第９８９話 雲霧仁左衛門との戦いその３
オーバーラップ文庫
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張り詰めた痛いほどの冷たい空気。
茨城には珍しく大雪、屋根から土砂理と降り持った雪が落ちる音。
咲き始めた梅が寒そうにしていた。
夕方から降り続いた雪は、夜中２時頃にやみ雲も消え星々が輝く。
中庭に立ち尽くしていると、強い殺気。
雪が落ちると同時に、銀色の物が目に入る。
ザクッと雪を踏みしめ転げ避けると、また、銀色の物体・・・・・・。
弓矢だ。日本的な物でなく短いボーガンと思われる矢。
気を集中する。
「払いたまへ清めたまへ守りたまへ鹿島に奉られし武甕槌大神よ我に穢れを打ち払う力を貸し与えん」
目を閉じると、飛んでくる方向が手に取るようにわかる。
転げ回って避ける必要はない。
ギリギリをそっと静かにかわすと、１０発の矢は止まった。
「飛び道具をそのように避けるとは貴様の方が化け物だな」
シャリッと降り積もった雪に降りる人物。
月光が照らすのは暗殺に似つかわしくない真っ赤な忍び装束の者だった。
「そうか、貴様がか？」
「ぬははははははっ、儂の事が憎かろう、黒坂常陸」
「ミライアを・・・・・・」
「だが儂はお前にいくつもの魂を壊されたがな」
「名を聞いておこう」
「雲霧仁左衛門」
「真の名は、南光坊天海か？それとも穴山梅雪か？それとも、明智光秀か？」
「・・・・・・もう名などどうでも良い。野望をことごとく摘んできてくれた貴様を殺してくれる」
背中の太刀を抜くと斬りかかってくる。
俺はすらりすらりとかわしていると、廊下から太刀が投げられた。
「真琴様、これをぉぉぉぉぉぉ」
バシッと受け取る太刀、愛刀・童子切安綱。
「あっ、茶々出てくるな」
「遅い」
雲霧仁左衛門は茶々に銀色に輝く小さな刃物を勢いよく投げた。
「茶々ぁぁぁぁぁ」
ドゥオン
一発の銃声が聞こえると小さな刃物は、バラバラと鏡を割ったかのように砕け落ちていた。
「ぬははははははっ、こざかしい。我が娘に手を出すか下郎」
「信長様・・・・・・」
手裏剣を打ち落とした織田信長の脇には、森蘭丸、森力丸、弥助がそれぞれ武器を持ち構えていた。
「御大将、水くさいですよ」
「力丸・・・・・・」
酔い潰れていると見せかけていた力丸達。
仮病を使った俺と同じ事をしていた。
ドゥオン
と、織田信長が雲霧仁左衛門に向けて撃つとバク転で避けられる。
避けたところを狙って弥助が槍を投げると、斬り落とされる。
荒ぶる神のごとくいや、鬼のごとくの形相に変わる雲霧仁左衛門。
「魔道に統べる九尾の狐よ、我に力を貸し与えよ。漆黒の闇は光を食らう。光を闇で共に包もう誓う。封印を解くことを儂は誓う。この場の者達をうちし時、我はすべての荒神の封印を解くと誓う。力を我に」
漆黒の炎が身にまとうのを感じる。
織田信長は残っていた弾を４発撃つ。
蘭丸と力丸は弓矢を向けて放つ。
弥助はもう片方の手に持っていた槍を力一杯に投げる。
しかし、漆黒の炎に燃やされている。
「ぬははははははっ効かぬぞきかぬぞ、荒ぶる神々との契約を儂は成し遂げたのだ」
・・・・・・。
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