第10話 カッコいいから好きなんじゃなくて、好きだからカッコいいんだよ。
練兵場での模擬戦と言う名の、魔導師にとっては地獄を味わうような闘いが終わった。
そしてその結果、俺は魔女さんの権限により満場一致でS級冒険者の資格まで付与されてしまったのである。
「しかし、君の地位にふさわしくなるように鍛え上げた上でS級資格を…。と思っていたのにこの結果は予想外だねぇ…。一応彼らB~A級の腕利きの精鋭たちなんだよ?
君が賢者のブレスを外してくるだろう事は予想していたが、それでもこの結果に落ち着いたのは驚きだ。
君の魔剣のマジックキャンセル能力は異常なまでの性能だった。
熱線魔法を放つ為に生成されたレンズも、あの数がなければ全てかき消されていたろうね。」
魔導士達も俺たちの最強の切り札を出さざるをえなくなるとは…とうなだれている。
「さて。そうなると次は君たち二人だね。」
妹ちゃんと戦士ちゃんの肩がビクっと震える。
怯えたような顔で魔女さんの方を見ている。
「君たちが危惧してるように、このままでは間違いなく賢者くんの足手まといになりかねない。故に君たち二人には鍛錬の上、上級冒険者と渡り合えるだけの力を…。」
「待ってくれ。その前に、俺が何も身につけていない状態で、一般的な武器を装備した状態でこの子達と戦わせて欲しい。」
魔女さんはその言葉で全てを理解してくれたようだった。
「良いだろう。改めて試験だ。好きにやりなさい。」
「ありがとう。2人にはむしろこっちの方を知っておいて欲しい。何も身につけてない俺の強さを…。」
と言うと2人がさらに怯え出した。
あれれー?おかしいぞー?
あぁ、そうか。
この子達はまだ俺の力がアクセサリーによるものってことを何も知らないんだな…。
「あはは。どうする?説明せずに戦う?」
「そうする。魔導師さんも同行させてほしい。」
「わかったよ。君たち、練兵場の外野で待機していなさい。彼が本当の実力を見せてくれるよ。」
魔導師さんたちも一斉に怯え出す。
「ひぃぃぃ!アレよりもやばいことになるのは勘弁っすよ!?」
「私もいるから何も心配はないよ。君たちは彼の命にも関わる秘密を知ることにはなるだろうがね…。」
こらこら魔女さん、魔導師達をビビらせるのはやめなさい。
俺は安全を考慮して木刀を装備。
戦士ちゃんも同じく木刀を。
妹ちゃんは魔力をセーブできる練習用の杖を装備した。
「では…。模擬戦開始!」
戦士ちゃんがとんでもない速度で踏み込んで木刀を一振り。
俺はなんとかこれを受け止めるが、その力を受け止めきれず木刀を手放してしまった。
その隙をついて妹ちゃんからの電撃魔法。
俺はそれを派手にくらいそのまま動けなくなった。
「……っ!賢者さん!ふざけないで本気でやって!」
「本気の本気だよ…。
俺は20代後半のおじさんで、運動もろくにしてきてない…。下っ腹もたるんでるようなおっさんだ。身体を鍛えた事はもちろんない。
それに…、俺の強さは全部このアクセサリーが生んだものだ。ちょっと使ってみて?」
そう言って俺は剣に変化するネックレスを戦士ちゃんに渡す。
「どうすればこれは使えるの?」
「変形させたい刃物を想像して、力を流し込むイメージをしてみて?」
すると、ネックレスはたちまち大剣へと変化した。
「な、なによこれ…。木の枝のようにすごく軽い…。
しかも振るだけで衝撃波が…。これが…賢者様の秘密…。」
「そう、強すぎる武器に頼り、その力に振り回されていただけだよ。俺自身は何も強くない。」
「そんな…。私達を助けてくれた時も?」
「そう、2人にあげたピンブローチというかピアスの力だね。」
2人だけでなく魔導師たちもぽけーっとしている。
「すっ…」
す?
