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悪性崩落ルブナイキ  作者: 藤原(の)コウト
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いつか、そしてどこか

 いつかのどこかで、とある少年たちは瓦礫(がれき)の荒野を駆け抜けていた。

『わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』

「うるせえぞ誕弾(たんだん)! いちいち騒ぐんじゃねえ慣れろ馬鹿野郎!!」

『なっ、慣れるかこんなもん!! あと馬鹿はそっちだっつの! なんで毎度毎度敵を引き連れて来るかなあ!? そろそろ学習した方がいいと思うよボクはぁ!!』

「それは俺じゃなくて千土に言えっつの! 元はあいつが言ったことだぞ!」

「やれやれ、責任のなすりつけ合いかい。見苦しいことこの上ないぜ」

「『お(キミ)の言う台詞(せりふ)じゃねーっ!!』」

 彼らの後ろには青筋バッキバキに立てた『治安維持隊(ちあんいじたい)』が追いかけてきていて、その原因は全長四メートル弱のロボット、『雪風(ゆきかぜ)一號(いちごう)』が背負った馬鹿デカいリュックサックの中身である。

「このクソガキ共がァ!! それはウチの食料だっつってんだろォが!!」

「返せテメエら!! 今すぐ返さねえとぶち殺すぞォ!?」

「いいや絶対に許さねえ、返してもぶち殺してやるゥ!!」

「おーおー、あちらも元気がよろしいようだぜ。何だ、この世界もまだまだ腐っちゃいないね」

『キミの性根は腐って……待って何をする気!? そんなとこにそんなもの入れたら壊れる!! やめて! 最悪ボクはいいとして、ボクの『雪風』をイジメるのだけはやめてぇ!!』

「つうかホントにあいつら『治安維持隊』か……? ガラ悪すぎんだろ……」

 人間食わねば死ぬ。ということで強盗だった。

 最初の方はきちんとステルスできていたのだが、食料庫に厳重な警備がされていたところから雲行きが怪しくなり、まあいいや行っちゃえという千土(せんど)の号令によって『我が道を征く(ゴーイングマイウェイ)』、そして今に至るという感じだった。自業自得と言えばそうである。

「いやあしかし、この前の転移(てんい)は刺激的だったねえ。これとは比べものにならないくらいに」

「確かになあ……俺もあんな大暴れ、久しぶりにやったよ」

『自分で走らなくていいからって、ボク差し置いて思い出話始めるのやめてくれます!?』

「そういやあの時、最後に苛木(いらき)が正気に戻ってたみたいだけど、あれは何だったんだろうな? 柳衣(やなぎぬ)の能力って、一度使ったら心に染み付くとかで手錠でも無効化できないんだろ? てことは、自力で戻ったってことなのか?」

『おおっとついに本腰入れてガチ質問ですか!? 心が折れそうだぜイエーイ!!』

 誕弾の抗議も虚しく、雑談が始まってしまった。ちなみに一番かわいそうなのは追いつける(きざ)しのない『治安維持隊』の皆さんである。

「ふむ、予想でいいのなら」

「お、あるのか? 聞かせてくれよ」

「おそらくだが、『悪性(あくせい)』だろうね」

「『悪性』? 『悪性』って……誰の?」

「アルコちゃんの」

 予想外な名前に、戦部(いくさべ)は思わず絶句した。

「そもそも僕らが最初に彼女を助けた時も、彼女はピンチだっただろう? そう考えるとさ、多分彼女に僕らは引き寄せられたんだと思うよ。出発した時間は同じのはずなのに、なぜか全員の到着時間に差が生じた。あれもその影響じゃないかな」

「……苛木のは?」

「だから、引き寄せたんだろう。深層意識ってヤツ? 柳衣ちゃんに騙されて色々悪事を働いた自分を疑問に思いながらも、『私は騙されてなんかいない!』って信じたい思いで蓋をしてた〝正気〟を、さ」

「それを、引き寄せた……だから苛木は、最後に自分の間違いに気付いた……」

向瀬(むこうぜ)在子がその身に宿した〝奇跡〟は、『引き寄せる』力……人と人とを引き寄せて、時には運命さえ自分のところに引っ張り込んでしまう力。だがまあ、あくまで推測に過ぎないぜ? しかも無粋だ、知らない方がいい真実だ。昔から飽きもせず語り継がれるお(とぎ)話みたいに、何の根拠もない美談で終わらせた方が百倍見てくれはいいだろうよ」

 飽きずにと言うならそれこそ飽きずに、千土は皮肉っぽく締めくくった。すかさず誕弾が叫ぶ。

『話は終わった!? で、どうするのこれから!! ボクらはどこに行くの!?』

「うん? そうだねえ……」

 千土は荒々しい運転に揺られながら、それでも口元の嘲笑()みを絶やさず、やがてこう答えた。

「とりあえず、行けるとこまで行っちゃえよ」

『くそうめちゃくちゃアバウトな返事が返ってきたぞ……? もーやだー! ボクこいつら乗せて運ぶのもー嫌だよー!!』

「本気で俺らを下ろそうとするんなら当然抵抗するけど、それでいいのか?」

『そーいうところですー!』

 そんな風に、今日も今日とて彼らは騒がしく生きている。恥ずかしげもなく、好き勝手やって生きている。

「さてさて、『絶対、また会おう』……と来たか。楽しみにしてるぜ、アルコちゃん」

 その言葉が現実になるのかどうか、この先の顛末(てんまつ)はまだ誰も知らないこと。

 そしてどこかの誰かにとっては、とてもとても大事なことなのだった。



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