第685話 砲撃型潜水艦
1612年 春
柳生宗矩が率いる艦隊が大打撃を受けた知らせは届いた。
兵士にも多くの犠牲が出たと。
柳生宗矩は残った戦力でアドリア海に面するイタリア半島の港で陣を構えて神聖ローマ帝国艦隊を牽制すると言う。
「真田幸村に柳生宗矩との合流を命じる。俺も向かうぞ」
ただ、こちらの艦隊数では少々厳しい戦いになる。
ジブラルタルの織田信長に援軍を頼む。
欧州イバラキ島で慌ただしく準備をしていると、
「た、た、た、大変です!潜水艦5隻が港近くで浮上しました」
と、物見の兵士から連絡を受ける。
「くそ、この忙しい時に!すぐに爆雷の準備だ。応戦用意」
指示を出し物見櫓に俺も行くと、そこには今までの敵の貧そうな潜水艦ではなく、大型艦と言って良いだろう黒光りする潜水艦が見えた。
20世紀に出てくるドイツのUボートに近いデザイン。
甲板には大砲が2門×2の4門が備え付けられた、砲撃型潜水艦。
「は?は?は?くそ、先を越されたか、砲撃来るぞ備えよ!」
と、指示を出すと隣で望遠鏡を覗いていたお江が、
「マコ~味方の旗が見えるんだけど~」
と、望遠鏡を渡してきたのでそれを覗くと間違いなく俺がデザインした日本国旗が掲げられた。
そして、潜水艦の艦橋のハッチが開くとひとりの長い髪をなびかせる人影が見えた。
小さくて顔が判別出来ないがなぜか全身の毛穴がぞわぞわとした。
何か忘れている物を見ているかのように懐かしさを感じた。
硬直する俺にお江が、不思議がっていた。
なぜに懐かしさを感じる?
なぜに?
「応戦中止、潜水艦に偵察隊をだせ」