「すっげぇぇぇえっ!なんすかなんすかそのアーティファクト!!俺たちにも触らせてくださいよ!!」
「え、やだ。」
「なんでええええっ!!」
そんなもの決まっている。
「俺は女にモテたくてハンドメイド始めたんだ!!野郎にくれてやるような作品などない!!」
「理不尽っ!!」
かくして、俺の本当の実力や弱みをみんなに見せつけることが出来たのであった。
「そうなると…そのアーティファクトを奪われたり破壊されると無力になるし、逆にそれがなければDランク冒険者どころかその辺の町民レベルにまで落ちぶれると…。
逆に言えば俺たちが賢者様のアーティファクトを使えば、魔女様にも勝てる!!」
東の魔女様の次元空間消滅魔法が魔導師の耳元めがけて放たれる。
「傲慢が過ぎるね。君たちは私に言わせればまだまだ雑魚だ。無論、賢者くんもね。
弱点は明白だ。体力に、元の戦闘センスに、その他にも色々と課題は多そうだ。
まぁ、その辺はしっかりと鍛えさせてもらうよ。
私は魔術専門だから体力を重点的に鍛え上げさせてもらうことになるかな?
剣術は皇国ギルドの連中に鍛え上げてもらう方が良いだろうかなぁ。彼らは脳筋が多いからね。」
いろいろとお分かり頂けたようでなにより…。
「さてさて、これからのことを色々と考えないとだね。
まぁ、西のギルド連中に見せる、私とあの子との模擬戦までにはみっちりと鍛え上げて新たな力も使いこなせるようになってもらうとしよう。
私はとりあえず君が先ほど使ったライトニングクォーツを仕上げたい。
食事をとったら早速私の部屋で仕上げようではないか!必要なものはなんでも用意するよ!
抱き枕代わりの私とか!」
「いや、それは別にいらないんでほんとまじ勘弁してください。」
この魔女さんのお城にも当然ながら大食堂がある。
ここの食堂も魔女さん曰く研究の1つらしい。
『料理も1つの科学であり魔法だからね!
ここで出される料理も1つの研究成果さ!
食材の一部は西の大国から輸入してるんだよ!』
などと言っていた。
「お、おおぉぉおっ!!凄い!さすがお城ご飯!!ギルドの野性味溢れるつまみやすいご飯とは違うね!!
すみません。俺ナイフとフォーク使うのすげぇ苦手なんだけどお箸ってある?
あの、細い棒二本で良いんだけど…。」
と言うと魔女さんは適当な木の板をどっかから引っ張り出して来て魔法で瞬時に割り箸的なものを作ってくれた。
「はいどうぞ賢者くん。
あ、しまったな…。私がアーンしてあげれば良かったか。
それとも口移しが良い?良いよね?そうしよう!こんなものはいらないね!」
俺は破壊される前に割り箸的なものを奪い取った。
「お気持ちだけで結構です♪」
「もー、ほんと君はつれないなぁー。ぶーぶーっ。」
だが、いくら箸があっても流石にこの美味しそうな分厚いステーキを切り分けることなく食うのは無理だ…。ぐぬぬぬぬ…。
戦士ちゃんを見る。
首を思いっきり横に振られる。
妹ちゃんを見る。
視線をそらされた。
…………。
不服ながら魔女さんを見る。
したり顔である。
さては確信犯だなオメー。
「す、すみません…。切り分けてください…。」
「喜んで♪」
魔女さんはテキパキと俺や戦士ちゃんや妹ちゃんのステーキを切り分けてくれた。
なんというかまるでお母さんである。
「魔女さん、あなた俺の記憶をみたことで俺がナイフやフォークを使えないところまで読んだ上でこの食事を選んだろ…?」
「そりゃあね。私も女だからね。少しくらいは惚れた男の人に頼られたいじゃない。」
「貴方が惚れたのは俺じゃなくて、異世界人とその技術だろう。実際、俺自身には惚れてもらえるような要素はないよ。」
などと言っていたら口に肉を放り込まれる。
