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第24話 夢から覚めて

何度も部屋を見渡す。


俺の部屋だ。


間違いない。


明晰夢で見る、何かが少し違う俺の部屋ではない。


「なら、時間は…!今日は何日だ!」


充電器につながった枕元の携帯を見る。


そこに表示されてた日にちと時間は


「俺があの世界に初めて行った日の翌日か…。

てかやっぱ夢か。まぁ、そりゃそうだよな。」


夢…。夢…か…。


どんな夢…見てたんだったけ…。


なんかすげぇ楽しい夢だった気がするが、全然思い出せない…。

とりあえず、仕事のシフト表を見る。

そういや今日も休みか…。


「どこで、時間潰すかな…。」


俺は、起きて歯を磨いて、ツブヤイターを見ながら服を着替えて行く。


最近作ったハンドメイドのアクセサリーを身につける。


「ん、良い出来だな。さすが俺。」


天気も良いので自転車を走らせて遠出することにした。


免許とか持ってたらバイクに乗って京都とかにでも行きたいもんであるが…。


夢の中で見た風を切って走るバイクは心地よかったな。

風も気持ち良くて、めちゃくちゃ楽しかった。

ちょっとだけ思い出した。


俺の住んでる土地には結構至る所にパワースポットなどと言われている場所がある。

俺は自転車を走らせて山の上にあるパワースポットの滝を目指すことにした。


特に理由はない。

旅とはそういうもんだ。


目的もなく車を走らせ、綺麗な景色を見て、美味い飯を食う。


それが楽しいんだ。


どうせなら1人よりも2人3人4人とたくさんの人数で食いたいもんだが…。


ひとりぼっちは寂しいもんな。


俺は道中の精肉店でステーキ弁当を買うと、それを自転車に取り付けたパニエバッグにしまい、再び山を目指して走り出す。


山までの道のりは遠い。


だがその途中の川と堤防沿いの草原のコントラストがすごく綺麗なのだ。


俺はその景色をスマホを使って写真に収めて行く。


やっぱ、綺麗な景色を写真に収めるのもまた旅の醍醐味だよな。

山の上でも綺麗な景色撮って飯を食おう。


しばらく自転車を走らせ、山の上に設置された日本庭園で俺は昼食のステーキ弁当を食うことにした。


食べる前に一枚写真を撮り、綺麗な景色を見ながら俺はステーキ弁当を食う。


んむ、やっぱ山の上で綺麗な景色を見ながら食う飯は美味い。


ツブヤイターにも投稿すると、すぐにいいねがたくさんくる。


「めし…うまかった…。」


俺はさらに自転車を走らせて滝へ向かう。

ここの滝壺の湖面は空の景色が綺麗に写るほど美しい。

そう、まるで鏡のように美しいのだ。


俺はこれをまた写真に収めツブヤイターに投稿する。


「…。退屈だなぁ…。」


いつもならこうやって自転車を走らせて遠くへ来て、飯食って景色を撮ると色々と満足するのに…。

なんか今日は物足りないっつーかつまらんというか。


何かが…足りない。


そんな感覚だ。ただそれが何かはさっぱりわからんが…。


「自転車で旅する分には1人でいいんだが…、こういう景色を見せる分には女の子の相手がいればまた楽しいんだろうな…。

彼女…欲しいな…。

俺のことを好いてくれて、懐いてくれるような、そんな子…。」


好きな子は歳下の子だけど…でも歳上に甘やかされるのも…悪くはないな…。


優しく抱きしめられて、甘い言葉を投げられてキスされて、頭撫でられて…。


そういうの…悪くないな。


どうせなら一回は美女や美少女や美幼女や果ては褐色の子とか王女様とかにモテモテになってみたいもんだ。


みんなが好いて愛してくれるようなそんな世界…。

そういうとこ、一回はやっぱ行ってみたいもんだな。


夢の中でくらい、そういうもん見れても良いもんだろうに…。


つまんねぇなぁ…。そういう夢すら見れないと…。


この世界はつまらない…。


まるで、俺はこの世界に必要がないような…そんな感覚さえしてくる…。

ほんと…楽しくないんだよな…。

生きてることさえも面白くない。


ちっくしょう…。女のことばっか考えてたら昼間だってのにムラムラしてきた…。


こう…ロリメイドにご主人様ぁって抱きつかれながら眠ってみたい…。

ツンデレ少女に懐かれて俺の前ではデレられたい。

中学生くらいの子に尊敬されてみたい。

ケモ耳のロリ巨乳に懐かれたい。

妖艶な大人の女性に抱きついて寝たい…。


あぁー、マジで溜まってんのかな…。


夢でも良いからそんなの見てみたいよ。ほんと。


しかし…まだ5月だってのにあっついな…。

天気予報は…気温30度超えか…。


熱中症には気を付けないとなぁ。


スポドリ飲んどこっと…。


熱中症か…。

確か昨日もなりかけたな。


そのあとは…あぁそうだ。

そのまま昼飯食いに入ったバーガー屋でコーラゼロ飲んでなんとか回復したんだったな。


そのあとは何してたっけな。

なんかこう、昨日の記憶が曖昧だな…。


割と何したかあまり覚えてねぇや…。


割と昼間遅くまで寝てたからいろんな夢見てた気もするな…。


どんな夢…だったかな…。


そう言えば、このネックレスを異世界のカギだとか言って、、扉の絵の描かれたウォールアートにかざしてたら確か昨日はふらっと来たんだったか…。


あれは危なかった。

危うく病院行きになりかねなかったぜ…。


しかし…ほんとなんかつまんないな…。


帰るか…。


俺は自転車を走らせて帰路に着いた。


再び山を降り、堤防沿いを走り、家に向かって帰って行く。


家に帰り着くと俺はシャワーを浴び、走り疲れてベッドの上に横になる。


このまま寝るのがまた心地よいのだ。

ぐっすり眠れるからな。


しかし、どうせなら妖艶な美女のいるベッドの上とか、可愛いロリっ子に抱きつかれて眠りたい…。


そしてベタベタに甘えてくるロリっ子に頬ずりされたり美女に頭なでなでされたい…。


そんでそれを見たツンデレ戦士ちゃんに怒られるんだ。



ん…?戦士ちゃん…?


