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第28話 ヒーローの力が嵐を呼ぶのさ

俺たちは朝食をパパッと済ませ、ギルドに設置されている闘技場へと向かう。


昨日の今日だというのに、今朝方の告知だけで物珍しさもあってかわらわらと人が集まっている。

東の国での俺の活躍がこの町にも広がっているらしく、そのお披露目と実力の紹介を兼ねた軽いデモンストレーションというかもはや演武のようなイベントだと一部は思ってるそうだ。


実際、俺がアーマードドラゴンから助けた冒険者や俺が叩きのめしてしまった魔女さんとこの魔導師も一部来ていた。

「LOVE ラブリー 黒魔女」とこの世界で描かれたうちわを持って……。


ちなみに東の魔女さん。

東の魔女になる前は黒之大魔導師と呼ばれていたらしい。


「数日ぶりに見かける顔もちらほら…。

あ、元ドラゴスケイルの面子も来てるんだな。」


その視線の先には屈強なおっさん集団がえらい目立っていた。


「うぉぉぉおっ!!我らがご主人様ぁぁぁあっ!!頑張ってくれぇぇえっ!!」


正直、おっさんよりも美少女たちに応援されたいものである。


俺が闘技場の選手待機席へと足を踏み入れると、そこには戦士ちゃんと妹ちゃんと盗賊ちゃんの3人が居た。


「今回はまたご主人様がみんなを叩きのめすデモをやることになってるんだってな?

病み上がりだってのによくやるぜ…。無茶すんなよ?ご主人様。」

「賢者様!まりょくけつぼーぼーになる前にちゅーしますから、苦しくなったらこっちに来てくださいね!」

「ケツボーボーは色々とまずいよ妹ちゃん…。」


盗賊ちゃんはツボったのか笑いをこらえるのに必死だ。


「ええっと…、とりあえず賢者!頑張ってきなよ!観客席で見てるからね!」


正直、気が重いなぁとも思いつつ最大限の装備で俺は戦う準備を整える。


「のう、主様よ。妾は戦ってはならぬのか?相手は2人、こちらは1人じゃというのに…。」


ちょこんとぬいぐるみモードで待機させていたおいなりちゃんにそんなことを聞かれる。


「うーん、たしかにそうなんだけどそれも含めてのデモだからね。

この街の城に住むことになった大賢者はこんなにすごいんだぞーみたいな。まぁ、仕方ないね…。」

「ふぅむ…、妾はある意味では主様の装備とも言えるのにのう…。まぁ良い。妾も皆と観覧しておるかの。」


おいなりちゃんを盗賊ちゃんに預けて俺は闘技場へと入場する。


反対側からはギルマスちゃんと魔女さんが声援を浴びて入場してきた。


「さて、賢者くん。前回も全力を出した上で負けてしまったが、今回も全力で戦わせてもらうよ。

初めからフルパワーでいかせてもらうから君もそのつもりで来たまえ。」

「にゃーも疾風迅雷獣化形態で一気に叩きのめしに行くにゃ…。精々あらがってくれにゃ…。にゃふふふっ♪」


おぉぉぉい…。起き抜けの俺に対してこの気迫はやばいって…。


「それでは両者リング中央で礼!そして、構え!!」


俺たちは司会の号令にあわせて、礼をし構えのタイミングで互いに武器や戦闘の構えに入る。


「はじめ!!」


俺はひとまず、バックステップで距離を取りファイアクォーツを炎の剣 レーヴァテインモードにして装備する。


「まずはこんなのはどうだい?」


地面から岩の棘と火柱、上空から雷と熱線が同時に放たれ俺の逃げ場を塞ごうとする。


そこへギルマスちゃんが早くも獣化モードで怒涛のスピードで迫ってるのが見えた。


俺はファイアクォーツをすぐさま炎帝之手甲形態に変化させ、特殊な結界を生成し攻撃を全て受け切って凌ぎ切る。


以前は手甲に直接ダメージを受ける事でカウンター攻撃を行ったが、今回はそれの応用で攻撃を受けたそばから掌から波動を放つ事で多重結界を展開し、敵の攻撃を凌ぐという技を編み出したのだ!