「自分をあまり下に見ちゃいけないよ。
確かに私は異世界人である君や、君の技術に対して惚れていた。
でもね、私も1人の女なんだ。
君が本当に最低な男なら、きっとそれ以上惚れることはなかっただろうしむしろ嫌っていたと思うよ。
惚れた理由は?と聞かれればもうそれ以上はわからなくなってきてるよ。
でも、初めて本気で恋をしてこの歳でようやく理解したよ。
人を本気で好きになると、好きになった理由って案外わからなくなるもんだね。
君達2人も、そうなのかな?」
本当に優しい顔で魔女さんが戦士ちゃんと妹ちゃんを見る。
「私は…。最初はお姉様と私を助けてくれたから…。それがカッコよかったから好きになってたと思いました。
でも、お昼に戦って弱いところ…カッコ悪いところを知ったのに嫌いにはなりませんでした。
魔女さんが言うように、私もどこを好きになってるのかわかりません。
どこが好きなの?って聞かれたら多分全部って答えると思います。」
「私も…そうかも。命を助けてもらったと言っても、その時は意識も朦朧としてたからその記憶はないの。
でも、それでも私は気がついたら彼の持つ優しさやなんとも言えない暖かさに惹かれてた。
そのあとはなんかこう…はなしてるだけで胸が熱くなってドキドキするし…。
貴方みたいな美魔女に組み伏せられてるような姿を見ると殺意が湧くようになりました。」
戦士ちゃんが真顔で拳を握る。
しかも拳は魔力で光り輝き出している。
敵を倒せと轟き叫ぶ勢いである。
「あはははは!ほんと、若くて初々しくて可愛らしいねぇ君達は!からかい甲斐があるよ~っ♪
くふふ…っ!あぁ、もう、笑いが止まらないね。微笑ましいなぁ、君達は…。」
「か、からかわないでください!誰にでも好かれるようなこの人が悪いんです。」
ふんすっと腕組みされてこっちをチラ見される。
「えぇ~!?そこで俺に振るの!?好かれる…好かれるねぇ…。
好かれる意味がわからないや…。俺のどこにそんな魅力があるんだって言うんだよ…。」
3人が顔を見合わせてニカっと笑う。
「「「ぜーんぶっ。」」」
流石にそんな言われたら俺も照れる。
顔から業火が出る勢いだ。
「あ、ありがと…。そう言うの言われたことないからすごく嬉しいよ。」
魔女さんが俺の頭を撫でてくる。
戦士ちゃんがぎゅっと抱きつき、妹ちゃんも負けじと反対側にぎゅっと抱きついてくる。
「ふふっ、人気者だね君は。
君の最大の魅力は誰かの為に常に動いてる所だと私は思うよ。
そこに気付かず君に惚れられなかった女たちは勿体ないくらいだ。
ただアレだねー。ここまでモテモテだと、西の大国に帰ったらあの子がかつての爆裂猫娘全盛期の力で怒り出すかもしれないね~。」
「そんなにやばいのか…。あの人。あの見た目可愛さで…。」
「あぁ、やばいよ彼女は。
特に一瞬で間合いを詰めてからのゼロ距離爆裂魔法の破壊力は、あらゆるものを倒せるトップレベルのパワーだ。
非常に硬い鋼の鱗で覆われたアーマードドラゴンを鱗ごとぶち抜き首を消しとばしたあの姿は今でも脳裏に焼き付いているよ…。
あの時は暫く、【龍殺しの疾風迅雷爆裂猫娘】なんて呼ばれてたな…。」
そんなパワーでキレられようものなら俺は下半身を残して消し飛ぶのではなかろうか。
「あはは、君なら魔力は無効化できるからせいぜい複雑骨折とか頚椎損傷くらいで済むんじゃないかな?」
「十分重症なのですが…。」
「モテる男はつらいねぇ~?このこのー。まぁ、私は長生きだし割とこの姿のままだ。
人生の短いものから優先して惚れて行ってもらっても構わないよ。君も数百年くらいは生きられるんだろう?」
「バカ言うな…。長くても80年生きられるかだよ俺たちは。」
「な…うそ…だろ…?
