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第7話 皇女殿下と東の魔女

とりあえず可及的速やかにいや、ギルマスの雰囲気だけなら火球的速やかに王宮へと向かうことになった。

気のせいだろうか。

ギルマスの頭上に某最期のファンタジー的なRPGで見る死の宣告みたいなやつが見えている気がする。

0になったら死ぬんじゃないのか。

知らんけど。


「皇国のギルマスさん。王宮ってのはここから近いんですか?」

「正直そこそこ距離があります。

西の大国も同じような構造ですが、外壁の中央に街を展望できるようにギルドが。

そして、街の端にその街の各区画を収める者が住んでいたり、研究機関が集まった城が建てられているんです。

こちらはその中でも特にこの大きな大陸を支配する皇族たちのお城があるわけですね。

皇族たちは基本的には東から西にかけてを支配しています。

東の国は少し特殊で、東の魔女がギルマスと街の管理と研究機関の室長を全て兼任しており、基本はギルドよりも城にいて、ギルドは実質的にサブマスターが納めてる感じですね。

西の国はあなたが見たように獣人族のギルマスが支配しているのですが、西の国の居城は研究施設も機能してないし、土地を収める長も居ないのですよ。

これは、西の国と東の国はほんの数百年前までは戦争をしていたからなのです。

この戦を鎮めたのが中央皇国と言うわけですね。

元々は西の国は主に獣人が、中央皇国はヒューマン、東の国は主にエルフとドワーフが支配していました。

その為、西の国は東の国と比べて技術力が乏しいのと研究機関のための城下町があっても、実際は農家達が新しい作物の研究をメインに行なっている感じなのです。

そして、あの国にあるいろんな街は基本的に国で一番強い者が収めると言う謎ルールがありますね…。といっても結局支配してるのはギルマスですが…。」


この人話し出すと止まらない典型的なヲタタイプか…見た目通り…。

ただ、色々と面白い話が聞けた。

一方的にだが…。

と言うか俺はここから遠いかの話しかしてなかったはずなのだが…。


「とりあえず、何も知らない私に色々と教えてくれてありがとうございます。

ひとまず…街の端と言うことはそこそこの距離が…?」

「えぇ…ですのでここからは鳥車で向かいます。」

「おぉー!でっかい鳥さんだ!雀っぽくてかわいい!ふっかふかだ!!

なんかこうあれだ!某ファイナルな幻想のRPGに出てくる某黄色い鳥みたいなアレだ!」

「よくわかりませんが、楽しそうですね。では皆様どうぞお乗りください。飛ばしてもらいますので。」


おおー、この客車もふっかふかで乗り心地がかなり良さそうだ。


「では、よく揺れますので適当にしっかりつかまっておいてくださいね。客人の準備はできました。事故を起こさない程度に全速力で飛ばしてください!」

「アイヨー!」


あ、この鳥さん人の言葉わかるんだ。かしこい。


って、クソ速ぁぁぁぁあぁっ!!ちょ、これ速すぎない!?ブレーキとか大丈夫!?

止まった瞬間客車ごと王宮にイン!超!エキサイティン!!とかなりかねない勢いのあるスピードだぞ!?

てかこれスッゲェ気持ち悪い!さっきのお昼ご飯出ちゃう!リバースしちゃう!


