流れを追え (下)
直接の上司からの聞き取りは一時間を超えたが、マチに対する罰は形式上のものだけになった。シンドウの自爆は、マチには防ぎようがないのは明らかだ。
それに安堵しつつ、マチは取調室を出て、トヨサキ精機の企業警察オフィスを横切る。途中でコーヒーサーバーでコーヒーを手に入れた。二つのカップを手に、オフィスの一角にある個人用の作業室の一つのドアを、背中で器用に開けた。
「おう、お疲れさん」
その部屋はギブスンの部屋だ。椅子にはギブスンの巨体が覆いかぶさるように鎮座している。部屋が狭いのか、ギブスンが大きすぎるのかは、判断が分かれる。
コーヒーを差し出しつつ、マチは壁に背中を預けた。
「見たところ、思考を乗っ取られた割に、ピンピンしているな」
ギブスンがコーヒー受け取りつつ、ニヤニヤとして言うがその瞳の奥には気遣う色がある。
「慣れているのさ。やるのもやられるのもね。そちらさんは」
部屋の中で視線を走らせたマチは、作業机の端の壁際に、煤のようなものを見つけた。
「身代わり装置を焼かれたか? ふぅん」
マチとしては、そこまで自分に強烈な負荷がかかった気はしなかった。相手はマチの思考を焼き尽くす気がなかったのだろうか。
「古い機種だったからな」
ギブスンはマチの視線の先を追って応じた。
「これで新型が支給される。楽しみだな、新しいおもちゃさ」
「あまり早くぶっ壊すなよ」
二人はコーヒーをすすり、話題を本題に移した。
「空港の調査はどうなってる?」
「あれは企業警察も首都警察も関わってない。警視庁がやってるよ。政府も気を尖らせている。防衛省、外務省辺りかな。俺の手元には、情報は密かに盗みとった程度しかない」
「遺留品を知りたい」
ギブスンが首を振って、バンザイする。
「死者は数十人で、形が残ってない人間が何人いると思う? 遺留品とチリの区別もつかない」
「シンドウの荷物はどうなった?」
「消し飛んだんじゃないか?」
マチは壁から離れて、カチューシャのコードを引っ張り、ギブスンの端末につないだ。思考による操作で、シンドウが自爆する寸前の映像を出し、停止させる。
「シンドウは手に荷物を持っていない。どこかに置いてあったんだ」
その言葉通り、シンドウの近くに彼の荷物はなく、手に小さなバッグを持っているだけだ。
ギブスンは疑わしげである。
「荷物を用意する暇なんてないさ。高飛びするんだぞ」
「何かおかしいと俺は思う」
マチは低い声で言う。まるで独り言だった。
「海外に行って、そこで電子マネーを現金化するか、電子マネーのまま使用するか? それなら海外に行く必要は、追っ手を避ける以外にない。そもそも電子マネーを盗んで、電子マネーの状態で保管するか?」
マチが視線を画面に向けたまま、続ける。
「トヨサキは間違い無く、電子マネーの移動を密に監視する。その監視は、現金化で、回避することが少しはできる。そうだ、電子マネーの盗みをするということは、現金化が避けられないんだ。電子マネーのまま保管するわけがない」
「しかしなぁ」
ギブスンは呆れている。
「実際に、逃がし屋で金を使ったんだろ? じゃあ、現金化はしてない。どこかに電子マネーで隠して、海外に飛んだら、そこで密かに引き出す、そういうイメージじゃないか?」
黙り込んだマチは、指でデスクを何度か叩くと、ギブスンを押しのけて、端末に正対した。ギブスンの座っている椅子の車輪が激しく軋む。
「どうしたんだよ、マチ」
「忘れていたことがある。この第三首都で最も金に縁のある奴らがいる」
目を丸くするギブスンの目の前で、マチはカチューシャに装備されている端子の全てを、次々と端末につないでいく。
「誰のことだ?」
「首都警察さ」
ギブスンが人工知能に検索させていた、シンドウの銀行口座と関わりのある銀行口座を次々と再検索させるのは、長い時間がかかった。