頭が痛い。激しい頭痛に吐き気…。

倦怠感に悪寒…。気持ち悪い…。

だが、幸い今はベッドの上だ…。

このまま眠ろう…。


きっと起きたらまた、盗賊ちゃんが俺にくっついて寝てるはずだ。


盗賊ちゃん…。


何か…忘れてる…。

うーん…。夢の中の記憶なんてそんなもんだよな…。

よく思い出せねぇや。


こうやって苦しい時は、魔女さんがキスして介抱してくれたっけ…。


魔女さん…。


そう言えば、よく眠れなくて外で涼みながらギルマスちゃんの頭も撫でたな…。


ギルマスちゃん…。


最初は言葉が通じなくて一苦労して頭をなでなでする事で信用してもらおうとしたんだったかな…。


妹ちゃんには…。


クソ…、頭がめちゃくちゃ痛い…。

インフルの時みたいな脳みそが熱で煮込まれてるような感覚…。


それに…今の変な記憶は…夢で見たやつ…だったか。

いやぁ、いい夢を見させてもらったもんだなぁ…。


そう言えば、みんなで写真も撮ったっけ…。

山の上で撮った景色と夜の街から帰ってきたときに…。


「そうだ…写真…。今日撮ったの見返すか…。」


寝ぼけ眼でスマホを取りカメラロールに目を通す。


綺麗な山の中の景色や堤防沿いの自然の景色。

その前に真っ暗な何も写ってない写真が何枚も保存されている。


「なんだこりゃ…。なんかバグったのか…?この期間の写真だけおかしいな…。」


この期間…。何があったっけ…。

何の写真が収められていたんだっけ…。


何も思い出せない。


そのまま俺は一眠りして、ひさびさに親の作った食事で夕飯を取る。


アレ…?なんで久々なんだ。

昨日も食ったじゃないか。


でも昨日の晩飯何食ったかはよく覚えてないな…。

身体だるかったしな…。

ま、昨日の飯を思い出せないなんてよくあることだ。



俺は食事を終えて部屋に戻り、明日の仕事の準備をする事にした。

カバンの中身を一度全部出して、仕事で使うものだけにしないと邪魔になるしな。


いやまぁ他にもカバンあるし、もうそっちを仕事用にしてもいいんだが…。


そうするか…めんどくさいし…。


財布だけ移動しておこう。


そのあといつも通りアニメを見ながらツブヤイターでフォロワーと語り合い、自室のミニ冷蔵庫に買い溜めしておいたプリンを食べる。


そういや、この前食ったフルーツプリン的なの美味かったな。

あれ、どこの店だっけ。

つい最近だった気がするし、写真も撮ったはず…。


うーん、それっぽい写真がないな…。


ゴーグルマップのタイムラインとかに残ってないかな。


うーん…、それっぽい履歴はやっぱない。

どこで食ったっけ。


地名と柑橘系 プリンと入れて検索するもヒットしない。


なんかこう、夜もやってるカフェで食った気がしたんだが…。

おかしいな…。


夢の中で食ったとかかな…。

それなら仕方ないな。

夢ん中だし。

忘れよう。


そこそこいい時間になってきたけど、なんか寝付けないな…。

昼間ガッツリ寝たせいかな。


少し駅前まで走ってくるか。

往復30分程度だけど。


俺はいつものお出かけ用装備で自転車を走らせて駅前へ向かう。

特に目的はない。

走るだけだ。

眠くなるまで走るだけ。

それだけだ。


それだけの筈なんだが、

どこか行かなきゃいけない場所がある気がする。

それがどこかはわからない。

何故か行かなければいけない場所がある気がする、

それが何故かはわからない。


俺はとりあえず自転車を走らせ駅前に到着する。

フラフラと自転車を押しながら当てもなく歩く。

田舎の駅前なので、この時間には人っ子一人居ない。

当然店のシャッターは全て降りている。