「ほほう、やるねぇ。前よりも使いこなしているじゃないか!脳内シミュレーションでもしたのかな?」


今度は、魔女さんはバレーボールサイズの水球をビットのように大量に射出し俺の周囲に設置し、そこから無数の熱線を放ってくる。

そしてその間をかいくぐりながらのギルマスちゃんの攻撃。


ギルマスちゃんの攻撃を避けると熱線を浴び、熱線を避けようとするとギルマスちゃんに殴られる。


そういう攻撃だろう。


相手の攻撃を受けて無効化することは出来るがこのままでは反撃ができない。


俺はキーホルダーにつけたライトニングクォーツに魔力を注ぎ、変身して鎧を纏った。


瞬間移動でその攻撃の包囲網を抜け、まずはギルマスちゃんをひと蹴り。

リングの外へと蹴り飛ばす。


心が痛い…。


「やっぱ、その姿は強いねぇ…。では、これで!!」


魔女さんは前回同様に上空からの極太の熱線を放ってくる。

俺はこれをサソリとイバラの水晶を変形させ、ガントレットにしたのち右手で受け止める。


「雷蛇ぁぁぁ…パンチッッ!!」


受け止めた熱線をそのままパンチに乗せて魔女さんに思いっきり放った。

無論、当たったら魔女さんは蒸発しかねないので、当たる直前に地面に異次元空間を生成し、こっそりと回避させた。

これはベヒーさんに事前にお願いしてあった。


そして攻撃が止む直前に地面から出てきて頂き、魔女さんは倒れる演技をしてもらう。

そういう手はずになっていたのだ。


すなわちガチに見せかけて全て茶番の演技である。

ちなみにだが、ギルマスちゃんも蹴り飛ばされたように見せかけて、

派手に後方へバックステップしているだけなのであった。


完全な出来レースである。無論、非公式で賭け試合なんかして二人に賭けてた連中は

今頃大損しているであろう。


「ウィナー…大賢者!!」


わぁぁぁあっ!と歓声があがり、皆が互いの健闘を讃えた。


「よしよし、これで君の強さは知れ渡った。本気を出した我々も叶わない強者とね。

さぁ、次は勇者ちゃんのお出ましだ。

彼女の方はお遊びや茶番抜きでの戦いをご所望だ。全力で挑みたまえ。」


それが一番怖いのよね…。

アホの子って何するかわからないところあるし…。


俺は待合席に戻り、魔女さん特製のエナドリを飲み、次に挑む準備をする。


せっかくだし新しいアイテムも…使ってみるか…。


30分のインターバルを挟み再びリングへと入場する。


反対側から勇者ちゃんが入場してくる。


「それでは両者リング中央で礼!そして、構え!!」


俺と勇者ちゃんが互いに礼をし、剣に手をかける。

俺はネックレスだが…。


「はじめ!!」


勇者ちゃんが剣をすらりと抜き、俺に向けて構える。

綺麗な黒髪のポニテにすらっと伸びた手足、キュッと引き締まったウェストに、出るとこは出てるモデル体型…。

改めてじっくり見てみれば、日本人なら美少女モデル女子高生としてモテモテになれそうなレベルの見た目だ。

と言うか顔立ちはもろに美少女の日本人である。


「最初に言っておく!私はかーなーり!強い!!」


でしょうねぇ。


「お手柔らかに頼むよ。俺はさっき割と本気で戦って疲れてんだ…。

ぶっちゃけ今すぐ帰って寝たい。」

「それはだめだ!強い君と戦って勝たなければ意味がない!

いや待て…。寝たいか…。よし!私と一緒に寝るなら良いぞ!私は大歓迎だ!」

「却下。」


そう言い終わるやいなや勇者ちゃんは俺めがけて剣を振るう。

俺はそれをファイアクォーツをレーヴァテインモードに変形させ受け止めた。


「力を使っていくのはゆっくりでいいぞ!