マチの発想に従って、首都警察と関わりのある銀行口座と照らし合わせたのだが、これは簡単にはいかない。首都警察の構成員は、その汚職にまみれた性質上、極めて情報管理が堅固と言える。
それでも調べられる限りの情報を確認して、最終的には一つの口座がヒットした。
それは首都警察の一人の巡査の銀行口座である。この口座に、シンドウから千アスの送金があり、この千アスは即座に引き出されている。
「これだけじゃ、どうにもならないだろ?」
呆れるギブスンを置き去りに、マチはオフィスを出て、その首都警察の巡査がいる交番へ向かった。
移動の最中に、ギブスンから首都警察の情報網に割り込んでその巡査の現在地を把握した、という連絡が来た。まだ交番にいるらしい。
マチにとっては、これが唯一の線になりつつある。
その巡査からシンドウと首都警察の関わりがわかれば、あるいは、真相に迫れるかもしれない。あくまで、かもしれない、だ。
松代シティの中心部に近い位置にあった交番が見えてくる。交番に走りより、中を伺うと、若い童顔の男が一人でそこにいた。
「何か、ありましたか?」
警官の制服のその男の言葉に、マチが答えようとした。
したが、その前に背後から肩を強打されて、そのまま倒れ込んでいた。
いや、強打されたのではない。衝撃銃だ。マチはすぐに気づいた。起き上がろうとすると、背中の中心にもう一発、強烈な衝撃が打ち込まれる。ほとんど意識がないながら、マチの耳は機能していた。
「この男は銃を隠し持っている。危険と判断し確保する」
その声を聞きつつ、マチは意識を失った。
彼の背後で、武装した首都警察の警官が銃を構え、そして手錠を取り出した。
首都警察の取り調べは過酷を極めることで知られている。
彼らは警察でありながら、特別な存在であり、首都の治安を守るために大きな力が与えられている。ただ、今の首都警察は企業警察の台頭を許したことで、対抗措置としてその力の範囲を超えることも、時には行う。
マチへの取り調べは、最初こそ取り調べと呼べたが、すぐに次の段階へ移行した。
つまり、拷問である。
マチとしては自分が企業警察の一員であることを打ち明けるのに抵抗はない。それを話せば、彼が拳銃を携行していたことは自然だし、むしろ、首都警察に企業警察とすすんでことを荒立てる理由もないはずであった。
しかし、実際には、違う方向へ流れ始めた事態に、拷問の段階でマチは気付いた。
彼らはマチから何かを聞き出したがっているようだった。首都警察の拷問の方向性は、マチがなぜあの交番に向かったのが、どういう理由によるのか、にまず照準を合わせているようであった。
マチは反射的に、真実を口にしなかった。つまり、シンドウからの線だった、ということを黙ったのである。
しかし、それでは交番に行く理由はない。首都警察はいよいよ激しく責め立ててくる。
マチは何か、別の言い訳を口にしたかったが、下手なことは言えない。企業警察にも存在する嘘を見破る装置が相手の手にもあるとすれば、黙るのみである。
救いがあるとすれば、マチが企業警察の一員で、これを不用意に抹殺することができない、という点である。
拷問に耐えつつ、マチは企業警察の力で自分が解放されるのを、ひたすら待った。
時間の感覚も無くなる頃にその時が遂に訪れ、マチは立つのもままならないほど疲弊して、解放された。即座に病院へ担ぎ込まれる。爪は剥がされ、骨は折れ、関節は激しく損傷していた。
最新の医療技術による治療を受けているマチを、今度は企業警察の側が詳細に取り調べ始める。マチが首都警察にどんな情報を与え、首都警察がどんな情報を求めていたか、それを調べるのは当然である。
結局、身内からの取り調べが終わる頃に、ちょうど治療も終わった。
病院を退院する日、病室に企業警察の管理官の一人がやってきた。シンドウへの捜査を指示した管理官である。マチは現実世界で、その男を目にするのは初めてだった。
マチはベッドに腰掛け、管理官は椅子に座った。
「我々は」