こんな時間にやってるカフェはおろか居酒屋すらない。

それが俺の街だ。


相変わらずつまらない街だ。

孤独という言葉がよく似合うほどに。


ほんと、誰も人がいやしない。

これが都会ならシャッター前にはホームレスが寝ていて、駅前や公園じゃ若者がダンスの練習でもしてそうなもんだが、駅前のそう言うスペースには若者どころか年寄りすらいない。


昼間は屋台のおっさんがいるくらいだ。

せっかくのダンス練習用若者向けスペースが台無しである。


ほんと…誰もいやしない。


もう少し歩くと、駅前の商店街にポツリとある神社にたどり着く。

縁結びとか、女性なら美しくなるとか言うご利益がある神社だ。

たしか、なんだっけ?信長の娘…?の三姉妹が祀られてたとかそんなだった気がする。

神様系の神社は詳しいが、武将や歴史の偉人を祀ってる所はぶっちゃけあまり詳しく無い。


【素敵な人と巡り会いたい。

死が2人を分かつその時まで、互いに思い合い愛しあえる人に出会いたい。】


そんなことをお願いし俺は神社を後にする。


まだ走り足りないなぁと思い、もう少し自転車を走らせ駅前からほど近い、標高の低い山へ移動する。


自転車を駐輪し山の中を登って行く。

目的もなくふらりふらりと登って行く。


ある程度登ると展望エリアが見えてくる。

街の景色を見てみるが俺の街の夜景には、街の明かりなどほぼない。

街灯や信号機の明かりばかりだ。

見応えがない夜景である。


どっかで見た美しい夜景とはえらい違いだ。


どこの夜景だったかはわからないと言うか覚えてないが。


俺はさらに頂上まで登り、この山にあるまた別の神社でまたお参りする。

この神社は龍神様をお祀りしてる古くからある神社だ。

そう言えば、ガキの頃に父さんに俺にはここの龍神様が憑いてるなんて言われたっけ。


ひとまず、もう一度お願い事をする。

願いはさっきと同じだ。


しかし…、なんでかは知らないが今日は無性に寂しい。

心にぽっかり穴が空いた感じだ。


友人を亡くした時と同じような喪失感。


誰か大切な人を失った時と同じ感覚。


何が原因かは知らないが躁鬱状態だ。

まぁ、十中八九明日からの仕事のせいだな。

眠れないのも含めて。


クソ企業だし。俺の会社。

あのアホ経営者ほんとどうにかしてくれ。


「はぁ…。全然眠くなって来やしないな…。」


深くため息をつき、俺は山を降りてまた駅前に戻る事にした。


山を降り、駐輪場に停めた自転車に乗ってまた駅前へと走り出す。

本当に静かだ。俺の街は。

映画の撮影やMVの撮影にでも使えるんじゃないかってくらいに人もいなければ車すら走っちゃいない。


ほんと静かすぎる。


駅前に再び戻ってきたが、まぁやっぱり案の定人は誰もいない。

俺はまたフラフラと歩き出し、そしてアーケード街を通りかかる。


「おや、珍しい。さっきは居なかったのに人がいる。」


ボソリと思わず口から言葉が出る。

遠くから呟いたからまぁ相手は気付いちゃ居なかったが。


こんな時間に中学生っぽい女の子が1人で出歩くとか…。

危ないにも程がある。

近くを通って顔だけ見てこれはあかんなと思ったら警察に通報だけしておくか…。

犯罪に巻き込まれたら危ないし。


そう思いながら俺は、その子になるべく気付かれないよう遠くから近付きつつ擦れ違いざまに顔を見る。


その子は涙を流して泣いていた。

何かあったのだろうか…。


うーん…。

とりあえず何か飲み物でも買ってきて渡すか…。

近くにコンビニはないが自販機はある。


俺は近くのコンビニで飲み物を買って再び、女の子がいた場所に戻る。


「何があったかは知りませんが、こんな時間に女の子が1人いては危ないですよ?

