WBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサとラーメン「写真五枚」
1975年11月11日(火曜日)首都メキシコシティから大場政夫と桑田勲氏は日本に帰ることにした。
1975年11月12日(水曜日)バタバタしながらもようやく日本に到着した。世はまさに大場政夫フィーバーだ。黄金の帰還と残照で成田の冷たい風が吹く。羽田空港(当時)の国際線到着ロビーは、異様な熱気に包まれていた。メキシコシティからの長旅を終えた日本航空のDC-8が滑走路にタイヤを焼き付けたのは、予定より30分遅れた午後4時のことだった。タラップを降りた瞬間、大場政夫は肺の奥まで冷たい秋の空気を吸い込んだ。標高2,240メートルのメキシコシティの薄い空気とは違う、湿り気を帯びた、懐かしい東京の重い空気だ。
「……帰ってきたな、勲さん。」
大場は隣を歩く帝拳ジム会長、桑田勲に声をかけた。大場政夫のサングラスの奥の瞳は、連戦の疲れでわずかに充血している。
「ああ、政夫。だが、休む暇はないぞ。この騒ぎを見ろ。」
桑田が顎で示した先には、報道陣の群れがあった。ストロボの光が、夕闇の迫る空港のロビーを白く塗りつぶしていく。
「あのままメキシコにいたら、今頃俺たちはサボテンの肥料だったかもしれないな」
空港の貴賓室へ向かう廊下で、桑田が冗談めかして言った。大場は薄く笑ったが、その表情にはどこか虚脱感が漂っていた。26歳でボクサーとして円熟期にありながら、彼の魂は、あの日――1973年1月のあの日、首都高速での危うい事故をリスタートして以来、どこか「余白」を生きているような感覚があった。
帝国ホテルの密談
空港での短い会見を終え、二人が乗り込んだのは黒塗りのプレジデントだった。向かう先はジムではなく、帝国ホテルには、次の「大きな仕事」が待っていた。車窓を流れる東京の夜景は、1970年代半ばの活気に満ちていた。新宿のビル群が空を突き刺し、街にはピンク・レディーの歌声が溢れている。
「政夫、これを見ろ。」
桑田が鞄から取り出したのは、一枚の海外スポーツ紙だった。そこには、一人の男の写真が大きく掲載されていた。大場政夫である。
「こんなに特集まで組まれていて嬉しいな!政夫君バンタムに上げるか、それともフェザーまで一気にいくか。お前が望むなら、俺は世界最強の相手を用意する。」
大場は窓の外を見つめたまま、しばらく沈黙した。1975年という時代は、ボクシングが単なるスポーツを超え、個人の生き様を証明する手段だった時代だ。
「勲さん。俺は、自分がどこまで壊れないか試してみたいんです。」
大場の言葉に、桑田は息を呑んだ。
「壊れる」という言葉。かつて大場が憧れた、永遠に若くして散った伝説のボクサーたちの影が、彼の背後に見えた気がした。
夜明け前の祝杯
ようやくバタバタとした事務作業や報告が終わり、二人が新宿の小さな割烹料理屋のカウンターに座ったのは、日付が変わる直前だった。
「政夫お疲れ様。」
「会長お疲れ様です!」
サッポロビールの瓶が触れ合い、乾いた音がした。メキシコでの死闘、帰国後の狂乱にようやく訪れた静寂の中で、大場は一口、黄金色の液体を喉に流し込んだ。
「……こういう時生きてるって感じがしますね。」
大場がぽつりと漏らした。
「当たり前だ。お前はまだ、始まったばかりなんだからな。」
桑田は、教え子の横顔を見た。1973年のあの朝、大場の愛車シボレー・コルベットが首都高のカーブでスピンしたとき、もしコンクリートの壁に激突していたら――そんな恐ろしい想像を、桑田は今でも時々する。だが、現実に大場はここにいる。生ける伝説として。
「次は誰とやりたい?」
桑田の問いに、大場は少しだけサングラスをずらし、鋭い、しかしどこか悲しげな光を宿した瞳で微笑んだ。
「誰でもいいですよ。俺を熱くさせてくれる奴なら。」
「永遠のチャンピオン」への道を歩み続ける大場政夫の夜は、まだ明けたばかりだった。外では冷たい雨が降り始めていたが、二人の胸にある熱までは冷ますことはできなかった。
1975年11月13日(木曜日)大場政夫は帝拳ジムのマネージャーである長野ハル氏に会いに行った。大場政夫は挨拶をする。
「こんにちは!ハルさん、俺勝ちましたよ!」
長野ハル氏が答える。
「それは良かったわね。」
そう言う長野ハル氏は選手達の試合の調整などで多忙な日々を送っていたので眠そうだった。
「全てはハルさんのお陰です!」
大場政夫が嬉しそうにそう言った。
