12.
引き続き流血注意
そして気付いたら、タルデは1人血の中に立っていた。
苦しませるつもりはなくて、ただ彼らが生きて動いて思考しているのが許せなかっただけだから、気が済んでタルデは血を振り払って剣を納めた。そして唯一の友の傍に跪いて、タルデは呻いた。
「‥‥あぁ‥‥」
それは、彼女が無残な殺され方をしていたせいでは、多分ない。雨が血を流してしまって、それで彼女がただの物体に見えてしまったせいでも多分ない。ただ、物悲しかった。分かってしまったから。
「‥‥あぁ‥‥マーニャ、私は‥‥」
呟くことに意味はないと、そんなことは分かっていた。けれど言葉にしなければならないのだと、そんな義務感に駆られて、平坦な言葉を紡いだ。
「私は、もぅ、お前の死を受け入れてしまっている」
タルデは目を閉じた。
思うに、タルデが奴等を斬り殺したのは、半ば儀式めいたことだった。許せないと思い、思いながらその対象を全て目の前から排除して、タルデは怒る理由を自分で斬り捨てた。だからもう、タルデはマーニャの死に対して理不尽な怒りをなくしてしまった。ただ、あぁ、死んでしまったのだなと、悲しく哀しく思うだけだった。
「私は‥‥狂うこともしてやれない」
涙も出ない。
爆発しそうなほどの何らかの感情は、もうすでに、今は動かないもの達にぶつけ尽くしてしまった。もぅ、どの死体を見ても心は動かないだろう。それがたとえ、マーニャにとどめを刺した者だったとしても、先程のような怒りも何も、きっと自分は抱けない。
タルデはそうしてしばらくの間、目を閉じて雨を受けていた。もしかしたらそういうように狂っていたのかもしれないが、こんな狂気は逃げ道にもならない。現実を見据え続ける狂気など、マーニャの救いにもなりはしない。
やがて、タルデは目を開けた。
マーニャの死体を抱き寄せた。
「‥‥守れなかったね‥‥」
悔恨よりも虚しさで、タルデはそう呟いた。
そして、マーニャの豊かな髪を少しつまんで、剣を抜いた。
「マーニャ、お前を、全部連れて行くのは無理だけど」
簡単に髪は切れた。タルデはそれを飲み込んだ。
「‥‥せめて、髪を一房、連れて行くよ」
己と同じ温度になってしまった友人を抱いたまま、タルデは音もなく立ち上がった。転がる死体には目もくれないで。踏みつけても気にならなかった。
マーニャを埋葬しなければならない。




