不意討ちと勘違い
「次は私達の番ですね。頑張りましょうエルさん」
「ん」
やっぱりやるのか。まぁステータスやスキルだけでも戦えるけど体さばきや武器を使う技術はあった方がいい。これは模擬戦や戦闘でしか身に付かない。
そう考えれば無駄と言う訳ではないか。
2人に急かされるままスパイダーが2体いる所へ進む。
スパイダーLv10
スキル【粘糸】
スパイダーLv10
スキル【粘糸】
ヤバッ、2体共この階層で出てくる魔物の最大レベルじゃねーか!
【サーチ】は魔物や人の場所がわかるけどそいつの名前やレベルはわからない。だからたまに強い奴が複数出てくる時があるのが欠点か。
「カノン、エルあの2体は糸を出して来るから気をつけろ」
「はい。【プロテクション】!【挑発】!」
【挑発】を使った事でカノンにターゲットが集中し、1体のスパイダーが一直線に糸を飛ばしてくる。
スパイダーが普通の蜘蛛より大きいためか糸も思ったより太いな。
「そんなの効きません……きゃぁ!」
盾で受け止めたはいいが糸が張り付いてしまい、盾を奪おうとスパイダーが糸を引っ張りだした。
カノンは踏ん張って取られないようにするがこのままでは隙だらけだ。
「【ウィンドボール】」
カノンを助けるため盾を取ろうとするスパイダーにエルが魔法を放つ。
「っ! 2人共上!」
「え?」
「?」
エルが魔法を放つと同時にもう1体のスパイダーが上に向かって広範囲に糸を出していた。
スパイダーと引っ張り合いをしていて動けないカノンはもちろん攻撃をしていたエルも【粘糸】をモロに浴びた。
おいおい、あんな使い方もするのかよ。つか、頭がいいと言うか知能が高いのか連携がスムーズだな。
「ベ、ベタベタします~」
「……気持ち悪い」
粘着性のある糸が2人の動きを阻害してなかなか動けないようだ。その隙に2体のスパイダーが近付いて来る。
「俺も加勢するぞ【フレイムストーム】!」
炎の竜巻が2体を呑み込むがまだ健在のようだった。
ちっ、階層を降りるたび魔物も強くなってるため【シャイニングフォース】のバフなしじゃあ1発で倒せないか。
「【ファイヤーボール】」
「【ウインドボール】」
各個撃破しようと単体魔法を使ったらエルがもう1体を攻撃して倒した。
最初の魔法はハズしてたから最短で2発か。
「……さっきのお返し」
スパイダーの糸をベッタリ付けながらVサインをする。
あれ? スパイダーが消えても糸は消えないのか。俺も水系の魔法で濡れたらそのままだったしそんなものかと割り切る。
あまり効果はないと思うが2人にアイテムボックスからタオルを出し【ウォーターウォール】で湿らしてから渡す。
「まだ少しベタベタしますね……」
「……早く着替えたい」
自分の着替えならアイテムボックス内にあるけど、さすがに2人のは入れてない。
この階層ボスまで行きたかったけどこのまま進むのも嫌だろうし。
「あー、なら今日はここまでにして帰るか。来た道を戻れば魔物も少ないし早めに帰れる」
「う~~。すみません」
「……むう」
2人ももう少し進みたかったのか残念そうに答えた。
帰る途中に出てきたスパイダーは俺とエルの魔法で片付ける。次は【粘糸】に気を付ければカノンとエルだけでも問題ないはずだ。
ダンジョンから出たらまだ日没まで時間がありそうだ。
武器屋とギルドに行くついでに他の店にも行ってみるか。あ、でもカノンとエルは早い着替えたいんだっけ。まぁ、1人で行けばいいか。
リスターバに着いたが戻る途中でハウンドドッグの群れがいたので蹴散らしといた。
今日のレベルアップはこんな感じ。
カザマ ハルキ 16歳 男
ソルジャー Lv16
カノン 14歳 女
シールダー Lv14
エル 16歳 女
マジックユーザー Lv10
まあレベリングは上々かな。
「俺はギルドで今日のドロップを売ってくるからカノンとエルは先に帰ってもいいぞ」
「っ! ……私も一緒に行く!」
え?どうしたのエルさんすごい食い気味ですが。
「……ご主人様が娼館へ行かないか監視」
ショウカンって……あれですよね。所謂オトナのお店と言う。
え、そんな店あるの? いや、行きませんよ。興味はありますが。
「行かないから安心しろ」
「嘘。……ご主人様いまだに私を襲わないし誘わない。……男の人は定期的に発散しないといけない……私知ってる」
ちょっ、どこからそんな知識を!?