その言葉に長野ハル氏はたまらず笑みがこぼれた。
「私も貴方が勝ってくれて嬉しいわ!」
それは心からの言葉だった。
「ところでフライ級敵なしの大場政夫君は次、誰とマッチメイクをしたいの?WBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサという選手がマッチメイクしたがっているけど、試合する?」
「はい、次はWBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサと試合します!」
「因みにこういう顔をしているわ!」
そう長野ハルが言うとWBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサのポスターを見せた。
「なんか乳首勃起してますね!」
大場政夫はWBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサの乳首に目がいった。
「興奮状態のボクサーは乳首が立つことがあるわ!それ位常識でしょ!」
長野ハルの言葉に大場政夫は納得した。
「ハルさん、WBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサについての情報提供をお願いします。」
「彼はアルゼンチンのボクサーで戦績13戦(13KO)無敗の今注目のハードパンチャーよッ!」
「何ですって!」
大場政夫はWBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサが思った以上に優れた戦績でビックリした。
「どうする?今ならまだマッチメイクを無効に出来るけど、本当にやるの?」
その言葉は大場政夫にとって逃げる言い訳になるが彼は進み続ける。
「やりましょう!絶対に勝ちます!」
そう意気込んだ大場政夫は前よりも強く見えた。
「ところでWBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサはステロイド剤を使っている可能性があるので検査を徹底して下さいね!」
大場政夫はWBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサの乳首が勃起しているのを見てステロイド使用疑惑を睨んでいた。
「そうね。アルゼンチンだとWBC世界バンタム級王者ベニシオ・セグンド・ソサがステロイド剤を陰で使用しているのを暗黙の了解としている可能性があるわね....この選手と試合する場所は日本大学講堂(日大講堂)にして貰えるよう執り成しましょう。」
「助かります!やっぱハルさんの采配は世界一ィイイイです!ところで試合するとしたら試合日はいつになりますか?」
「1976年3月11日(木曜日)で良いかしら?」
「はい!喜んで!」
こうして試合の日程調整が円滑に進んだ。そして部屋から出た後桑田勲氏が話しかけてきた。
「なぁ一緒にラーメン屋に行こう!勝利した後に食うラーメンは格別だぜ!」
気さくに話しかけてくれる桑田勲氏に大場政夫は心よく承諾した。二人は車で千住中居町にあるりんりんに向かった。
「なぁ....俺ら結構強く成ったよな...!」
「成りましたね!」
二人は今迄の試合の思い出に耽っていた。そして千住中居町にあるりんりんに到着した。
「親父ィイイ!ラーメン二杯くれ!」
「ハイよぅう!」
そして数分後テーブルの前にラーメンが現れた。
「これだよこれ!このラーメンが身体を芯まで温めてくれるんだ!」
(超旨そう!)
横目で見る大場政夫を知ってか知らずか桑田勲氏は麺をズルズルすすり旨そうに食べていく。暫くすると大場政夫が座っているテーブルにもラーメンが現れた。
「あれっ!何で俺のこんなにチャーシュー多めなんですか?」
「あんちゃんは日本の英雄だからね!チャーシューを多めにサービスしといたんだよ!」
店長の優しい気遣いに大場政夫が泣いた。
「あ"り"がと"う"ご"ざい"ま"す"...!頂”き”ま”す”!」
その声はとても潤んで聞こえた。ラーメンとチャーシューを絡めて食べると口の中に広がるチャーシューの旨味とラーメンの確かな歯ごたえがシンフォニーを奏でた。
「旨すぎる!これが真のラーメンだ!」
勝利の美酒に酔いしれ乍ら食べるラーメンは美しい小金色と共に心を豊かにしてくれた。
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