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銃剣と薙刀 13

「あのガキ、どこに消えた……!?ウチの班どころか生き残った人間をほとんど殺しやがって……!!絶対ブッ殺してやる!!」


 アリーフと交戦した者の中で、1人だけ応援で呼ばれたが敵わず、死んだふりをして生き延びた者がいた。仲間の死体から弾を掻き集め、小銃を2丁両手に持ったまま復讐のために消えたアリーフを必死で探す。

 瞬間、円を描いて飛ぶ一丁の銃剣付きドラグノフ・ライフルが、車輪のような凄まじい速度と回転を持って彼を背後から追尾し、それから数秒もかからない内に彼の身体を両断した。


「?」


 股から縦に切り裂かれた兵士は、最後まで自分が殺されたことに気づかず、事切れる最後の時まで足を前に出そうとしていた。


「あぁ……少しブランクがある。昔は始末した後に銃が俺の方に戻ってきたんだが」


 割れた死体をひょいと跨ぎ、アスファルトに突き刺さったドラグノフを容易く引き抜いたのは、他でもないクランストロだった。チェスターコートの上から反動制御の肩当てをつけたのみの簡素な装備の彼は、丘の上の方を見上げ、ラスカロフ家の屋敷の金縁の窓枠を眺めた。


「あそこがラスカロフ邸か、会ったことあったっけな」


 クランストロはまだ濃く残る黒煙を、ドラグノフを一薙して振り払い、目的の場所へと向かった。この5分前、要請を受けてやってきた兵員を乗せた陸軍の輸送トラックが爆発する事故があった。生存者はいなかったが、付近の避難民は事故の直前に銃の連射音を聞いたという。


 ***


「たとえばきみがきずついて、くじけそうになーったときは」


 カランビットを指先を軸に物騒にも鮮やかに回しつつ、ジェスタフは薄気味悪いほど似合わない童謡を地声をやや高めに口ずさんで歩いている。視界の先には血反吐を吐いて蠢く私兵が1人。

 カランビットとは猛禽類の爪を思わせる鉤状の刃物だ。狩猟用にも白兵戦にも用いられる。


「かならずぼくがちかよって、わたーしてあげるよ引導を、ヘイ♪」


 ジェスタフは残酷に歌詞をいじったオリジナルの替え歌を歌って来た道を引き返し、半死半生の私兵達を探しては歌詞の通り引導を渡していた。カランビットで喉笛を掻き切って。

 特に、ラスカロフの部屋の場所を問い詰めた私兵は股間を潰しただけだったので、真っ先に戻ってトドメを刺した。この躊躇と抜け目の無さが、ジェスタフの強みだ。

 しかし、2人くらいは微かに息があったものの、ほとんどは失血死か即死であり、わざわざ引き返すまでもなかった。


「准尉」


「ん?」


 後片付けも終えたジェスタフがスキットルで隠れ酒をやっていると、背後から彼の側近がやってきた。リガトーニという学部違いのジェスタフの同期だ。彼は小脇にあるものを抱えている。さっきアリーフが見逃してやった少女だ。どうやら逃げ切れなかったらしい。


「裏口で張っていたらコイツが走ってきましてね。目こぼしする理由も無かったので、とりあえず捕らえてみたんですが」


「殺したのか?」


「いえ、首を絞めて落としただけです。俺は銃よりこっちの方がずっと得意ですから」


 そう言うと、少女をジェスタフの足元へ放り投げて、浅黒い指先に宿す丁寧にヤスリで整えた両掌の爪を、ジェスタフに見せた。ジェスタフはそれに関しては興味を惹かれず、しゃがんで少女の水色のワンピースの襟を掴んで顔を見ると、唇に指を入れて前歯をなぞった。


「まぁ美形だがガキだな。抱くには早い。コイツ1人だったのか?」


「はい……いや、犬を一匹連れてましたが、そっちは蹴り殺しました。さっきまた雪が降り出しましたが、今頃流れ広がるものが、降り積もる白銀の粉雪を血合いの紅に染め上げていることでしょう」


「文学部が。変に気取った表現を使うなよ。そうか。こっちもさっきニョッキ君とクラテッロ君が金をほぼ詰め込んだと連絡が来た。アリーフが来たら帰投するぞ」


 ジェスタフは少女の襟を掴む手を離し、彼女の頭を床に叩きつけたが起きる気配は無かった。


「どうされますか。あなたにこの娘の処遇は委ねますよ」


 ジェスタフは立ち上がって、少し悩ましげな顔でカランビットの先端で指を突いた。


「アリーフには黙っているが、ラスカロフには子どもが2人いる。コイツは名前は知らないが長女の方だ」


「アイツは子どもには情け深いですからね。してもう1人は?」


「もう1人の長男は逃げたのかもしれん。だが年齢は17で、それなりに身体も鍛えてるはずさ。場合によれば脅威となり得る。このガキはどの道殺すが、もし長男の方を見つけたらコイツを人質に無力化し、双方を円滑に処分する」


「分かりました」


「奴とは外務部時代に宴席の場で面を拝んだことがある。話したことは無いし買ってるわけじゃないが、中々に気骨のありそうな面構えだった。確か名前は、えーと……ラスカロフ・ミハイル」

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