が来ていた。

「ダキンドン関連のオイシイ取引に自分を出せ!ロボシに独占させるな!」という事である。

 ある程度は仕方ない。対イテキバン戦で率先して前線に向かい士気を鼓舞し、勝利を収めた。

 帝国の英雄であるロボシは、同時に交換留学の縁もあってダキンドンに最も近い皇族でもある。

「父上は、あの末弟をダキンドンにでも献上してしまえば宜しい!」とまで第一皇子は言い放ち、ハっと戦慄した。

 ロボシは、第一皇妃の末子である。第一皇子はキオミーの亡妃の子であった。末弟とは言え、言い過ぎたかと第一皇子は後悔した。


 その晩ロボシはキオミーに呼ばれた。

「お前は俺に似てるから、あのお転婆姫に嫌われるんじゃねえぞ!」と檄を飛ばす。

「止めて下さい父上、嫌われルート一直線になってしまいます」「テメェ!」親子仲良しさんだな。

「そんで、次のダキンドンとの交渉だが…」とキオミーが切り出すと、ロボシの顔に覚悟が宿った。


******


「大陸の叡智を集める学問の殿堂、大陸大学をマンナの総本山の一角に開設する、と」

 ダキンドン王城の大広間でオーティが緊張してロボシに対峙する。

「そうなると、我が国から派遣される事になる学者も、護児城の学者も、総本山へ、帝国の庇護下に於かれる、と」

「その通りに御座います」

「もし出入国を帝国が拒否した場合、学者の自由は束縛される、そう申されると」

「左様な事はございません。大学憲章に明記します」

「憲章とやらが守られている間は、な。反古となればそれまでだ」

 負けないな、オーティ。前夜の内に自らテイソさん始めオレンジャーさん達優秀な貴族を集め協議した内容を、威厳を込めて話せる様に準備した甲斐があったと言う物だ。

 その反論するパターンは数十に及ぶ。


「これから将来!我が大陸は、新たに東からの再度の侵略も起こり得るでしょう!

 或いは、南の海、西の海からの、言葉も通じぬ、考え方も異なる者と接する事もあるでしょう。その時、それら脅威と戦うのは何か?

 フロンタ王国の武勇か?

 我が帝国の軍勢か?

 ダキンドンは、護児国は何もしないのか?!

 違います。此度のボーコック撃退同様、大陸国家全てが手を取って戦うのです。

 その為の英知を!出し惜しみしては、戦う前から敗北します」


 おお、若き奸物ロボシ皇子の演説、お見事。

「ですが!」その時、ロボシの顔付きが変わった。

「その後は、余が話す!」オーティが立ち、ロボシは呆気にとられた。


「共通の敵と戦う団結に順位が生じた瞬間、それは団結の破綻を意味します。

 同盟の大前提は、平等である事を大前提とすべきです。

 そこで私は、帝国の発議に同意し、帝国内の、御座所付近への大学開設を進言致します!」


 一同に何とも言えない雰囲気が漂った。

 各国とも護児国から輩出される優れた頭脳を確保する事に血眼になっていた様だ。それに焦った帝国の一手が「大陸大学設立」とその抱え込みだった。

 しかし、これが御座所内、即ち護児国の手が及び鉄道の駅もある場となれば。

 万一学者の拉致監禁や不法が行われようとすれば忽ち護児国に知られ、御座所は守られ、帝国は人質を取るどころではなくなる。

 そして大陸大学から生み出される成果も、公平に発表され、そこから生じる利益も考案者の出身国を優先して配分される事となる。帝国だけが旨味を引き出す事は出来なくなるのだ。


 ロボシは、尊敬の眼差しでオーティーを見つめた。

「ロボシ殿下。聡明な父君の元に私の提案をお届け下さい」


******


 総本山で大陸大学確保の野望が頓挫した。

「あーこれ受け入れるしかないじゃん!ロボシ、帝国の優位を失わしめた失敗により、皇位継承権剥奪。サッサと国を出てけ」

 あっさり。

「はっ」こっちもあっさり。この親子話が早いよ!

