14.冬休みと協力
月草視点
次の日のクリスマスパーティーには、オレも青柳も出席しなかった。
今の状態の青柳を妻紅に近づけるわけにはいかない。
妻紅が来られない青柳家に早々に避難することにした。どちらにせよ冬休みは戻らなければならなかったので少し予定が早まっただけだ。
*
愛や恋を気持ち悪いものとして認識してしまった青柳にとって、恋の話が大好きな青の一族の会合はかなりの苦行のようだった。
だが、この年末年始の挨拶は重要なものであり、必ず青柳が出席しなければならない。
「もう本っ当に気持ち悪い。なんなの全部殺したい」
会合の間は普段通りの態度で過ごしていたが、自室に戻ったとたん吐きそうな顔で言う。
「駄目ですよ。ここで殺したら先代に筒抜けになりますよ。学園に戻れなくなってもいいんですか」
「……それは……嫌だな」
袴姿で羽織も脱がず、そのまま畳の上に転がる。
「彼女の声が聞きたいな」
ぼんやりと言う。
「シワになりますよ」
今の青柳には、それが恋ですよとも言えない。
そんなことをしたら、本人の自覚もないままに芽生えかけたものを、気持ち悪いものとして認識してしまいかねない。
必要最低限だけ母屋でいつもどおりの顔で過ごし、あとの時間は部屋に引きこもって冬休みが終わった。
始業式が終わって彼女と話す青柳の顔色が良くなっていてほっとする。
*
早急に妻紅を青柳から遠ざけなくてはならない。
だが、学園では守るべき生徒が多すぎて今までとは勝手が違う。
誰か協力者を、と考えて一番に浮かんだのは先日の群衆男子だった。
廊下を歩いていた彼をつかまえて、協力を請う。
「よくおれが見分けられたよな。おれにも何かつけてんの?」
「いいえ。そんなことしなくても、あなたはすぐにわかりました」
「すげえな。やっぱあんた万能だな」
連絡先を交換してラインも登録する。
意外なことに群衆だけでなく色付きも何人か登録されているようだ。
「あんたもこれに書き込んでくれりゃ、この間みたいに走り回らなくてもおれらが駆けつけるぜ。群衆は弱いぶん横のつながりは強いからな」
「それは助かります。多人数を守るという経験がないので」
「こっちこそあんたみたいな奴が仲間になってくれて心強いぜ。この間だって、あんたの術のおかげで助かった。おれなら下手すると隠れてても即バレで殺されるからな」
こうして聞くと、改めて何の術もなく生き延びてきたすごさがわかる。
「……月草と。これから協力者になるんですから名前で呼んでください」
「月草な。おれは名前がないから悪いけど」
「いいえ。構いませんよ」
「それでこれからの方針ですが」
「ああ、それだけどこっちで今、仕込んでることがあるからさ。ちょっと待ってろよ?」
彼は楽しそうな顔でにやりと笑った。




