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第11話 目覚めよ 真の雷帝

魔女さんの工房に到着し、どういう風にこいつを仕上げるかという意見を出し合う事になった。

正直俺にはなかなかアイデアがうまく湧かない。

この雷の魔神に変身させる魔石をどう使いこなせば良いのか…。

俺はてっきり、こいつの力を使えばあたりに強そうな雷を撃てるようになるだろう程度だったが、まさか…。


『ライトニングクォーツの力を発動させるってのは…俺自身が雷になる事だ…。』


みたいな展開になるとは夢にも思わなかった。


「ふぅむ。思うんだけどね。

この石は石そのものにとんでもないパワーがある。

それこそエネルギーの炉心のようなものだ。

そういう特性を活かすのも面白いかもだね。

君の世界の記憶を見せてもらった時にみたが、君の世界には電気で動く道具がたくさんあるようじゃないか。

そんな感じで、これを使った道具を作ってみるのも面白いかもしれないね。

特に乗り物とかは実に面白そうだ♪

ま、これは私の趣味として勝手に作るとして…。


問題は君が雷神化した際の溢れる力をどう抑え込みつつ弱体化せず使いこなすかだ…。


それで考えて見たのだが、この水晶を炉心のように使い、それで動く鋼の鎧のようなものとかはどうだい?

具体的には君の記憶で見た、赤と金のカラーリングの鋼の鎧を身に纏い空を飛ぶあの騎士みたいなのはどうかな?」


なるほど…。鋼の鎧で外側に放出される雷を抑え込みつつ循環させるように制御…。

力を弱体化させる事なくむしろ効率的に放出できるように…。


「いいね。ピンときた。

このクォーツにつけたリングを鎧に見立てるイメージで…。

でもまだなんかこう…足りないんだよな…。」

「じゃ、私のこのリングをつけて見てはどうだい?」


そう言って魔女さんは王冠型のリングを差し出してきた。


「雷神ではなく銀の鎧を纏う…雷帝。というイメージは如何かな?」


俺は早速魔女さんからもらったリングを取り付ける。

だがこれでも何かまだ足りないような…。

そうだ。

雷を地面に突き立てるような目印…。

この力を制御するための車のドライバーのような役割のもの…。


「ギベオン…と言ったかな?あの隕鉄を組み込んでみてはどうだい?宇宙的な知恵でうまくコントロールしてくれるかも知れない。それに電気を流す鉄という点でも相性は良いと推察するよ?」


言われたように俺はギベオンをネックレスのチェーンに組み込む。


これで完成だ。


「ふむふむ、いい出来だねぇ~っ!

これは強そうだ。しかも、強大な魔力故か光って見えるね。とてつもないパワーを感じるよ。

むしろ、パワーが増したこいつを君は無事に使えるのだろうかね…。

それに加えて、君がこいつに込めたイメージの具現化がどれほどのものになるか…。

実に楽しみだよ。

しかし、なんだかさっきから外が騒がしいねぇ。

バタバタバタと…。」


魔女さんが扉を開け、扉の前をせわしなく走り回ってた人を捕まえた。


「さっきからえらく騒がしいねぇ。何かあったのかい?」

「魔女様…! いえ、賢者様と偉大な力を持つアーティファクトの完成に勤しんでいるので話しかけるべきではないと思い…。

いや、そんな状況ではありませんね……。恐れながら報告申し上げます!

国の外の山に装甲龍 アーマードドラゴンが現れました…!

かつて、西の大国のギルマス様が仕留めたあの種族と同一の物と思われます…!

流石に西のギルマスの到着を待っていては国が滅びかねないと思い、今は我が国のギルドの精鋭と研究機関の魔導師たちが総出でかかっていますが…。

今回のアーマードドラゴンは魔力無効のスキルを保有しており、まるで歯が立たない状態なのです…。」

「バカな…。アーマードドラゴンが進化して再び現れたと言うのかい…?

いや、それよりも龍種が魔力無効スキルだと…?