「お待ちなさい」と第一皇妃が書状を託す。

「モテる男におなんなさい」と肩に手を置いた。


******


「無〇成恭先生じゃないんだからさあ」何で私んコト来たよロボシ君。

「いやあ。まさかこんな所で希代の英傑のお世話になろうとは。至極光栄です!」

「お世話するなんて一言も言ってないぞ!」

 彼が持ってきた、第一皇女発私宛の書状は「末っ子を鍛えてくれ」だと。

「じゃあ、一丁、ダキンドンの即戦力になる特訓すっかあ!学費はポルタ港の統治権だな!」

「エ”エ”-ッ!」

「冗談だ」

 そこから私達護児城組はロボシをオーティの右腕になるべく鍛えた。

 座学は無論、王国各地を回り、豊作地帯と凶作地帯の差、支援策、地方貴族領の衛生状態、孤児院の状態等を通常の三倍の時間で叩き込んだ。

 そして、1ケ月後。


 今となっては鬼宰相とまでに呼ばれる様になったテイソ卿に対面。

作麼生そもさん!」「説破!」一き…周建さんかな?

「ダキンドン貴族でオーテンバー女王に対し敵対的な貴族は?」

「ナイロン卿!ジュラルミン伯!」

「租税料の最も低い地と考えられる改善策は?!」

「ボンビー男爵領!耕作地域が少ないので最も短期で有効なのは、西はフロンタ王国、北は魔の森を迂回してドワーフの里を結ぶ北廻街道の建設!」

「財源は?!」

「大陸横線の利用料金に保険を増額し、迂回路線として予算を捻出する!」

 聞いていて、胃が痛くなる掛け合いだ。まるで色々教えた自分が試されている様だよ。

 しかしこの若き英俊は、オーティの影となり王国の抵抗勢力と戦い続けた美しき懐刀と互角以上の戦いを繰り広げた。そして。


「ロボシ皇子。貴方さえいれば…」「王国は必ずや繁栄させます!」

「いえ私と貴方が結婚して二人で姫を支えましょー!」「「そっちかよー!」」思わずハモった。

「冗談です」「いやちょっと目が怖かったですよ?」

「私はあなたなら、女王様の夫に相応しいと思います。しかし、あなたは女王様を、どうなさるおつもりですか?」

「のんびり暮らして欲しい、切にそう思います」「女王様が?あの色々出たがりやりたがりな…」テイソ卿、主人に容赦ないな。

「そう。あの人は、あちこちで愛と希望を振りまいて、いつかは皆が住む町へ行くかもしれない、そんな誰にとっても身近な女王様として過ごしてほしいのです。

 ん~。逆かもしれないですね。あの人が、みんなのところへ行って、笑顔でいて欲しい。好きな所へ出かけて、会いたい人に会って貰って。あの人にはずっと笑顔でいて欲しい。

 面倒な駆け引きは、私やあなたが請け負って、あの人には純粋でいて欲しい。ちょっとガキっぽいですね」

「やっぱり私と結婚しません?」「「またかー!!」」またハモった。

「冗談です」「いや今結構真剣だったよね?」

「でも、とても素敵です。私もそんな風に言って欲しいです」こっち見んなテイソ卿。

 この人こんなキャラだったっけ?それとも同僚の結婚に焦る同期的なポジション?

「オーテンバー女王を、宜しくお願いします」


******


 何となく呼ばれた気がしたので来た、オーティーの部屋。

 ちゃんとした格好で来たのに、向こうはスケスケの寝間着。

「ガッカリよ。覚悟したのに」と悪戯っぽく笑うオーティ。並んでソファに腰掛ける。


「ミッシちゃん、とても残念。ステラさん大丈夫?」

「心の籠った書簡を頂いて有難う。ステラは…多分大丈夫だ。あの子は、きっと幸せになる」

「!…、。御屋形様は、大丈夫?」私の言葉の先を理解したのか。本当に成長したなあ。

「ああ。何より、一番手がかかりそうな子に、貰い手ができそうだからな」

「酷い!」笑顔に涙を溜めてオーティは微笑んだ。

「ほんと酷い人。愛してるって言ってくれたのに」

「今でも、これからも、愛しているよ。何かあったら飛んで来るさ」

「呼ぶのはこれが最後。私は、あの人を信じる。私のために、国を裏切る覚悟を決めたあの人を」

「悔しいな」「今からでも遅くないのよ?」オーティは美しい笑顔に、こらえきれない涙を流して、抱き付いて来た。


 そして

「ありがとう…あなたがいなかったら、私なんて生きていなかった。沢山の人が苦しんで、死んで…考えたくもないわ。ありがとう…私も愛」

「君は、君の夫を愛するんだ。そして、愛の結晶を育てて、辛いけど、大変だけど、幸せな国を守って欲しい」

「がんばるわ。貴方が私にくれた機会を無駄になんかしない。貴方の願いに応える。

 あなたのお城みたいな幸せな国を、あの人と造る。それが、あなたへの恩返し…」

 そして、彼女は静かに泣いた。

賑やかなキャラだったオーティーも一段落です。


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