管理官は重みのある声で言った。その声は仮想映像と共に流れる声と寸分違わない、とマチは思った。
「君に期待すること、大である。難しいだろうが、任務を続行してもらう」
「それは、また……」
大仰な、とマチは言いかけて、気を取り直した。
「分かっていることを、お伝えしましょうか?」
「それはすでに聞き取ったはずだ。それ以外のことか?」
「いえ、ただの推測です」
管理官が黙ったので、マチは話すことにした。
「おかしな点はいくつもあります。シンドウがどうやって電子金庫を破ったのか。奪った金はどこへ消えたか。シンドウはなぜ自爆したのか。首都警察はなぜ俺を逮捕し、拷問したか。はっきりしていることの方が少ないですが、それでも分かることはあります」
マチは視線を窓の外に向ける。仮想映像ではない、現実の光景、松代シティの景色だ。
「まず、首都警察が俺を責め立てた感じでは、どうやら、彼らも一枚噛んでいる。彼らが関わるとすれば、金が関わっているとも言える。つまり、シンドウが奪った金は、首都警察が手を貸して洗濯したか、あるは首都警察に流れて、シンドウの逃走のための準備金になった」
管理官はまだ沈黙。
「そう、こういう目もあります。その首都警察を裏切り、首都警察から逃れるために、シンドウは海外へ逃亡しようとした」
「荒唐無稽だ。推論に過ぎない」
「俺もそう思います。なんでもない、推測です。ただ、この可能性を考えると、別の疑問、電子マネーの消えた先も説明しやすくなる。首都警察という組織が、隠れ蓑になっている、という可能性です。別の問題に触れましょうか。シンドウが自爆した理由ですが、首都警察が抹殺した、という可能性も出てくる。もしそうなら、首都警察はシンドウの金をほぼ総取り出来るわけですから」
管理官は黙ったまま、マチを見ている。マチも黙って見返した。
「さて」マチは視線を宙に向ける。「そもそも、シンドウがどうやって電子金庫を破ったか、それを是非、聞いておきたいですね」
「あれは力技による突破だ」
管理官の言葉はこゆるぎもしない。
「力技、ですか。確かに、そういう話は聞いていますよ。重度の損傷を受けていた、と」
「それを疑うのかね?」
「その力技を、シンドウが使えたかが疑わしい」
その一言に、管理官は鼻で笑って見せた。しかしそれだけだ。マチは続ける。
「そもそも、そんな重度の損傷を加えるほどの力量があるなら、もっと多くのことができる。自分の存在を偽装することもできるし、逃がし屋を使う必要もない。空港までは足取りが不明なのに、いきなり空港で監視カメラに気付かれることもないし、そもそも、自分が金を盗んだと悟らせないこともできたはずだ。そこがそもそも、ちぐはぐですよ」
マチの言葉に、今度は管理官も黙っていた。短い沈黙が降りる。
「俺の頭に」
沈黙を破ったマチが、トントンと自分の頭を指で叩く。
「土足で踏み込んだ間抜けがいたことは報告しましたよね? その間抜けの後を追いましたが、どこに逃げて行ったかは、報告し忘れました」
返ってくる言葉ない。今度の沈黙は短い、マチが顔をしかめて言葉を続けた。
「そいつは、トヨサキ精機のグループに属する、情報保安業をやってる企業の庭に逃げて行ったんです。向こうは追跡を振り切ったつもりでしょうけど、甘すぎます。これは、指導の必要があると伝えてくださいね」
「ふむ、有益な指摘だ」
口調こそ変わらないが、管理官の気配に、針で刺すような感触をマチは感じた。それでも、まだ話の核心には触れていない。
「さて、整理しましょうか。シンドウには不相応な情報操作力をどう説明するか。それは不可能です。明らかに、彼の実力を超えた力が作用している」
ここに至っても、マチはさりげなく、そっと撫ぜるように、結論を口にした。
「つまり、シンドウは、電子金庫から金をくすねてはいないのではないですか?」
「それは前提条件だ。覆すことはできない」
「そうでしょうね」
