表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死者の午後  作者:
死者の午後
12/53

12.

引き続き流血注意

 そして気付いたら、タルデは1人血の中に立っていた。


 苦しませるつもりはなくて、ただ彼らが生きて動いて思考しているのが許せなかっただけだから、気が済んでタルデは血を振り払って剣を納めた。そして唯一の友の傍に跪いて、タルデは呻いた。


「‥‥あぁ‥‥」


 それは、彼女が無残な殺され方をしていたせいでは、多分ない。雨が血を流してしまって、それで彼女がただの物体に見えてしまったせいでも多分ない。ただ、物悲しかった。分かってしまったから。


「‥‥あぁ‥‥マーニャ、私は‥‥」


 呟くことに意味はないと、そんなことは分かっていた。けれど言葉にしなければならないのだと、そんな義務感に駆られて、平坦な言葉を紡いだ。


「私は、もぅ、お前の死を受け入れてしまっている」


 タルデは目を閉じた。


 思うに、タルデが奴等を斬り殺したのは、半ば儀式めいたことだった。許せないと思い、思いながらその対象を全て目の前から排除して、タルデは怒る理由を自分で斬り捨てた。だからもう、タルデはマーニャの死に対して理不尽な怒りをなくしてしまった。ただ、あぁ、死んでしまったのだなと、悲しく哀しく思うだけだった。


「私は‥‥狂うこともしてやれない」


 涙も出ない。


 爆発しそうなほどの何らかの感情は、もうすでに、今は動かないもの達にぶつけ尽くしてしまった。もぅ、どの死体を見ても心は動かないだろう。それがたとえ、マーニャにとどめを刺した者だったとしても、先程のような怒りも何も、きっと自分は抱けない。


 タルデはそうしてしばらくの間、目を閉じて雨を受けていた。もしかしたらそういうように狂っていたのかもしれないが、こんな狂気は逃げ道にもならない。現実を見据え続ける狂気など、マーニャの救いにもなりはしない。


 やがて、タルデは目を開けた。


 マーニャの死体を抱き寄せた。


「‥‥守れなかったね‥‥」


 悔恨よりも虚しさで、タルデはそう呟いた。


 そして、マーニャの豊かな髪を少しつまんで、剣を抜いた。


「マーニャ、お前を、全部連れて行くのは無理だけど」


 簡単に髪は切れた。タルデはそれを飲み込んだ。


「‥‥せめて、髪を一房、連れて行くよ」


 己と同じ温度になってしまった友人を抱いたまま、タルデは音もなく立ち上がった。転がる死体には目もくれないで。踏みつけても気にならなかった。


 マーニャを埋葬しなければならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