こちらを差し上げますので、宜しければ召し上がり下さい。」


そう言って俺はその涙目の少女に飲み物を渡す。

暗いのではっきり顔は見えなかったが、その子はコクリと頷き俺から飲み物を受け取った。


「一応、交番行って通報だけしておくか…。」


ボソリと呟き、俺はこの場を後にして交番へ向かおうとする。


「……?この…感じる気…!ねぇ、あなた!待って!」


俺めがけて少女が顔を上げて叫ぶ。

見覚えがあるような気もしなくもないが、俺にはJCの知り合いなど居ない筈だ。

なんだろう。援交のお誘いだろうか。


「どうされましたか?何か話したいことがあるのならお伺い致しますが…。」


ほんとはあまり巻き込まれたくは無いのだが、放っておくのは心が痛むし話を聞く事にして横に腰掛ける。


「どうされましたか?何か余程のことがあったのでしょうか…。」

「うん…。あった。よっぽどのこと…。

すごくつらいこと…。」


とりあえず、頭ぽんぽんとかはやめておこう。

あとで変に訴えられるの嫌だし。


「大好きな人がさ、急になんの前触れもなく、メッセージもなく、私たちの前から姿を消したの。

私はその人を探しに1人だけここに来た。

でも、何も手がかりがなくて…。

探しようがない…。見つけようがない…。

そう考えたら…なんかすごく悲しくて…さみしくなってきて…。」

「そうでしたか…。

部活のお仲間…とかですかね…?

たしかに何も言わずに居なくなると不安になりますよね。」


俺は帽子を一度脱ぎ前髪をかきあげてまた被り直す。


「なんでそんなに他人行儀なのよ…。まるで、初めてあった時みたいに…。

私は…アンタを探しに来て…でも、手がかりもないし、当然のように見つからなくて、ここで泣いてたってのに…。」

「ははは。でしたら多分、誰かと勘違いしてますよ。私はしがない会社員で学校の部活の先生とかじゃないですから…。しかし…、私に似てる人が世の中には他にも居るんですね。」


どかっと胸元を拳で殴られる。


「ちょっとあなた…。人違いだからって殴るのはどうかと…。」

「これ見てもまだそんなこと言える!?コレは…私が貴方から受け継いだものよ!」


少女が俺を殴った拳を広げると、そこに見覚えのある俺の作ったアクセがあった。


「それは…。どこで拾ってくれたかは知りませんがたしかに私の作品ですね。拾って頂き有難うございます。」


それを手に取ろうとすると、今度は思いっきりグーで殴られる。


「な、何をするんですか!?怖いな…この子…。」

「あんたこそ何してくれてんのよ!わざとなの!?それとも本当に…わからないの?」


月明かりが少女の顔を照らす。

ほんと、なんか見覚えはある気がするのだが、はっきりと思い出せない。


「そうだ…。写真…。写真とか言う奴撮ったじゃない私と!時間を切り取る不思議な魔法みたいな奴!

その…すまほ?ってやつで!それ見てみなさいよ!」


俺はスマホを取り出しカメラロールを見せるが当然そんなものはない。


「なんで…あんなに楽しそうに…一緒に撮ったじゃない…。なんなのよコレ…。何が起こってんのよ…!」

「そんなん…。俺が知るかよ…。

泣いてるから心配して声かけたってのに…、新手の詐欺かなんかか。怖い人出てくる前に帰ろ。」


俺は俺の作ったネックレスだけ受け取り、その場から逃げるように立ち去る。


「嘘でしょ…、ねぇ…、待って…。」


知るか。詐欺師グループになんか構ってられっかよ…。

ったく…。冗談じゃねぇ!俺ぁずらかるぜ!


「待ってよ…、ねぇ…!賢者!」


静かなアーケード街に、鎧を着たコスプレJCの叫びがこだました。


この続きのお話は、アルファ版では書かなかったお話を書こうと思っています。

アルファ版だと、戦士ちゃんがどんな流れでここに来たのかはっきり明確には書いてなかったので。

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