そんなレベルのものを倒せるとしたら…それこそ皇国の連中くらいだろうが…。

皇国のものを呼び寄せるにしても時間がかかりすぎる…。

ふむ、となればそれに立ち向かう答えは1つしかないね。

幸か不幸か…今まさに賢者様の切り札が1つ、完成したところだ。

試運転には丁度良いだろう。こんな硬すぎる獲物を相手にできるなんてまたとないチャンスだ。

だが…そうだね…もしそれが通用しなかったその時は…心中も覚悟するしかないだろう。

物理攻撃最強の剣士である皇国のギルマスでも、魔力無効に加え物理軽減スキルの塊とも言えるあの鱗をそう簡単には砕けないだろう…。

以前は魔力無効がなかった故にその鱗を一瞬で蒸発させる事でその奥の肉体すら消しとばしたんだ。」


トントン拍子に何が俺がとんでもモンスターを仕留める話になってしまったのは気のせいではなさそうだ…。

まぁ仕方ない…。

どこまで通じるかはわからないが、やってみる価値は十二分にあるはずだ…。やってやるさ。


「行くよ。賢者くん。

なぁに、君は死なないよ。私が守るもの。

って言う名セリフが君の世界にはあるんだったかな?」

「俺の世界ではそう言うのを死亡フラグって言うんだぜ?まぁ、もしもの時はせめて蘇生くらいはしてくれ。」

「了解仕ったよ。任せておきたまえ♪」


俺たちは城の外へ出る。


「山までは鳥車で行く。これが一番速い。」

「アイヨー!」


あいよーはこの子たちの鳴き声なのか…。

なんかこうへんな親近感があって可愛い。


「せっかく試すなら、俺も色々と試して見たいんだけどいいかな?知ってるとは思うが、光ってのは…音より速いんだぜ?」

「おいおい。またうちの仲間たちを巻き込んでボカンってのはやめてくれよ?君の雷はそもそも魔法障壁で防げな…。

おっと?そうだ!それだ!!

君の雷は魔力無効のスキルが意味をなさない!

いける…!君の雷なら奴を簡単に打ち倒せる!!

よっし!勝機が見えてきた!

うむ、ここは私が許そう。何かあれば責任も取ろう。

いっちょ派手にやってきなさい。」

「おっけ!」


俺はライトニングクォーツのネックレスを胸に下げ、クォーツに力を込める。


「一回やって見たかったんだよ。こう言うの。

変身!!」


掛け声とともに一気に水晶からの魔力を解き放つ。

解き放たれた魔力により水晶に取り付けられたシルバーリングが、俺の全身に銀の鎧を作り出していく。

そして、その間の関節の隙間から見えるのは雷神化して雷そのものとなった俺の身体だ。


王冠を被った白銀の鎧の騎士。


よし、まずは動作チェックだ。

背中の鎧を開き雷の翼を展開させる。

プラズマによる加速みたいなこともできそうだ。

掌や指先から雷の玉を放出してみたりする。

うんうん、小さく出したり大きく出したり光線状にしたり、結構応用できそうな雰囲気。

今度は歩いたり走ったり…。

うん、これも以前と違って明後日の方向に吹っ飛ぶ気配もない。


「どうやら、完璧なまでに制御できてるようだね。

で?どうだい?飛んだりできそうかい?」


背中の鎧から展開した雷の翼と、掌と足の裏から雷撃を放出して空を飛ぶイメージをしてみる。


途端、俺の体は尋常ではない速度で空中へ飛び上がった。だがこれは速すぎる。流石に光の速さでは当然ながら人間の視力では視界を捉えきれない。

こいつは速度を落として飛ぶしかないな…。

せめて音速だ。


今度は、視界に入ってる特定の場所まで瞬時に移動するイメージをして地上に降りてみる。

目標が定まってる場合なら、雷光そのものになって高速移動。

これならギリギリ行けるだろう。本来ならば、急停止した場合に身体にかかるGはとてつもなく大きい。

肉体を雷そのものに変えているこの姿故に耐えられるって感じだな…。


ひとまずせっかくなので、ここぞとばかりに某スーパーヒーロー着地を決めつつ地面に降りてみる。


「オォーー!!いいねぇいいねぇかっこいいよ!

