勇者の話?ほら、さっさとしろよ
投下しました。
よろしくお願いします。
「で、付いてくるといった勇者はともかくとしてなんでお前らまで俺の部屋に来てんだよ。サファイアとイチャイチャできないだろうが」
大広間から出るとき何も言われなかったのでそのままサファイアと手を繋ぎながら歩いていた。手を繋ぐための確認を取ろうとしたら手を繋ぐぐらいなら毎回確認を取らなくてもいいと言ってくれた。どんな心境の変化だろうか?いや、今まで拒否られたことなかったけどさ。
サファイアから歩み寄ってくれたことにうれしくなり、ただサファイアの隣を歩くだけのロボット化していた俺の耳に後方からたくさんの足音が聞こえてくるのに気づいた。確認のために振り向くと、付いてきているのが勇者だけでなく御一行+姫さんという大所帯だったからそりゃ足音も五月蠅い。途中まで一緒なだけだろなと思ったので気にせずサファイアの指示通りに歩いて目的の部屋にたどり着いた。勇者という邪魔者がいるけど少し話をしてしまえば出ていくだろうと軽い気持ちでいた俺が間違いだった。
勇者が部屋に入ってもドアが閉められることはなく、予想外にそのまま他多数も入ってきやがった。リンクと杖男は勇者がいるからだと言うし、姫さんも超ブラコンなので『お兄様いるところ私あり!』と小さな胸を張っていた。
つまり、最初に勇者を部屋に入れたのが間違いだったというわけか・・・
「タカヒロ。その状態でよくそのセリフが言えるな」
「何言ってんだ。お前らがいるからこの状態で止まっているんだよ」
((俺らがいなかったらどうなっていたんだか))
部屋に入った俺はすぐにベッドに座って足の間にサファイアを座らせ後ろから抱きしめている。これでもわかると思うが、わかりやすく言うなら『あすなろ抱き』状態だ。あ~この世界にカメラがあったら誰かに撮ってもらって待ち受けにしたい。
少し見えるサファイアの肌が赤くなっているから照れているんだと思い、表情を確認する為に左右から見ようとしたけど、
ちなみに、勇者は椅子に座り隣に椅子を持って来て座る姫さん。探したけど他に椅子がないので仕方なく勇者の隣で床に座る杖男。そしてまたもや壁に寄りかかりながら立っているリンク。なに、壁族なの?
「はぁ~もうお前らがいてもいいからさっさと話し進めよう。勇者は何の話をしたいんだっけ?」
ベッドの上でサファイアを抱きしめながらユラユラと揺れながら勇者に話しかけたが勇者が口を開いてくれない。そもそもさっきから俺を見ながら『うー』と唸り続けている。
お前が話すことがあるから入れたのに何これ。つかそれ誰得と思ったが、そんな勇者を姫さんが凝視している。あ、姫得でしたか。
穴が開くほど見られているのに気づいていないのか俺をにらみ続ける勇者がいる。
「タカヒロ。このままじゃ話が始まらないからその状態を止めてお前と勇者の間に誰もいない状態にしてくれ。それなら勇者も口を開くだろうから」
「え、俺のあすなろ抱きダメ?まさかそんなことに突っ込みが入るとは思わなかったわ」
リンクがため息と共に俺の状態が原因で勇者が話をしてくれないと言ってきた。俺のあすなろ抱きのどこが変だったのかわからないままサファイアから剥がれて、座る位置をずらして再度勇者に訊ねた。
「これでいいか?ほら、さっさと話せ。」
「・・・タカヒロ~それはさっきと何が違うんだ?」
「タカヒロ。いい加減にしないと床に押さえつけるぞ」
おや?今度はリンクだけでなく杖男からも突っ込みが入ってきた。なんだろう俺のあすなろ抱きがダメだったからサファイアにあすなろ抱きをお願いしてもらったんだけど。
それにしても、サファイアが後ろから抱きしめてるこの状況悪くないね。サファイアの顔を見れないのは仕方ないけど、これはこれでサファイアがどんな表情をしているのか妄想が膨らみます。
そんなことを考えていてニヤニヤしていた所為か、またもや無理矢理サファイアから離されて有言実行された。そう、床にむぎゅっと押し付けられてた。
なにすんだ!とリンクを睨もうとする通過点で勇者の顔が見えたんだが、なんで涙目?