私も少しづつ強くなる君を味わいたいからな!!レロレロレロレロレロレロォ…。」

「レロレロするなぁっ!観客ドン引きだよ!?何という残念美人だよ!」


だが、勇者ちゃんはまるで俺に剣の扱いを教えるかのように、俺の動きに合わせて剣を振り、俺に受け止めさせ、そして俺が剣を振ればそれを簡単に受け流し、そして切り返してくる。

はじめはゆったりとした動きだったが、互いに慣れてくるとその打ち合いの速度がどんどん増していく。


「いいぞいいぞ!君は戦闘経験は皆無だと聞いていたのでな!

せっかくなのでこの場で私好みに調教しようと思ってる!私に調教されて私好みの男になってくれ!

ちなみに私は身動きが出来ないようにされて激しく責められるようなシチュエーションが好きだ!」

「戦いの話で合ってるよね!?そのセリフはいろんな意味で危ないが、剣を教えてくれることには感謝するよ!」

「何を言ってるんだ君は…?いまはベッドでのプレイの話をしてるんじゃないのか?」

「え、まって。急に真顔でマジトーンで君こそなに言ってるの?」


とかなんとか漫才のようなやりとりを交えつつも互いに剣を弾き合い、一度距離を取り息を整える。


と言うか、俺は28のおっさんなのだ。

しかも運動などあまり好きではないような…。

当然ながらゼーハーヒューヒュー状態である。


「ハハハハ!どうした大賢者!さっきの戦いの時の勢いはどうした!体力が無いなぁ!

そんなんじゃ、私を抱けないぞぉ♡」

「見ての通りだよ…。中肉中背のおっさんがこんなに高速で剣振り回せば、そりゃ息も切れるし喉も渇いてくるよ…。しんど…。あと、お前は痴女か。痴女なのか。」


そんな俺の様子を攻撃することなくじーっと見ながら待つ勇者ちゃん。


「攻撃…しないのか…。はぁ…はぁ…。」

「あぁ!もちろんだ!男が私の調教ではぁはぁ言う機会なんてそうそう見れないからな!!

じっくり見せてくれ!そして…できればもっとはぁはぁ言ってくれ!」

「その言い回しやめてもらえるかな!?見てるの!いろんな人が見てるの!!」


会場の女性陣も流石にドン引きである。

尚、男連中は無駄に盛り上がって居たのは言うまでもない。

どこがって?言わせねぇよ!


ようやく息切れも収まってきてもう一度剣を構えた。

だがぶっちゃけしんどい。

むしろ負けたふりしてさっさと終わらせたいくらいだ。


「よし!息は整ったみたいだな!

次は私も必殺技を1つ使うぞ!君はそれを受け止めてから反撃してきてくれ!

さっきの試合で君が使っていたガントレットの力が見たいんだ!」

「わかったよ…。」


俺はファイアクォーツを手甲に変形させて身構える。


「いくぞ!必殺!私の必殺技!!パート2!」


と言うや否や、勇者ちゃんの剣が発光し光の衝撃波を何度も飛ばしてくる。


俺はこれをガントレットで受け止める。


衝撃波は見事に3発放たれた。


そして俺はそれを…全力で打ち返す!


俺の背後に出現した不動明王が俺と共に拳を振るい勇者ちゃんに殴りかかる。


「なるほど!これはすごいな!」


勇者ちゃんは一切かわすことなくモロに喰らう。

辺りに粉塵が舞い上がり、誰もが見てもこれは潰されたと思っただろう。


が、勇者ちゃんは満面の笑顔を絶やすことなく立っていた。


「噂通り…強いね…。さすが勇者…。」

「降参しようなどとは思ってくれるなよ大賢者!

私はまだまだ君の本気を見たり無いんだからね!

さぁ!どんどん行こう!次は鎧を装備するアレやってくれよ!すっごくカッコよかったアレ!」


こうなりゃもう何でも良い。

さっさと終わらせよう。


俺はライトニングクォーツに魔力を流し鎧を纏う。

そのまま、サソリとイバラの水晶のガントレットを足に装備して構えた。


「うんうん、やっぱそれカッコいいよね!