「ハハハ。すごいでしょ。この子。昨年の鳥車レースでも大陸一位だったんですよ。私の自慢の大鳥です。」

「ゔぅおぉおぉぇぇっ!ぎもぢわるっ!!」


少女二人は完全にグロッキーになっている。

そしてこいつはケロっとしている腹だたしいくらいだ。


「ハハハハハ。もう王宮が見えてきましたよー。この子の足ならすぐですよすぐ。」

「あの、一応聞きますがこれちゃんと安全にとまれるんですか?」

「あー、考えていませんでしたね。大鳥?減速するときはゆっくりですよー?」

「アイヨー!」


王宮の入り口が見えてきたところで少しづつ減速していく。

そしてそのまま無事何事もなく王宮の入り口できちんと止まった。


「さて、では共に王室まで参りましょう。

私が同伴していなければ、王宮内はもちろんですが王室には入れませんからね。」

「ええ、よろしくお願いします。そう言えば、さっきの話だと西のギルマスは結構強いんですか?」

「そうですよ。彼女は幼い10代の頃から冒険者をしていますが、かなりの実力者なんです。

2つ名は「疾風迅雷の爆裂猫娘」

超高速で戦場を走り回りながら、爆炎魔法で敵を焼き飛ばすと言う事からそのような名前がつきました。」

「ほうほう。となると、東の魔女は聞くまでもなく凄いとして、貴方も相当な実力者なのですか?」

「ハハハハハ。流石に魔法を使える二人には敵いませんがね。

私は元々は前殿下直属の王国近衛騎士長なんです。こんな見てくれですが、剣の腕だけは自信がありますよ。

魔法が使えない分は全て剣技で補って生きてきたのです。たとえ、彼女が高速で動こうが私に近づこうものなら両断できるわけです。


なので、毎回彼女と戦うと遠くから爆裂魔法でよくぶっ飛ばされました…。

今では良い思い出です…。」


色々と苦労しているらしい…。


そんなこんなでいよいよ皇女殿下の居る王室の前に立った。

目の前にはクッソ馬鹿でかい扉がある。

とてもじゃないが人の手で開けれるような大きさではない。


「半端なくでっかい扉だな…。これ、どう開けるんだ…?」

「そもそも私たち…冒険者になったばっかりなのに剣聖様や、まさかの皇女殿下にお会いできることになるなんて…。」

「礼儀作法とかに自信ないですお姉様!」

「私もよ…。そんなもの誰も教えちゃくれなかったんだから…。」


などなど各々がこれから謁見する方に対する恐怖で固まっている。


「あ、皆さんそちらのでかい扉からは入れませんよ。それは城攻め対策用のダミーです。本当の入り口はここにあります。」


そういうとでっかい扉の更に向こう側にあった、壁にかかったおっきな肖像画を押し込み横にスライドさせる。

なるほど…。引き戸か…。色々と予想外だよ…。


引き戸を開けると玉座に座った皇女殿下と思わしき女の子と、その子を取り囲むように立つ兵士に、付き人のメイドと思わしき人たち。


「お待ちしておりました魔法使い様。私はこの大陸で皇女を勤めさせて頂いてる者です。」


これは…ひざまづいた方が良いよな…。流石に。


「お初にお目にかかります。皇女殿下。

この度は急な事でご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。」


「あ、あああの!そんなにかしこまらなくても結構ですよ!?顔をあげてくださいまし魔法使い様!」

「そうですか。いやでもしかし、私は実際魔法使いでもない、それこそただの平民で自称アクセサリー職人です。」

「ご謙遜を…。ミノタウロスを容易く退け、ひどい怪我を負った戦士の傷を瞬時に治癒したと聞き及んでおります。

それは大魔法使いと言われている東の魔女にも匹敵するものです。

少なくともそのような力を持っていて魔法使いではないと言うことは無いと思いますわ。」


ニッコリと微笑むそれはそれは美しい少女。

日に透けると青く輝く綺麗な髪がまた美しい。

日に当たっていないときはパッと見は黒髪に見える。


「さて、本当はお話ししたい事が山ほどありますが、今は東の魔女が早く会いたいと言っていますのでここはぐっとこらえることにします…。ほんと…心苦しいですが…。くっ…!

どうぞ、わたくしに付いてきて頂けますか?」


俺たちは皇女殿下に案内されながら王室の奥にある部屋に案内される。

とても可愛らしい内装の部屋だな…。

これが転移門のある部屋…?


