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沈む皇室  作者: 弓張 月


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内親王誕生2

タイトルが「内親王誕生」でやっと誕生するんですけど・・・

親王か内親王か、この頃の国民はあまり重要だと思って居なかったんですよね。

若い皇族二人、今後は沢山子供を産んで下さるだろうと思って居たので。

まさか后宮が色々考えをめぐらしていたとは。

この当時の事もいずれブログで触れますのでお待ちくださいませ。

菜子は順調にマタニティライフを送っていた。

幸いつわりも軽く済んで、公務にも休むことなく出席していた。

その裏には、そうしないと后宮に叱られるという怯えた気持ちもあった。

「懐妊は病気ではないのだから、二宮に余計な気を遣わせることはないように」

「時間を守って、回りに心配させないで」

結婚当初から后宮菜子に厳しくあたっていたが、それも「教えと導き」であると理解して菜子なりに頑張って来たつもりである。

しかし、何がお気に召さないのかわからないけど、「そうではないでしょう」と叱られてしまうので、菜子自身戸惑い、迷ってしまう事も多いのだ。

こんな事は両親に相談するわけにはいかないし、宮にも告げ口するようで嫌だ。

だから菜子は毎日のように、侍女と一緒に立ち居振る舞いや言葉遣いの練習に励んだ。

しまいには、后宮が映っているビデオを見て真似をするのが一番早いと感じ、実行してみると、ようやく「お小言」がやんだ。

つまり后宮は「ご自分が一番正しい」と思っておいでなので、みなにもそうする事を求める。

考えてみれば蓮宮も后宮のコピーのように見える事があった。

仲の良い母と娘だが、蓮宮は一番母に気を使っているのかもしれない。

菜子は義妹の在り方を参考に皇室の中の荒波を泳ぎ切ろうとしていた。

菜子の動向は常に后宮の監視下にあり、失敗も成功も全部報告が入っているようで、時々「え?なぜそんな事をご存じなのか」と思う事もしばしばである。

東宮は国民が気づかない間に、こっそりと幸子を東宮御所に呼んでおり、帝は頭を痛めている。

東宮妃には別な女性を、血筋が確かで野心的でない女性を望む帝はいずれきっぱりと幸子との交際を辞めさせようと思っていらした。

なんでも幸子が東宮御所を訪れる度に、贅沢な中華料理やワインが所望されるそうだ。

東宮はそれを断る事無く、どんどんご馳走を出してくる。

大和田幸子という女性は東宮御所をレストランと勘違いしているのだろうか。

大膳課が「予算の範囲では収まらない」と言っても、東宮は何とか幸子の気を引きたいばかりに「それでも用意して」と命令する。

困った料理長が帝にご相談申し上げ、内廷費からいくらか都合をつけるといった具合だ。

本来ならきちんと「ダメなものはダメ」とおっしゃりたいのであるが、后宮が

「東宮は可哀想なの」と肩を持つので何も言えない。

一方秋月宮家では、しっかりと栄養バランスを考えた食事が出て、宮も生まれてくるお子の為に煙草をやめて、飲酒も控えるようになっていた。

対照的な兄と弟のありように帝は時々ため息をつかれるのだった。


「もし生まれてくるお子が男子なら名前に「仁」がつき、女子であれば「子」がつきます」などとテレビでは連日、宮家に生まれる子の性別やマタニティウエアの話で盛り上がっている。