私も似たようなのあるんだよ!」


というと勇者ちゃんは右手に装備していたガントレットに魔力を通した。


「ファイヤァァア…チャァァアアジ!!ゴッド!スペリオル!!」


すると、ガントレットから光が放たれ、その先から鎧の鳥が飛んでくる。


「私は勇者ちゃん!こいつはアーマードフェニックスのゴッドスペリオル!

君が叩きのめしたアーマードドラゴンの鱗と魔鉄鋼を使って作られた意思を持った鎧だ!

北の大地の洞窟で見つけたんだ!カッコいいだろう!

だが、もっとかっこいいのはココからだ!とう!」


そう言って、勇者ちゃんは天高く飛び上がる。


するとアーマードフェニックスが分離し、頭 肩 腕胸 腹 足へと次々と合体していく。


「紅鳥合体!グレートブレイバー!!どうだ!強そうだろう!!」


うん、すごい強そう。帰りたい。


「君の鎧と私の鎧…どっちが強いか…勝負だ!!」


そう言うととんでもない速度で勇者ちゃんがこっちへ飛んでくる。

俺も瞬間移動でそれをかわそうとするが、勇者ちゃんは俺のこの速度に見事追いついてきた。

そしてそのままパンチと蹴りを入れられ地面に叩き落される。


「うーん!速いねぇ!君のそれ!

この姿の全力を出さないと追いつけない相手は初めてだ!だからさ…もっと遊ぼうよ大賢者!!」


俺が立ち上がるのを見計らってこっちへ再び飛んでくる勇者ちゃん。


ここまで戦ってようやくわかってくる。

この子はアホの子と言うよりただの戦闘狂だ。

野菜の名前の某お猿さん宇宙人並みである。


魔王と戦いたいのも魔王を討伐とかではなく、ただ単純に強いやつと戦いたい好奇心からだろう。


しっかし、速い!!めちゃくちゃ速い!

こっちの攻撃は当たらないのにあっちは超スピードでパンチやらキックやら打ち込んでくるわ、時々剣で切りつけてくるわでなかなかにしんどい。

負けるのは覚悟していたが、このまま反撃できずに負けるのも嫌だな…。


俺は両腕からプラズマブレードを展開し、勇者ちゃんに斬りかかる。


すると、勇者ちゃんも鎧を変形させ左手を大剣に変形させその左手で俺のプラズマブレードをかき消した。


「すごいすごい!なにそれなにそれ!そう言うのもっと見せてよ!私もこう言うのがあるんだ!!」


と言うと、左手の剣をひっこめ、今度は右手の鎧を変形させ巨大な大砲を展開し俺めがけて撃ち込んでくる。

俺はそれを右足にあらかじめ装備展開させていたアンクレットで受け止める。


この時を待っていた。


不規則な瞬間移動を繰り返し、俺は必殺の


「雷蛇ぁぁぁぁぁぁっ!!キィィィィィイック!!」


を放った。


が、その俺の必殺キックを勇者ちゃんは再び左手を剣に変形させ受け止めた。


「力は強いね!大賢者!!でも、君のヒーローより…私のヒーローの方が…強い!!」


そして、そのまま俺を場外ホームランさせかねない勢いで剣で叩き飛ばす。


俺は何とか上空で態勢を立て直し、そのままヒーロー着地で再びリングに戻る。


「楽しいよ大賢者!!そして、やっぱり君もカッコいいね!惚れちゃいそうだよ!て言うか惚れた!

だから私を倒してもっと夢中にさせてくれ!おっぱい好きなだけ揉ませてあげるからさ!」


その言葉に観客の野朗どもが湧き上がりおっぱいコールが吹き荒れる。


\おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!/


「その辺な応援やめてもらえるぅうっ!?」


勇者ちゃんが剣を正面に構える。


「私が勝ったらお腹を触らせてもらう約束も守ってくれよ!君も最強の必殺技を見せてくれたんだ!

私も最強最大の必殺技で君を倒しにいくからね!」


勇者ちゃんに周りから大量の魔力が集まり、勇者ちゃんを黄金に輝かせていく…。


あ、これヤバイやつだ…。


「さぁ、大賢者!私の必殺技を受ける覚悟をしておいてくれ!」


俺は人生でまたも死への恐怖を感じた。


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