まさにヒーローだね!

じゃ、私たちは鳥車で向かうから君は先にピシャァァアンッと雷のように直行してワンパンでアーマードドラゴンを叩きのめしてきてくれたまえ♪」


この姿の時の最大の問題が今ひとつわかった。

この姿になるとどうやら喋れないらしい…。

ま、魔女さんには聞こえるから良いか。


んじゃ、先行ってるよ!


「ふむ、あの姿になると喋れないのか…。まだ少し改良の余地ありかな?」


再び身体に力を込め、視界にある山めがけて雷が落ちるようなイメージで俺は飛びさった。


この姿による雷による瞬間移動にも大分なれてきた。

一緒に装備している賢者のブレスにより【使い方がわかる】と言う感じもある。

前回は賢者のブレスなしなのもあり、より制御に難ありだったのだろう…。

そして、賢者のブレスにも未来視の力があるムーンストーンが組み込まれている。

これにより、空中飛行や瞬間移動もある程度なら障害物に当たることなく行えるようになっているわけだ。

とは言っても完璧ではない。

山の中で飛ぼうものなら山火事を起こしかねないだろうな…。


見えてきた。あれが…アーマードドラゴン…。


………。ってでかぁ!!!


なんだこれ!?おい!聞いてないぞ!!

某モンスターを狩るゲームのレイドボスでもこんなにでかくないぞ!


例えるならそれこそ、田舎のおじいちゃんが「今お前の目の前に見える畑と田んぼと山、全部じいちゃんの土地。」って言うぐらいの規模の大きさだぞコレ!?

例えが下手かもしれないけどそんな感じだ!

視界に入ってる全部が爺さんの土地っていうアレ!


視界に入るもの全部がドラゴンの体で覆い尽くされるような大きさじゃねぇか!!


アーマードドラゴンがこっちに気づいたようだ。


ヴォォォォォォオォッ!!という巨大な雄叫びをあげ、こちらを威嚇してくる。

よくみると、先にアーマードドラゴンに立ち向かっていたのであろう冒険者や魔導師たちが倒れてる姿が見える。

息耐える前に救い出せりゃいいが…。


俺は雷=心臓マッサージ=心配蘇生=超回復と言う些かこじつけも良いところのイメージによる雷撃を、倒れている冒険者や魔導師めがけて一斉に放つ。


俺の白い雷に打たれた魔導師や冒険者たちは皆次々に目を覚ましていく。


だが、俺が蘇生の雷を放ち無防備になった瞬間をドラゴンは見逃さない。

俺めがけてその巨大な腕を振り下ろしてくる。

こいつ、前腕が攻撃向けに進化してるのか…。

鋼のくさび形の鱗にびっしり覆われた前腕。

こんなものが当たれば、普通の人間ならかすっても肉を削がれるだろう。

まともに喰らおうものなら身体は真っ二つだろうな。


などと思いつつ。俺はその腕を払い除ける。

だが、ただ払いのけたわけではない。

雷を収束して作り出したプラズマブレードにより腕を切り落としてみた。


これも某アメコミヒーローのイメージだ。


イメージって大事!!すごいね!イメージの力って!


片腕を失ったアーマードドラゴンがさらに暴れ出しブレス系攻撃の体制に入る。


先ほどまで足元にいた魔導師や冒険者たちは一斉にドラゴンの後ろに回り込み攻撃の当たらない安全圏へと避難する。


そして…ドラゴンから強力な破壊光線らしきものが俺めがけて放たれる。

対する俺は、右腕の鎧を変形させレールガンを形成。

ライトニングクォーツに最大限の力を送り込み、相手のブレス攻撃にも引けを取らない荷電粒子砲を放つ。

荷電粒子砲には魔力無効化のスキルも当然付与されている。


ドラゴンの放ったブレスは魔力だったのだろう。

一瞬でかき消されたブレスの先にあるドラゴンの頭部目掛けて荷電粒子砲が直撃。


荷電粒子砲はドラゴンの頭を跡形もなく消しとばした。


俺もここまで楽に済むとは予想外だ。


ここまで楽だと本当にもう色々と試してみたくなる。

俺は心の中で男子なら一度ならず10度以上はやったことがあろうあの構えを取る。

かーーーーめーー!