「生まれてくる子は男の子かしら?それとも女の子かしらね」

ある日、御所で蓮宮と后宮、そして菜子が一緒にマドレーヌ作りに精を出している時、何気に后宮はそうおっしゃった。

「もうわかるそうですが、宮様が生まれるまではお知りになりたくないと」

菜子は無難な答え方をした。

「そうね。そういう事は生まれてからのお楽しみよね」と后宮も同意した。

「この所、陽気が暑いからと言って薄着をしてはいけませんよ。体に悪いから」

「ありがとうございます。后宮様」

「ねえ、私はおばさまって呼ばれるのかしら?」

明るい蓮宮は焼きあがったマドレーヌをオーブンから出しながら、わくわくした様子だ。

「おばさまなんて、まだお若いのに」

と菜子は紅茶を入れる支度を始めて、少し笑った。

まだ20代の蓮宮が「おばさま」なんて呼ばれるのは心外ではないかと思ったのだ。

「あら、だって私はそう呼ばれてもかまわないわ。お姉さま達のお子様ならきっと可愛いに違いないもの。私、うんと可愛がってあげるの」

「ありがとう。宮様」

「蓮宮はご自分の結婚を心配なさい」

と、后宮はぴしゃりとやりこめた。

東宮の結婚が進まないように、蓮宮のお見合い相手も全然決まらなかった。

一度会って、かなり宮も気に入った旧華族の男性は「恐れ多い」とお断りしてきたし。

后宮は自分の娘が断られるなどという事に内心は非常に腹を立てていたが、顔には出さないようにしている。

東宮といい、蓮宮といい、なぜこうも相手が決まらないのか。

それは旧皇族も旧華族も、后宮が「姑」となる事は嫌だと心から思って居るから。

まだ帝が東宮だった頃の、突然ふってわいたような電撃的な結婚。

そして様々なしきたり破りを彼らは忘れてはいない。

あのドレスと短い手袋の記者会見を。

「私はお姉さまのように美人ではないからきっと無理よ」

諦めきってる義妹を見ると菜子は断然燃え上がる。

「そんな事ないわ。結婚は顔でするものじゃないもの。それに宮様は最近コンタクトにされたでしょう?その方がずっと素敵よ。お召し物だってよくお似合いだし。宮様は明るくて上品で本当に素晴らしい方よ」

菜子がそういうと蓮宮はにっこり笑って

「そうね。でも無理して結婚して失敗してもいけないから流れに任せるわ」と言った。


トンボが飛び交う季節になり、秋月宮家では「着帯の儀」が行われた。

それは一般で言う「戌の日」の儀式の事で、荘厳な空気の中で行われた。

宮邸では宮はモーニングで、菜子はアイボリーシルクのドレスで使者を迎える。

使者は「帯親」である春日宮大殿下の指図により、宮家に「着帯」を届けた。

「春日宮大殿下の思し召しにより、帯をお届けまいらせる」

「ありがとう存じます。謹んでお受けします」

と宮は白木の箱を受け取る。

その中に入っているのは帝からの下賜された「生平絹きのひらぎぬ」と呼ばれる布で、表が白で裏が赤、長さが4メートル55センチ、横幅が46センチもあった。

それを侍女長の介添えで菜子のドレスの上から回して締め、それを宮が帯を結んで儀式は終わった。


その後、夫妻で祝い膳を囲む。

大きくなったお腹を見ながら宮は楽しそうに「いよいよだね」と笑い、菜子は「少し不安」と言った。

「いくら当たり前の経験と言われても初めてだし、心配。不安。ちょっと怖いです」

「立ち合おうか?」

「宮様が?」

「そうだよ」

「それがちょっと・・・困ります」

菜子は想像しただけでぞっとした。宮が隣になどいたら産むものも産めない気がする。

「それは結構ですから。側に・・いて下さったら」

「うん」

宮は大きく頷いた。


その後、御所に参内し帝と后宮に「着帯」を終えた事を報告した。


10月23日、仮御所の中は急に慌ただしくなった。

秋月宮妃の出産が始まったという急報がもたらされたのだ。

「いよいよか。二宮はどうしているの?」

帝のお尋ねに侍従長は「すでに病院でお待ちになっています」

「そうか。生まれたらすぐにしらせよ」

いよいよご自分の初孫が誕生するという喜びと緊張で帝の頬は緩みっぱなしだ。

一方后宮は笑う事無く「何事もないといいけれど」

「何事って」

「出産は女の戦いですよ。予測のつかない事が起こるものです」

「不吉な事をいうものではないよ」

「失礼。私と来たら」

でも、もし生まれるのが男子であれば厄介な事になる。

どうしても男子は東宮家がもうけなくてはならないのだ。

帝は通常の公務を行いつつも、時々時間を気になさるよう様子。

后宮は出産など頭にないように、ひたすらその日のスケジュールを淡々とこなされた。


そして夜、ついに侍従長から報告が入った。

「内親王殿下ご誕生です!」

仮御所は一気に華やいだ雰囲気になった。

今回も読んで下さってありがとうございます。

いよいよご誕生。内親王殿下です。

国民は総出で喜んだし、可愛いお姿がテレビで流れるたびに何だかほっこりした記憶が。

そんな今は昔の話です。

今後もよろしくお願いします。

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