【番外編】正反対の二人(7/7)
みにくいアヒルの子は、同じアヒルからいじめられ、遂に彼らの元を離れる。
旅に出たみにくいアヒルの子は、道中で様々な動物たちと会うのだけど……。
その動物たちともうまくいかない。
自分の居場所を見つけられないまま、旅を続けていると――。
冬を迎え、寒い日々が続く。
この厳しい寒さをなんとか耐え抜いた、みにくいアヒルの子は……。
春に自分がアヒルの子ではなく、白鳥だったことに気付く。
さらに仲間となる白鳥が、迎え入れてくれて――。
ようやく自身の居場所を手に入れるのだ。
このあらすじを思い出した私は。
しみじみと思うことになる。
みにくいアヒルの子を、私は地でいった気がすると。
だって。
地味で冴えない令嬢だった。
上級生や卒業生に嫌がらせを受けたりもした。
でも何とか自力で嫌がらせを回避することができたのだ。
だが腕力には敵わない。
そこに颯爽と現れ、助けてくれたのがガイルだ。
そしてガイルは……。
「ドリュー子爵令嬢は何を言い出すのかと思ったら。みにくいアヒルの子!? そんなことないと思う。いや、そうか。みにくいアヒルの子でもいい。でもさ、気づいただろう? 君は俺達の仲間だ。俺達……つまりは王太子、王女、公爵令嬢、宰相の息子、そして俺の仲間ということは。白鳥の仲間なんだ。つまりドリュー子爵令嬢は、みにくいアヒルの子だったかもしれない。でも今はもう、白鳥なんだよ」
そう言ってくれたのだ。
これは本当に嬉しい。
私、白鳥でもいいのかな。
白鳥として、認めてもらえたのかな。
「とっくの前に、みんな認めているよ」
ガイルの言葉に励まされ、そして――。
彼自身の気持ち。
つまりは私を好きだというその気持ちも、受け入れることにしたのだ。
でも本当に不思議だった。
どうして冴えない私なんかのことを好きなのかと。つい尋ねると……。
「ドリュー子爵令嬢のことはさ、実は子供の頃から知っていた。剣術大会、見に来てくれていただろう?」
まさか気づいていたの!?と驚くが、事実なのでベンチに座った私は、緊張しながら頷いた。
「毎年、差し入れをくれていたよな。多くの令嬢が、自身の名前や紋章を刺繍したハンカチを同封して、アピールがすごかったんだ。私を見て!という主張が強くてさ。俺……あんまりそういうの、得意じゃないんだ。でもドリュー子爵令嬢は一切自身の名前や身分を示すものを同封していない。でも俺の成長に合わせ、その時に必要としているもの……傷薬だったり、武具の手入れの道具だったり、革手袋を贈ってくれた」
ガイルは名乗らない私が気になり、一度、変装し、スタッフのフリをしたことがあった。そして私から差し入れを、直接受け取ったというのだ……!
これには驚き、もう隠し立てはできないと分かった。
そこで私は白状する。
「名前や紋章を出さなかったのは……私なんかがオルソン様を応援しているとバレるのが、恥ずかしかったらです……」
「ドリュー子爵令嬢は、自分自身が大したことのない人間だと思っているみたいだけど、そんなこと、ないから」
「!」
そこでガイルは笑顔になる。
「そういう控えめなところも、俺は気に入っていた。だから王立ハウゼン高等学院に、ドリュー子爵令嬢も入学すると知ったら……。ズルをした」
「ズル!?」
ガイルはローレンス王太子に頼み、彼経由で学院に働きかけてもらい――。
なんと私を自身の隣の席にすることに成功したというのだ!
「席が隣になってからも、俺のことサポートしてくれたよね。居眠りした授業のノートを見せてくれたり、剣術の練習で手が荒れていたことに気付くと、ハンドクリームもくれただろう。……すごく嬉しかったよ」
さらに後日ローレンス王太子から、重大な話を聞いた。
それはデビュタントのパートナーを自身が申し出たことで、私が上級生に呼び出された件だ。
「王太子殿下は俺に『愛する女性のことは、ちゃんと守らないとダメだ。騎士の訓練や練習で忙しいのも分かる。でも彼女がピンチの時には駆け付け、助けないと』と言われて……」
なるほど。そこで父親である騎士団長の協力を得て、私の今日の予定も掴んだのね。
「オルソン様、ありがとうございます。素直な気持ちを聞けたので、安心できました」
「そっか。良かった……! 騎士の修練試験より緊張した。でも……これからもよろしくな。あ、あと。俺のことはガイルと呼んで。いずれ婚約するんだからさ」
自然にそうガイルに言われた時。
幸せを感じた私は、思わずボロボロと泣き出してしまう。
「うわあ、どうしたんよ、ドリュー子爵令嬢! いやポーラ嬢! 泣かないでくれよ。泣くなら、俺、抱きしめちゃうぞ!」
それは大変と泣くのを止めそうになっていた。
でも……。
ガイルにぎゅっと抱きしめて欲しい気持ちになっていた。
「ポーラ嬢、ズルいぞ、そんな顔を」
そう言うと、ガイルはぎゅっと私を抱きしめた……!
逞しい胸に抱き寄せられた私は……とても幸せだった。
お読みいただき、ありがとうございました~!
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