第24話 フォロー欄6
「後藤さん、英語のテストはどうだった?」
「いつもよりは解けたかな。工藤の言うところが結構でててきたからそれで、だいぶ埋められた感じ」
紙パックのミルクティーとワッフルを食べながら、俺は答えた。
テスト終わり、屋上につながる踊り場。流石に屋外での食事は危険だと言うことで、踊り場に避難した。テストは午前中までだったので帰ることもできたが、せっかくなので集まろうということになり、こうしている。
「後で明日香にもそう言っとくわ。なんか、あなたのこと心配してたみたいだから」
今日は珍しくこの場に工藤はいない。何でも委員の仕事で職員室に用事があるとのこと。そして、原田も部活で、今は俺と竹原と莉々葉の三人だけだ。
一か月前は竹原と付きっきりだった工藤も、俺達を信用してか、こうやって離席することが増えてきた。
「テストも終わったんだし、夏休み遊びに行こうー!」
莉々葉はカレンダーアプリを開いて、高めのテンションで尋ねてきた。俺達の学校の終業式は、7月の31日。このテスト終わりから、終業式までは週に一回の登校のみ。
それも短いHRだったり、補講対象者の講習だったり。実質今日から夏休みがスタートしたようなものだ。
「とりあえず俺の入ってる予定は、フェスとバイト。後はクラスの奴らとかバ先の人とどっかいくかなー。二人は?」
「うちデートと家の手伝いだけ。あ、元中の子達と遊ぶ予定入るかも」
「私は別荘で過ごす予定になっているかな。具体的な日程はまだ決められていないの」
三者三様、それぞれ予定が詰まっているようだ。俺と莉々葉はまだにしても、竹原に関しては家の用事だ。
やっぱり人数が増えると、それだけで予定を合わせにくくなる。早めに決めておきたい。
「じゃあどこ行くかだけ決めようぜ。日程はまた後日で」
「よーし。じゃあ何か、探しますか。二人はTikTokから探して。うち、インスタから探すー」
「はいよー」
言われるまま俺はアプリを開くと、竹原が画面を覗き込んでくる。検索バーに「高校生 夏休み」と入力すると、画面上にはそれっぽい動画が流れてくる。
プールや、海だったり。さすがに男の俺からプールとかどうとは、言いづらいので無視してスクロールしていく。
「なんか気になるのある? してみたいこととか」
「うーん、夏祭りとか? 私、行ったことないから気になる」
そのチョイスはかなりいい。夜からなら、昼に別の予定を入れられる
「ありよりのあり」
「できるなら花火大会やってる日がいいな。場所によってはうちが協賛してて、席とか確保できるかもだし」
「なら、それが第一候補で。そっちはなんか見つかったー?」
莉々葉は何やら渋い顔で、キーボードを入力している。
「おーいインスタ担当様。どしたー?」
苦虫をかんだような顔でこちらを見ると、スマホ画面を見せてくる。誰かとのトーク画面でそこには、アカウントのスクリーンショットと「これって、工藤?」っていう文字が書かれている。
「誰それ?」
「三年の男子の先輩。関わったことはほぼない」
「え、怖……っ!?」
「あれだよ。輝来に告った人」
「あー……なんでまた。莉々葉関係なくね?」
「今流れてる噂のせいでしょ。『工藤明日香と仲良くなれば、竹取姫とお近づきになれる』っていう。だから仲のいい、うちに聞いてアカウントを探そうとしてる感じ」
「なんか噂が一人歩きし過ぎて、とんでもないのになってんな。あとキモイ」
俺はため息を一つ漏らす。
俺と竹原が付き合ってるだとか。なんでこうも噂話というのは事実確認をせず先行するのだろうか。しかも「工藤と仲良くなれば」なんてどうして一番ムズイ選択肢だと分からないんだ。
「それって俺が工藤選んだから?」
「そうでしょ。他の人から見れば、遠回りこそ最短の近道だったって結論なんでしょ」
「俺が竹原と付き合ってるなんて噂は、事実じゃないからどうでもいいけど。俺の行動に勝手ないちゃもん付けて、好き放題言うのはやめてくんないかなって思うわ」
噂によって、自分の行動や意志を勝手にネジ曲げられて解釈されるのが一番困る。それをされると俺のこれからの言動に、どれも偏見を持たれてしまう。ないがしろにされるのは、かなり気分が悪い。
「まぁブロックしとく。明日香もうちら6人の相互フォロー以外とはやり取りしないでしょ」
確かに俺と竹原と莉々葉と原田以外……。ん? なんか2人多くね?
「え、誰2人!?」
それに気づいたのは竹原も同様だったようだ。俺達に見せるようにスマホを中央に置き、工藤のプロフィール画面を開く。そこにはフォロー6 フォロワー6の文字が表示されている。
「やばい。明日香が私の知らない間に、他の友達作ってる!」
工藤じゃなくてお前も過保護なんかい。
竹原は震える手でフォロー欄を開いた。下から見覚えのある俺達のアカウントが表示されるが、上の二つは予想もしていないアカウントだった。
「『秋葉』と『後藤メロン農園』……。後藤って……」
「うん。……うちの姉貴と祖父母のアカウントだ」
下のアカウントをタップすると、ビニールハウス内でドヤ顔でメロンを持つ、俺と姉貴の写真が表示された。これは姉が帰省した時「ばあーちゃん、インスタとかやろうよー。たぶん注文とか増えるよ」って無理やり作らせたアカウントだ。
それがなんで工藤のフォロー欄にいる?
「えぇー……俺一言も祖父母がメロン農家なんて言ってないんだけど。てか、このアカウントも教えてないし。てか、姉貴のアカウントもなんで見つけた。てか、どういうこと?」
「お、落ち着け! うちも聞きたい! 今若干怖くなってんだから……!」
「……」
困惑しているのは俺以外の二人も一緒のようだ。姉貴のアカウントは百歩譲って見つけられたとして。理由が全くと言っていいほど考えつかない。
「これってさなに? どういうこと? 明日香は春ちゃんの外堀を埋めようとしてんの?」
「それはないだろうけど……竹原はなんか知ってる?」
今までの傾向的に工藤がすることの根幹には「竹原のため」というものがあるはず。だったら、竹原が何か知ってもおかしくないとは思うけど、
「うー……言えない。たぶんそうだと思うのはあるんだけど……。言えないし、認めたくない! そ、そしたらうちのメイドがやばい奴って認めるようなもん!」
頭を抱え考えこみ始めてしまった。口ぶり的に予想はできても、確信は持てていないのだろう。
それなら――。
「気になって帰れないから、工藤のとこ行ってみようぜ」