これでも我慢してるんですよ! 本当!
「いいから早く帰りな。カノン、エルを連れて帰ってくれ」
「あはは……」
カノンが苦笑をしつつエルを連れて帰る。ったくエルのアレはどうにかならないのか。俺の精神がガリガリと削れる……。
さて俺も行くか。……娼館も探してみるか。べ、別に入る訳じゃないぞ! ただもしものため場所だけでも知っておきたいだけだ!
◇
まずは武器屋に行こう。売る物も1つしかないからすぐに終わるだろう。
メインストリートから離れているけどいい具合に武器屋っぽい店があった。
店内を見ると武器以外にも防具もある。装備品ならジャンル問わず売り買いしているのかな?
とりあえずここでいいか。
「そこの君」
「ん?」
店に入ろうとしたら声をかけられた。人通りも少ないからたぶん俺だと思う。
「えっと、俺ですか?」
「そうだ。君だ」
フィルトリア=スカーレット 21歳 女
ナイト Lv13
スキル
【スラッシュ】【バイセクト】【インパルス】【ブレイジング】【生命力(大)】【剛腕(大)】【不撓不屈】
俺に声かけた女性は腰まである赤髪でつり目気味の緋色の目。モデルのような長身、見た感じ結構キツそうな性格してそう。
背中には大きな剣があった。ゲームでは大剣のカテゴリーの大きさだ。
ナイトはソルジャーの上位クラスだと思う。それに個別スキルかな? 見た事のないスキルを持っているな。
【不撓不屈】
【HPが減れば減る程STRが上がる】
この類のスキルは数値より何割減るかで計算されるスキルが多い。ある一定のHPを維持しながら戦えば常時バフが掛かった状態だ。
しかも【剛腕】の(大)までありやがる。このスキル編成は完璧に脳筋だな。
【インパルス】
【AGIを上げた状態で敵1体に一直線に攻撃する】
【ブレイジング】
【自身のHP・STRを一定時間上げる】
ここら辺はソルジャーかナイトの習得スキルだな。
「こんな所で何をしている?」
「何って使わない武器を売ろうとしてただけですが」
初対面なのにキツめな言い方だな。やはり見た目通りの性格か。
「…………売る武器はその腰に下げた剣の事か?」
「これは俺が使う物。売るのはアイテムボックスの中にある。なんなんだいきなり、用がないなら俺はもう行く」
「え! ちょっ、ちょっと待ってくれ」
彼女は品定めするように俺を見てくるのでついつい言葉使いが乱暴になってしまった。
俺が再度店内に入ろうとするとまた彼女が呼び止める。
「だからなんだよ」
「そこは盗品でも買い取る店だから適当な値で買い叩かれる可能性が高い」
「え?」
なんでも装備品の釣り合いが取れてない俺を見てもしかしたら冒険者を装った盗みを働く者と思った彼女は俺を尾行していたらしい。しかもその俺が盗品でも買う店に入ろうとするから声をかけたみたいだ。
「本っ当ぉ~~に、すまなかった」
「もういいですよ。盗賊から奪ったにしても盗品には変わりませんし」
そこら辺はギルドを通してるので問題はない。その事を説明すると彼女はさっきから謝りっぱなしだ。
防具は初心者用なのに武器だけ立派ならそんな考えにもなるか。そろそろ防具も新調するかな。
「そういうわけにはいかない。なにか罪滅ぼしをさせてくれないか?」
「そんな大袈裟な……。あー、ならちょっとの間パーティーに入ってくれればいいです」
これで彼女のスキルが手に入る。進んでダメージを受けたくないがそれでも強力なスキルだ。
「わかった。ならダンジョンへ行くか?それとも近場で魔物を狩るか? 最近魔物が増え出していてな。申し遅れたが私の名はフィアだ」
フィア? 【鑑定】ではフィルトリアってなってるけど、まあいいか。
「俺はハルキといいます。もう大丈夫です。俺はアイテムを売らないといけないのでこれで失礼します」
パーティー加入=魔物狩り、になっているのか今から戦闘に行こうとする彼女もといフィア。
俺の目的はスキルだからその場で遠慮する。
「待て待て待て。本当にちょっとだな。こんなのでは罪滅ぼしにならない。……そうだ付いて来てくれ」
「は? うわっと!」
さっさと離れようとする俺の腕を掴みフィアは無理矢理進んで行く。
着いたのはメインストリートから少し離れた店だ。看板もないので何の店なのかもわからないが。