肩をすくめるマチに、管理官は冷徹そのものの視線を返した。
「確かに強引ですね。すみません。推測です、ただの」
マチが立ち上がった。立ち上がり、管理官を見下ろしている。
「シンドウは確かに金を盗んだ。金を盗んだが、おそらく、何かと取引があった。首都警察は俺の印象だと、それほど狡智に長けてはいない。つまり連中も、操られたんでしょう。シンドウを逃したのも、殺したのも、首都警察が関わっていても、首都警察の考えではない」
「面白い理論ではある」
管理官も椅子から立ち上がった。二人は睨みあうでもなく、お互いを視界に入れていた。
「それでは、君にはその黒幕を暴いてもらおう」
「無理ですよ、俺はそこまで有能ではありません。ただの三等警部です」
そうかね、と管理官はつぶやき、彼に背を向けた。部屋を出る前に、
「君には追って任務を通達する」
と言い残し、管理官は去っていった。
病室に一人残ったマチは、少しの間の後、ベッドに座り、上体を倒すと、
「やっちまった」
とつぶやいたものである。
これは彼以外の誰にも聞こえなかった。
ある夜、松代シティの中心地の一角。
看板の灯りや電飾が道を行く人の影を無数に生み出し、密集した影が右へ左へ、寄せては返し、また寄せる。
空中から舞い降りた飛行車両のドアが開き、男が二人、出てくる。
一人は目立たないが高級な背広をまとい、もう一人は、首都警察の制服を着ていた。
駐車スペースの安全のための地上からせり出したガイドバーを離れた二人の背後で、ふわりと舞い上がった飛行車両が去り、ガイドバーが地上に収納される。その頃には二人は歩き始めていて、飲食店街の方へ進んでいく。
その彼らが突然に肩を震わせると、立ち止まり、そのまま直立不動になる。
周りを行き交う人々が視線を向けたのも短い時間で、二人は別々に満ちを選んで進みだした。
足取りは周囲に人がいない状況で見れば、やや機械的で、違和感を持つ者もいたかもしれないが、しかし二人はそれぞれに周囲を行き交う人に溶け込み、その不自然さは見逃された。
背広の方の男は、まっすぐに前を見て、しかし瞳には何も映さず歩き続け、自然な歩調で路地へ入り込んでいった。路地をさらに奥へ、奥へと進み、やがて灯りがほとんど届かない空間に立つ。
「さて」
暗闇から染み出すように現れたのは、黒い服の男だった。まさに闇からにじみ出たようで、いつからそこにいたのかはっきりしないほど、完全に闇と化していた。背広の男は気づかない。
いや、気づけるわけがない。
なぜならこの男の出現と同時に、背広の男がまるで知らない場所に唐突に放り込まれたように周囲を慌てて確認したからだ。彼にはここに自分がいる理由、そもそもどうやって来たのか、そんな何もかもが記憶になかった。
そして、自分の身に起きた異常に思い至り、周囲を無意識に確認しようとした。自然、黒い服の方を振り返ろうとするが、それより先に、その頭髪を掴まれ、顔面を路地を作る建物の壁に顔面をしたたかに叩きつけられていた。
鈍い音と苦鳴。
黒い服の男は容赦なく、呻く男の顔をもう一度、壁に叩きつけ、体を振り回して地面に抑え込む。ごっそり髪の毛が抜けていたが、そんなことは背広の男にはどうでも良かった。この先の展開を無意識に思い描き、そしてそれが現実になることは、否定しようにも否定しきれない。
そう、髪の毛どころではない、彼には明確な殺意を向けられていた。
地面にうつ伏せになり、背中に膝を落とされた男が、やっと喚くことを思い出した。息を吸い込むのもままならないが、精一杯の声を出す。
「誰だ! 俺を、誰だと……」
返事はなかった。今度は地面に顔が押し付けられ、口の中に泥が入る。息がつまるが、顔は押し付けられたままだ。両手両足がデタラメに暴れさせても、拘束は緩まない。
唸るしかない背広の男の背中に、硬い感触が触れた。一気に血の気が引く、衝撃銃だと思ったのだ。
それも、普通の衝撃銃ではないと、気配がはっきりと告げている。