…。この先は著作権とか怖いので…。

雷光ぉぉぉぉお…波動ぉぉぉお拳んんんんっ!


俺の両手から放たれた巨大な雷撃の破壊光線がドラゴンの全身をほぼ跡形なく吹っ飛ばす。


無論、冒険者や魔導師さんに危険が及ばない範囲で吹っ飛ばした。


だめだ。これは強すぎる。


ひとまず俺は地面へと華麗にスーパーヒーロー着地を決め、変身を解除する。

ちょうどベストタイミングで魔女さんも到着した。


「いやぁ…。遠くから見てはいたけど…。

君、すごいね…。その力…。」

「いやぁ…。俺もびっくりだよ。

むしろ俺はこんなに強い力を、前回は何の制御もなく使って暴走させたわけだ…。」


と魔女さんと話してると周りに避難していた冒険者や魔導師さんが一斉に集まってくる。


「スゲェ!やっぱすげぇよ賢者様は!!

俺たちにできないことを平然とやってのける!!」


それ以上は言っちゃいけない。そこに痺れるな憧れるな。

あ、言っちゃった。


「確かにあんたはその力がなかったら雑魚も雑魚だった。

でも、そのアクセサリーも紛れもなくあんたの力だ。

俺はそれを誇りに思って良いと思うぜ。

正直、アーマードドラゴンに腹の肉を持ってかれた時はもう諦めてた。

だが、あんたの雷が俺たちを貫き再び生きる生命力を与えてくれた。

傷も一瞬で治癒され心臓まで再び動かすような、まさに神の雷…。

大賢者の名前に相応しい力だと思うぜ…。

俺や仲間たちの命を救ってくれて…。ありがとう…。」


その冒険者さんのお礼と共に他の冒険者や魔導師さんや果てには魔女さんも俺に跪き、深々と頭を下げありがとうと言ってきた。


「流石にこういう時は謙遜しちゃ失礼よ?

胸を張りなさい。賢者。貴方は誰の目から見てもその名に恥じない行いをしたの。これがその偉大さの結果よ。」


俺は戦士ちゃんにそう言われてみんなの一人一人の顔を見る。

中には感謝で涙が止まらないみたいな人もいる。


魔女さんが立ち上がり俺に改めて向き直る。


「本当にありがとう賢者くん。

君が居なければ、私はまたかけがえのない仲間を…いや、家族を失うところだった…。

この国の代表として、ギルドの長として、心より君に感謝を申し上げる。ありがとう…。

さて、流石にこれだけのことをしてもらったんだからそれに対する見返りもあげなきゃ失礼だよね。

と言うわけで私をプレゼン」

「言わせねぇよ。」


俺は魔女さんの両ほっぺをつまみ言葉を遮る。


それを見た周りの冒険者や魔導師さんから思わず安堵の笑いが上がる。


「だったら、魔女様?やることは1つだろう?」

「あぁ、そうだね!」


「「「宴だぁぁぁぁあっ!!」」」


さっき、晩御飯食べたばっかりだろう…。


「わたしはねむいのでえんりょしたいのです…。」


そして妹ちゃんの眠気は限界に達していた…。





そんな俺たちを遠くで見る1人の影があったことに俺たちはその時は気づいて居なかった。


「ふぅん…。あれが西の国に現れたミノタウロスを一瞬で倒したやつ…か。

面白いじゃん、あの力…ほしいなぁ…。」


暗闇に潜む影…。怪しく微笑むひとりの少女…。

彼女は一体何者だったのか。


その時の俺たちはまだ誰も知る由もなかった。

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