焼肉
前話
オーセの独白
明け方前から忙しく動いたため、昼過ぎまでは休憩することになった。
大木を利用した家を一つ準備してもらい、中で先ほどのことについて小声で話をする。
「あんなこと言わなくても、普通に助けてあげればいいだろう。そもそもセフの子供が亡くなったのが四日前らしいが、俺らはとっくにこっちに来てたぞ」
「その程度は嘘とは言わんわい。ドラマチック演出じゃよ」
那須じいの顔はまたもゲスじいモードになっている。
「あら、私は本当にあのように思ってます」
「ハヤト君があの人たちを見捨てるわけないんだから、それなら感動してもらうほうがいいと思うなあ」
「ハヤト君がリーダーになるのが一番にょろ」
「ピピは木に住めて嬉しいっピー!」
見過ごせない気持ちは皆も同じようだ。
「なぁに、脳筋どもは使いようじゃよ。連中にとってもWIN-WINじゃ。いい加減、逃亡生活じゃなくてハーレムに向けて活動したいぞい」
那須じいが映画でも見られないような悪い顔で笑っていた。
「あの話を聞いた後でそんなことを言えるじじいは、芯から下衆だと思うにゃ」
「「「それは間違いない」」ですね」
夜が明ける前から頑張りすぎていたせいか、非常に眠い。昼寝から起きたら忙しくなりそうだ。いくつかの案を思い浮かべながら、俺は眠りについた。
昼寝から起きた後、外で栗田と一緒に居た那須じいも呼び入れ、少し今後について話しあう。
「オーガたちを助けるにあたって、衣・食・住にどう着手するかを考えたい」
みんなは座って話を聞いてくれている。
「俺は、住はそこまで力を入れなくていいと思っている」
大木の家は地面に牧草を生やしてもらって、そこそこ快適に住めているからだ。
「そうだね、追っ手が来て逃げることになったら無駄になるよね」
「わしも厩舎だけあれば文句ないわい」
「なので衣と食、特に食だ。どちらも二つにわけて考える。『現状を手っ取り早く良くする支援A』と『なるべく自立を促す支援B』だ」
「そうですね。長生きさんたちですし、私たちが居なくなったら元通りになるようじゃいけませんね」
「じゃがまずは手っ取り早いほうのAじゃな。さすがに今は痩せすぎじゃ。オーガらしくなってもらうためにも、がっつり食ってもらう必要があるわい」
「たくさん食べて元気になってから、狩りの方法とか道具を教えるほうがいいにょろ」
「トラ美の本気を見せるときが来たようだにゃ」
トラ美は三回、狩場を往復して熊・鹿・猪を仕留めてきた。
「「「鹿が喰える、猪が喰える、熊が喰えるぞー」」」
「「「肉が喰える喰えるぞー、肉が喰えるぞー」」」
「那須じい、何やってんだ……」
広場では、トラ美の獲物の血抜きをしながら、那須じいがオーガの子供たちと一緒に歌っていた。
「ぐへへ、歌は教育において重要な役割をもつんじゃよ」
「その歌がどう子供の教育に役立つんだよ」
「わしらの技能あっての生活じゃという認識を、な」
「恩に着せすぎるのは好きじゃない」
どこかで聞いたような歌なのでおそらく替え歌なのだろう。
「でもすごく楽しそうですよ。トラ美ちゃんも歌にされて、嬉しそうです」
「そのとおりじゃっ、続きいくぞいっ」
那須じいは子供たちを振りかえって歌を再開した。
「「「トーラ美ーのおーかげーで肉が喰えるぞー」」」
「「「肉が喰える喰えるぞー、肉が喰えるぞー」」」
「はぁ……普通にやれないもんなのか」
「トラ美の賛美歌らしいにゃ」
たしかにトラ美はまんざらでもなさそうだった。
強くて頼れるトラ美は、オーガの心を完全につかんだようで、さっきの賛美歌を歌いながらも、子供たちは首元のモフ毛に抱きついてくる。
こちらに来て以来、町ではトラ美は怖がられていたせいか、なごやかに子供がじゃれてきているのを見るとほっとする。
「さあ肉と芋を蒸し焼きにするぞい! がっつり食ったら少し寝て、起きたら訓練じゃ!」
那須じいは教官気取りだ。
トラ美の狩りにしろ、俺のキュアにしろ、オーガたちの自立とはほど遠い。つまり今は支援Aのみだ。
何か安定して食料を確保できる手段を提供する必要がある。
できれば場所が変わっても使えるような手段がいい。
だが狩りの方法・道具などの知識はあいにくと持ち併せてない。
……夜にまた那須じいに相談してみるとするか。