「勇者。これなら話していいだろ。いい加減俺も休みたいんだからさっさと終わらせろ」
「・・・グスッ。ああ、ありがとうリンク。それでは始めようか」
床に這いつくばっている俺が面白いのか先程の涙はどこへやらと笑顔で話し始めた。
それにしても、勇者呼びは変わらないんだなリンク。
「まずはお礼を言わせてくれ、タカヒロ。迷宮内でも伝えたが君がいなかったら先に進むことが出来なかった。本当にありがとう」
「「ありがとな(ありがとー)」」
「礼なんていらんからさっさと話せ。俺はこれから忙しくなるんだから」
「わかった。これからなんだが、私たちはザイルと一緒に呪いを解く道具を探す旅に出ようと思っている。どこにあるかわからないしいつ見つかるかもわからない状況だけど、出来ればタカヒロにも一緒に来てほしいんだけど、ダメか?」
「ダメだけど?なんでまたお前たちと一緒に出かけないといけないんだよ。俺の仕事は終わったの。だからこれからは俺のしたいことをする事に専念するんだから」
「そうか・・・。確かに迷宮ではタカヒロに助けてもらったしな。それで?旅の同行を諦める代わりと言っては何だがタカヒロがしたいことが何か聞いてもいいだろうか」
リンクがいつの間に背中の上から退いたのか分からなかったが、んなの決まってるじゃんかと言いながら立ち上がり、サファイアの手を繋ぎながら勇者に告げた。
「サファイアとラブラブ生活をするのが俺の目的だ!!!」
ドヤ顔で目をキラキラさせながら告げた俺のことを4種類の表情が見つめていた。
俺の行動をすべて見ていて、尚且つ俺の行動理由を知っているリンクは『そうだろうな』と頷いている。
俺たちの関係が羨ましいのか少し顔を赤くしながら微笑んでいる姫さん。そういえば、さっきも城の入り口に二人でいたけど仲良いのかな。
この中で俺やサファイアと一番関係が薄い杖男は首を捻りながら『なんで?なんで?』と口を発しながら納得のいかない表情を表しながら見ている。
勇者は俺の言葉を聞いた直後は杖男同様納得のいかない表情を浮かべていたが、意を決したのか真面目顔で口を開いて俺を怒らせる言葉を放った。
「さっきから気になっていたんだが、タカヒロがサファイアと呼んでいるメイドは確かサイファーという名前の希少種ではなかったかな。タカヒロは違う世界の住人だから知らないと思うけど、希少種というのはこの世界ではあまり良いイメージを持つことが少ない。これは私も見て見ぬふりをしていたから言いづらいが、他のメイドと一緒に仕事をしてはいるがその合間に暴行を加えられていて、あまりきれいな体ではないと思うんだ。今後城ではなく町で生きていくんだとしたら、これからずっとそのメイドと一緒にいるとタカヒロ自身が何らかの被害を受けることになると思う。
そこでだ。今の発言を取り消して、私と一緒に旅をしないか?タカヒロはこの世界のことを何も知らないんだから。旅の中でタカヒロが興味をそそられるものが見つかるかもしれない。ほら、どうだい?そんなメイドと暮らすよりも楽しい人生になると思はないかい?」
勇者の話す内容が俺を激怒させる内容だと気付き焦ったリンクと姫さんが止めようとしていたが、気にせずにそのまま言葉を発し続けていた。おいおい、リンクはともかく好きな相手に向かってそんな顔を浮かべちゃダメだろ。愛想付かされちゃうぞ。
話し始めは座っていたんだが、途中から気分が乗ったのか歩きながら話していたので俺を見なかったことが良かったのか悪かったのか雑音が止まることはなかった。他の三名は表情の変わった俺を見た瞬間目を外していたからすごい表情を浮かべているんだろうな。
サファイア?俺の後ろにいると思うけど、この顔を正面から見せたくないから振り向かないよ。
雑音が聞こえなくなったから言い終わったのだろう。言いたいことを言い終えた奴が身体を俺の方に向けたことで先程から見えなかった俺の顔を見ることが出来、体を震わせている。
俺は、そんな奴に向けて
「言いたいことは言い終えたか?それでさ。いま・・・なんて言った?」
と笑顔を浮かべて言った。
・・・勇者死ぬんじゃね?