止める間もなかったのは、黒い服の男が何の躊躇もなく引き金を引いたからである。
激しい衝撃音がして、全身が一回大きく跳ね、それっきり背広の男は動くのをやめ、黒い服の男はひっそりとその場を去った。
後に残ったのは、死体が一つきりである。
翌日、首都警察の幹部の一人が変死体で見つかった、と大騒ぎになった。
路地の奥、という不自然な場所で見つかった死体は、顔面に大きな損傷があったものの、死因は心臓麻痺というのが検死の結果だった。
首都警察は密かに捜査を続けつつ、この件は公には、事故とも殺人とも判定しなかった。
マチが退院し、数週間後のその夜。
トヨサキ精機の幹部の一人が関連業者との会合の帰りに姿を消した。
このことはすぐに報道され、話題となったものの情報の本質のままに、あっという間に劣化し、人々の中から情報として失われた。
この幹部こそが、シンドウを操縦し、また首都警察をも操縦した黒幕だったのだが、これを表立って摘発できなかったのは、企業警察という立場でも対抗できない、それほどの地位を社内で持つ男だったからである。
実際のところ、幹部のその行動の発端にあったのは、お約束とも言える女との関係であり、シンドウはただ良いように利用されただけだった。この幹部が女を抹殺するためと、自分とその女との関係を抹消するために、二十五万アスをばら撒く必要が生じ、そのために全てが偽装されたのである。
シンドウはその幹部の力を借り、電子マネーを受け取った。もちろん、これはすぐに手放すはずだった。
だが、シンドウも幹部の行動を予測し、首都警察を巻き込むことにした。これは、その後の捜査の展開の中でも、シンドウが死んでいるため、仮定だが、説得力のある仮定である。
首都警察も、シンドウが預かった形の大金を、奪う気になった。なったが、そこで幹部の方も首都警察と接触した。
結果、首都警察はシンドウを殺し、相応の報酬とシンドウの持ち物を受け取り、幹部も女をいいように処理して、平和な日常へ戻った。
戻ったが、最終的には闇に消えたわけだ。
この悪事を暴いた人間は存在していない。そもそも悪事がないのだから、暴いた人間もいないのだ。
ただ、マチが退院後に、トヨサキ精機の企業警察の力を借り、解明に奔走したことは事実である。そこに至る洞察を見せたことが、その理由であり、またマチとしても、あまりに深く踏み込んだがために、身を守るためには危険を冒す必要が生じたわけだ。
全てが片付いた時、と言っても、幹部が秘密裏に抹殺され、それに関係する全てに決着がついた時は、すでにシンドウによる自爆テロの印象は世間からほとんど消えていたと言って良い。それくらいに時間が過ぎたのだ。
捜査の終了がマチに知らされた時、彼はまた別の案件に関わっており、シンドウから端を発した、トヨサキ精機の機密事項となった一連の流れは記憶の深い位置に埋もれかけていた。
いつもの管理官の仮想映像での通知を受ける部屋で、やはりマチは右へ左で歩いていた。そして髪の毛を掻き回している。
「それでは」管理官が無表情に言う。「君には賞与が検討されていることを伝えておく。今後も職務に精励するように」
「あ」マチは足を止め、手を下ろし、管理官の映像を見た。「お願いがあるのですが」
「聞こう」
「シンドウの遺族に、何か、補償をしていただけますか?」
「それは無理だ。彼はテロリスト、犯罪者だ」
マチは少し黙ったが、しかし、視線は逸らさなかった。
が、管理官も譲るわけがない。二人とも黙っていた。
「良いでしょう」
マチは諦めたように、頷いた。管理官も頷く。そして、
「シンドウの遺族の情報を、君に渡そう。もちろん、これも機密だ。すぐに忘れるように」
と言い残して、映像が消えた。
了
読んでいただき、ありがとうございます。
今回はテストを兼ねて投稿しました。
今後、投稿できるようになれれば良いな、と考えてます。