いや、違うだろう。

これは多分…。


「えっと…こちらは御察しの通り私の寝室ですので、その…あまりじっくり見られると少し恥ずかしいのですが…。」

「これは、申し訳ありません…。」

「いえ、謝られるほどではありませんよ。さて、転移門はこちらです。」


案内されたのは大きな鏡であった。


「これはまだ試験段階なのでいまは完全な片道一回きりです。私の身に何かあった時のための貴重な一回。

今回は、それ以上の緊急的な重大事態と判断し今回の件を許諾しました。

滅多なことはないと思いますが、私はこの転移石の補充が来るまでは緊急事態における最後の手段を失ったという事になります。

貴方には拒否権はないにひとしいのですが、その重みを受け入れてこの門をくぐる覚悟はありますか?」


んなもんねぇよ。あるわけねぇだろ。


とは流石に言えないがこれはぶっちゃけかなりプレッシャーだぞ…。


「当然ながら、そのような覚悟はありません。

また、私自身もそれだけの事をしてもらえる価値のある人間であるなど高慢で傲慢な事は思っておりません。

ですが、あなた方がそれだけのリスクを犯して私を送ろうと試みてくれたのです。せめて、その気持ちには応えたい。」


皇女はまた満面の笑みで微笑む。


「ふふ、本当に正直な方ですね。

それに皆から伝え聞くように、他者を思う事を何よりも優先するとてもお優しい心を持っていらっしゃいますね。

では、こちらへ。お二人も彼に同伴してください。それは西のギルマスの指示でもありますので。」


巨大な鏡の前に立つと、強烈なめまいと共に視界がブラックアウトした。

うぐぅ…。気持ち悪い…。

これはあれだな…。俺がダンジョンで目覚めた時と同じ感覚だ。


俺はそのまま気を失った。



「魔法使いくん、魔法使いくん♪

早く目を覚ましてくれないかな?早くお話をさせてくれないかなー?じゃないと、魔女のおねぇさんがその可愛らしい唇に喜びの口づけをしてしまうかもしれないよ~?」


顔が近づく気配を感じ俺は眼を覚ます。


「やめてください。私はそのように気安く身体を許す趣味はありません。」

「ふんふん、釣れないねぇ。

君が来るまで西のギルマスからも色々と聞いては居たけど、本当に奥手なんだねぇ。

ようやく私が数百年大事にしてきた処女を捧げられる相手が現れたと思ったのに。」

「さらっととんでもない事を言わないでください…。しかも初対面で…。」


腰まで伸びたサラッサラの黒髪。

おっきなおっぱいの谷間が見えるセクシーな肩出し衣装。

さらに美しい太ももが見えるスリットの入ったロングスカートに、お尻の割れ目や背中がチラ見えしている正に童貞を殺す服装状態。

童貞だったら即死だった。


「いやいや、死なれちゃあ困るよ。せめて私に君の子供を産ませてからにしてくれたまえ。」

「生々しい冗談はやめてください。」

「私は本気だよ?君との子どもが欲しい。 まぁ君が私が長年恋い焦がれ求めてきた異世界人で間違いないならばね。」


そんな事よりもだ。

先程から少女二人の視線がものすごく痛い。

これはあれだ。

軽蔑の眼差しだ。

あまりの心苦しさに顔を直視する勇気もでない。

きっと、俺は彼女たちに女たらしとか思われ始めてるに違いない…。

俺が抱いた女の子なんてこの世に一人だけでしかも1週間で失った恋人なのに…。


「へぇ…。君に抱かれた子がいるんだ。

羨ましいなぁ…。しかも1週間で君が捨てられたのかい?勿体無い事するなぁ。

異世界人を抜きにしても、こんなにいい男早々居ないと思うんだけどねぇ?」


ん…?まて、もしかしてこの人も…。


「ようやく気づいたかな?そう、私も思考を読み取るスキルは持っているよ。

嘘を見抜くスキルと心の声を聞くスキルは私たちにはもはや必須だからね。」


つくづくこの人たちは人が悪い。

ってことは皇国のギルマスもか…。


「さて、ひとまずは君が本当に異世界人かどうかを確かめさせてもらいたい。

私には他のものにはないスキルとして過去を見るスキルがあるんだ。

触れたものの記憶を読み取るスキルだね。

もちろん、君にも見られたくない記憶は多数あると思うからどんなものを見ても君が知られたくないと言ったものは他言しないと約束しよう。


あ、なお私が君に好きになってもらうためにも君の女性の好みに関わりそうな記憶はじっくり見させてもらうよ♪


ささ、大人しく頭を出しなさい…。

拒否したら君は国家大罪人として始末しなければならなくなるよー?ほらほらぁ?」


クソ!!この場から逃げたい!