そんなに早いのかい…?君はもう30年近く生きてるってことは子作り出来る限界が近いんじゃないのかい!?これはいけない!今すぐ私の寝室へ行こう!さぁはやく!」
「お前絶対わかってて言ってんだろ。本当一回引っ叩くぞ。」
流石に少女2人も呆れ顔である。
「ほんと魔女様はどんだけ子作りしたいんですか…。発情期の猫じゃあるまいし…。」
「それは君たちのとこのギルマスへの皮肉かい?」
「えぇ…。私もあの人を殴り飛ばせるだけの力があれば多分殴ってました。」
わー、戦士ちゃん、意外とこわーい。
また真顔で光り輝く拳握ってるー。
「しかし、彼はもしかしたら元の世界へ帰ってしまうかもしれないんだ。
下手したらなんの前触れもなく、おとぎ話の前例のように消えるかもしれない。
私はそうなる前に彼の持つ知識や技術をたくさん手に入れたいし、彼の子孫をこの世界に残したいんだよ。」
「それなら別に私たちでもいいじゃないですか。子孫を残すだけなら。」
「君も今さらりとすごいこと言っちゃってるね…。」
ほんとこの世界の子たちは子作りしか頭にないのか…。痴女しかいないのかこの世界は…。
「あぁ、そうか。君の世界とは文化が違うのか…。私たちの世界では最短で12歳で結婚できるんだよ。
無論、子どもも作ることを許される。
君の世界だと男は18歳、女は16歳、成人としてお酒が飲めるのも20歳なのだったね。
なるほどなるほど。通りで、この子たち2人は眼中にもないような反応をしていたわけだね~。」
全く眼中になかったわけじゃない。
戦士ちゃんのお腹のくびれ具合にはわりと目がいっちゃうし、ほどよく成長している妹ちゃんもエロ可愛い。
見た目も美しいし、どちらかといえば好みの方ではある。
特に俺は髪の長い女の子が好きだ。
今ここにいる3人の髪質や長さは俺の好みドンピシャなのである。
戦士ちゃんと妹ちゃんのグレーに近い感じの艶やかなストレートヘアー。
戦士ちゃんの方はは動きやすいように普段はポニテなのも良いのだが、おろしてる時もまた可愛い。
魔女さんに至ってはそれはもう美しい絹のような黒髪であった。
毛先が少しウェーブしてるのもまた妖艶でたまらない。
その上、まるで花魁のようなセクシーな肩出し胸だし尻出しさらには横にはスリット入りで太ももチラリはかなりエロい。
エロ可愛い。
「へぇー。君は私たちみたいな髪の長い女の子が好みだったんだねぇ。そんなに褒められると私も照れて赤面しちゃうよ。」
頬を抑えてくねくねとしてる。
「人の心の声を勝手に聞いて口に出すと言うそのギルマス特権ほんとやめろください。」
「さってと、食事も済んだことだし賢者くんは私の魔術工房でじっくりまったりとライトニングクォーツのネックレスを仕上げよう。性能テストにも無論付き合うよ。好きなだけね。」
チラリと2人に視線を送ると、妹ちゃんはすごくしょんぼりしてるし戦士ちゃんは見るからに不機嫌そうだ。
「私たち凡人にはどうぞおかまいなく!天才同士でじっくりまったりねっとりと2人きりの時間をドーーーゾッお楽しみください!ふんっだ。」
「………。」
何も言わずにしょんぼりしてる妹ちゃんが一番心へのダメージがでかいっ…!!
おじさんのメンタルでは耐えきれない!壊れちゃう!
「その事なんだけど、2人にも見せてみたいんだ。俺が作品をどう作るのかってところとかさ。
付き合って欲しいんだけどいいかな?」
「べ、別に貴方が誰と一緒に居たってどうでもいいんだけど、その人に手を出されてまたワタワタしてるとこ見たくないから一緒に居てあげる!勘違いしないでよね!」
わー、すごーい。テンプレのようなツンデレー。
「あと、ちょっと2人にもブレスレットを作ってあげたい気分なんだ。」
「私は!?私の分はないのかい?もちろんあるよね!やったー!さすが賢者くん!」
「何も言ってないよー。ステイステイ。」
と言うわけで俺は、魔女さんの工房をお借りしてライトニングクォーツを仕上げることにした。





