表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/66

装備とイジメ

「ここは私が贔屓にしている店でな。付与効果付きの装備品を扱っている店なんだ」

「へえ、ここ買い取りもしてますか?」

「あぁ、ただ付与効果付きに限るがな」


 なるほど効果付きの装備品限定の店か。店自体は大きいけどメインストリートから少し離れているためわかりづらい場所にある。隠れ家的な感じだな。

 確かにフィアの装備はどれも立派な物だ。全部ここで買ったのか。


 フィルトリア=スカーレット 21歳 女

 ナイトLv13


 武器【火炎の大剣】


 防具【胆力の鎧】【力の籠手】【飛翔の靴】


 フィアは掴んだままの俺の腕を引き店に入るとスーツを着た男性が接客しに来た。なにやら高級店みたいだ。俺場違いじゃね?


「これはフィア様。今日はどのような要件で?」

「私の連れの防具を買いにな」


 連れって俺の事か? なんでそんな事になってんだ!


「ここでいい装備を買えばその剣ともバランスがとれるだろ。もちろんお金は私が持つから安心しろ」

「いや、さすがにそういう訳には……」

「これぐらいしないと私の気がすまないんだ。頼むから受け取ってくれ」


 遠慮したい所だけど金銭的に正直有難い。

 ここで買って貰った装備をカノンかエルに使わせるのもいいな。……流石に不義理か。


「わかりました。それではありがたく頂戴いたします」

「おお、ならこれとこれとあとこれなんかもいいな」

「も、もうちょっと安そうなのでお願いします」


 フィアさんが手に取る物は明らかに高そうなのばかりだ。この人どんだけ金もってんだ?

 店の品でなるべく安そうな装備を選んで買い、試着室で着替えて店を出た。


 カザマ ハルキ 16歳 男

 ソルジャー Lv16


 武器【リーフブレイド】


 防具【防刃のライトアーマー】【微力のグローブ】【シューズ】


 フィアさんは他に靴と装飾品も買って一式揃える気だったが流石に遠慮した。

 これだけでも金貨8枚だ。これ以上出させられない。

 ちなみに【俊足の鉤爪】は売ったら金貨6枚だった。


「本当にそれだけでよかったのか? まだ欲しければ言ってくれれば買ってやるぞ」

「いえ、これでもう十分ですから」

「そうか……」


 なんで残念そうなんだ? この人は人をダメにするタイプだったか。


「と、ところで君の私への接し方なのだが……。最初の時みたいに雑な感じでもいいんだぞ」

「…………」


 ん? なんか変な事言った気がしたがあれか? もっと砕けた感じ、フレンドリー的な事かな。


「自分より年下の子にあんな扱われたのは初めてだったが何やらクルモノがあるな。新感覚だ。今度は蔑む目で言ってくれると尚良い」

「………………」


 変態だーーーーー!!

 フィアさんは顔を赤らめ軽く握った片手を口元に当てている。見ただけなら恋する乙女の様だが発言がいけない。

 いろいろよくしてもらったがこのテには関わらないのが1番だ。


「お、俺まだやる事があるので装備ありがとうございました!それじゃ!」


 俺はフィアさんにお礼を言い走って逃げる。他のアイテムを売らないといけないので嘘は言ってない。


「あ……」


 フィアさんの無意識に向けられた手を俺は気付くことなく走り去った。



 ◇



 その後ギルドに行きドロップしたアイテムを売って結構な金が貯まった。やはり装備品が高く売れたのが大きい。

 これなら無理してダンジョンの深い階層まで行かなくても普通の生活を送るだけなら今のままでも十分だ。


「でな、これが傑作なんだよ!」

「ん?」


 なんだか冒険者のオッサン達がギルドの酒場で騒いでるな。結構離れてるのにこっちにまで聞こえてくる。


「さっき奴隷を連れたシールダーがいたんだよ。盾を持ってたから間違いない」

「プッ、自分の盾があるのに肉の壁が必要か? というか俺ならシールダーになるぐらいなら冒険者を止めるな」

「いえてる。全然攻撃できないのにいるだけ邪魔だ。邪魔」


 ハハハハと周りに奴らも大笑いしている。

 この瞬間自分の考えが甘かった事に気が付いた。カノンがシールダーは人気がない、不遇の扱いをされていると聞いたがここまでバカにされるのか。

 冒険者が連れている奴隷も戦力じゃなくてただの壁にしか思ってないみたいだ。

 こんなのまるでイジメじゃないか! 俺もイジメにあったがそれは学校の一クラス、精々30人程度の人数だ。だが、これはこの世界全体に起こっているかもしれない。

 今話題になっている奴隷を連れたシールダーもエルとカノンに重なってしまい他人事に思えない。いや、本当に彼女達かもしれない。

 この話で(わら)ってる奴ら全員殴り飛ばしたい気持ちをグッと堪えながらギルドを出た。

 ここにいる奴を殴った所でなんの解決にもならない。なら俺ができる事は彼女達を誰にもバカにされない冒険者に育てる事だ。その為の必要な情報は俺が持っている。

 俺はイジメにあって逃げてしまったが彼女達は落ち込んでも逃げずに冒険者をやっている。

 そんな彼女達にイジメにあっていた俺だからこそ力になってあげたいんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