ただでさえ心の声ダダ漏れだってぇのに!


とりあえず俺は覚悟を決めた。


「よろしい。では読ませてもらうよ。

君のここに来るまでの過去を…。」


魔女が俺の額に手を触れる。


「うぅっ…!ぁぁぁあっぐっ!」


途端、魔女がうなり出した。

大丈夫なのか…?一体何を見ているんだ…。


「心配は要らないよ。これは直接私の脳に大量の情報を送るスキルでもあるからね…。尋常じゃない高熱と頭痛を発するんだ…。

だが、いつか来るかもしれないこの日のためにと必死に手に入れたスキルだ。

私は君の事をたくさん知るまでやめないぞ!ぐぅうぅっ!あぁぁぁぁあっ!!」


どこまで記憶を読まれてるか知らないが、流石に目の前で女の子の苦しむ姿を見るのはかなり心苦しい。


「もうやめてください。

鼻血まで出てきてるじゃないですか…。どこまで記憶を読んだかは知りませんが、知りたいようなことは直接口で話しますから。

私も色々とあなたに意見を聞きたいこともありますし…。」


この数秒でひどい高熱を出しているのが見て取れた。

額には汗が滲み、綺麗な髪も汗でベタベタ。

呼吸も荒くとても見ていられるような状態じゃない。


「寝室はどちらですか?

別に私は逃げるつもりもありませんので、ゆっくりと色々お話ししましょう。」


俺は彼女に肩を貸し、少女二人も同伴の元寝室へ案内してもらった。


流石に二人きりで寝室に入ろうものなら誤解とかそういう次元じゃない。

というかここまで来たら流石にもう認めざるを得ないだろう。

やはり俺は異世界に転移してしまったのだ。


ここで過ごした時間はまだ一日…。

元々明日も仕事は休みではあったが…。

これ、仕事に穴開ける前に帰れるかな…。


そんなことばかり考えつつ、魔女を寝室へと連れてきてゆっくりとベッドに寝かせる。


「妹ちゃん、お水とか今持ってる?もし大丈夫なら魔女さんにお水飲ませてあげて?」

「はい!どうぞ…。黒魔女様…。」

「ありがと…。うーー…。思ったよりコレは脳へのダメージがひどいね…。ひとまず、落ち着くまで横になるよ…。落ち着いたらまた声をかけるから、君たちは西の国のギルマスにでも水手紙で話をしてくると良い…。」

「わかりました。ゆっくりと休んでいてください。」


ひとまず俺は転移門の出口になっていた部屋に戻り、水手紙で西の国のギルマスに報告してきた。


『お疲れ様。なるほど、やはり君の過去を見るスキルは脳に相当な負荷を与えるものだったか…。

ひとまず、二人に関しては今後どうするかは君たちの自由だ。私の出したクエストは無事に完了しているからね。

ただし魔法使いくん。

君に関しては、身分証の発行も必要だしその他、今後どうするのかという事を色々と決めていかなければならない。

ひとまず魔女が目を覚ましたら色々と相談してほしい。

彼女は聞いての通り皇女に次いで国を動かす地位もある。

君がこの世界でどう生きたいかを決めてくれれば、誰よりも最優先かつ全力で手を貸してくれるだろう。

ある程度落ち着いたら、帰っておいで。

君の部屋を用意して待っているからね。ふにゃ…。早く会いたいにゃ…。寂しいにゃ…。

はっ!!しまったにゃ!いまのなし!いまのなしにゃ!まずいにゃ!こんなもん見られようものならあいつに半殺しにされかねないにゃ!取り消しボタン的なのつけてほしいにゃ…。』


相変わらず感情が高ぶるとニャーニャー言っちゃうクセが本当に愛らしく微笑ましい…。

しかし…俺もなんか頭がフラフラするな…。

そういえば、不眠症も重なり結局あまり眠れてないんだったな…。


そして、そのままフッと意識が途切れ俺は気をうしなった。




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