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2人の戦闘と風属性

 今俺達が潜っているリスターバ近くのダンジョンは約4月前にできて今では24階層まで攻略が進んでいる。なのでリスターバのギルドへ行けばその階層までの階層ボスと出現する魔物がわかるようになっている。

 ……文字の読めない俺以外は。


「カノン1階層に出てくる魔物ってなんだった?」

「1階層はシュガーアントの1種類だけですね」


 アントってたしか蟻の事だっけ。普通の蟻が魔物扱いされる訳ないし、やっぱり大きかったりするのかな。

 嫌な予感を感じながら単体でいる所に向かって進む。


「2人とも次の角から魔物がくる。今回は1体だけだから俺の魔法で倒すからカノンは前に出ないように」


 わかりました、とカノンが返事をしてすぐに少し離れた角から細長い足が見えてきた。


 シュガーアント Lv6


 うわわゎゎゎ。これはダメだ。

 今まで見たデカい猪やら猟犬の大群とは違うベクトルの恐怖がそこにはあった。

 つーかキモい。なんだよ大型犬程の大きさの蟻って!ゲームの画面越しでならいいけどリアルでこれはキツイ。


「ハルキさんどうかしましたか?」

「い、いやなんもない」


 エルは当然ながらカノンも気持ち悪がってないようだしこの世界ではこんなのがいるのもあたりまえなのか。

 次は接近戦をしてみようかと思っていたがあんなのに近づきたくないので全て魔法で倒そうと決めた。


「【ファイアーボール】」


 まだこちらに気づいていないシュガーアントに火の球をブチ当てる。結構レベルが上がってきたけどまだ一撃では倒れないらしくシュガーアントは怒ったようにこっち向かって走って来た。

 げっ、思ったより速いな。とりあえず新しく覚えた魔法を使ってみる。


「【アースウォール】」


 魔法を唱えると地面から壁がせり上がって来てシュガーアントはその壁に激突した。

 だがこちらの正面に壁ができたためこっちも攻撃がしづらくなってしまった。これはもうちょっと使い所を考えないといけないかな。

 めんどくさいので範囲魔法の【フレイムストーム】を使い倒した。とりあえずここの階層では魔法二発で倒せる事がわかったからいいか。


【砂糖】


 シュガーアントを倒し残ったのは角砂糖だった。

 砂糖か。魔物の名前からして予想はしていたけど、この角砂糖デカイな。砕かないとコップにも入らないぞ。


「…………」


 俺が角砂糖を拾うのをエルがジーと見ている。

 ん、なに? どうかした?


「……ご主人様、私達必要?」


 ああ、うん。やっぱりそう思えるか。エルにはスキルを覚えてもらうまではおとなしくしてほしかったけど、まぁいいか。


「なら次からはカノンが前に出て、横からエルが攻撃。危なくなったら俺がサポートするから」

「はい、わかりました」

「わかった」


 カノンもやる気満々だし、エルもいつもより声に気合いが入ってるっぽい。

 せっかくクラスアップしたのに何もしなかったのが嫌だったのかな?

 でもエルはクラスアップをしたのでLv1に下がっているし、装備品も杖のロッドと 足装備のシューズだけだ。昨日いろいろ買ったせいでエルの装備品まで金が回らなかったからだ。

 だからあまり無茶はさせたくないんだけどな。

 再度1体だけの所に行き様子を見る事にする。

 俺に支援魔法が使えたらいいのだが、今ある魔法は消費MPが多いのかまだに使えないでいる。最大MPを上げるアイテムとかないかな……。


「カノンこのまま真っ直ぐに進んだ所に魔物がいるから今のうちに補助スキルを使っておくといい」

「わかりました。【プロテクション】」


 スキルを使ったカノンの体に白いオーラが現れた。俺が使える【バイセクト】も白いオーラだった。

 光属性の【シャイニングフォース】は黄色だったので属性で色が違うのかもしれない。【バイセクト】【プロテクション】もなんとなく無属性っぽいからな。


「たあっ!」


 自分を覆ったオーラを確認したカノンは見えてきたシュガーアントに肉薄して盾で殴り付けた。

 威力はないがこれでシュガーアントの注意はカノンに向いた。


「……っ!」


 シュガーアントの体当たりを盾で受け止め、その隙に遅れて接近したエルがシュガーアントを側面からロッドで殴り付ける。

 ロッドは木製なので折れたりしないか内心ヒヤヒヤしている俺とは裏腹にエルは気にせず殴り続ける。

 時折シュガーアントがエルに攻撃しようとするがカノンが盾で押さえ付け攻撃が届かない。

 最初はいろいろ問題があったカノンだが今では立派な盾役だ。これでスキルさえ充実していたら文句無しなんだが……。そこはレベルアップしだいかな。

 エルとたまにカノンが殴り続けること数十回でやっとシュガーアントは倒れた。

 ふむ。1体だけなら2人だけでも充分戦えているな。これなら複数と戦っても問題ないだろう。


「よし、それじゃあ次は複数いる所に行ってみよう」

「う……。私まだ複数の敵を相手に捌ききれるか自信がありません……」


 前回のハウンドドッグ戦では知らないが今まで1体ずつしか任せてなかったからな。


「すぐにできる事でもないし少しずつ馴れていけばいい。何かあったら俺がサポートするし」


 深い階層へ行けばどのくらいの数の敵が出てくるかわからないからな。早いうちに複数の敵に囲まれても対応できるようになってもらいたい。

 という事で次は3体いる所に向かっている。


「念のため最初に俺が魔法を使うからその後に2人で戦ってくれ。いくらかダメージを与えておけば2人でも大丈夫だと思うから」

「わかりました」

「……ん」


 3体のシュガーアントが見えてきた時範囲魔法の【フレイムストーム】を放ち、炎の竜巻が消えた時カノンが肉薄し攻撃する。


「…………」

「…………」


 はずだったがシュガーアントはその1撃で倒れてしまった。シールダーの攻撃力は低くあまりダメージは与えられない。それほど【フレイムストーム】でダメージを与えてしまったらしい。

 訂正、魔法2発ではなく1発と少しだった。ちなみにさっきので俺のレベルが上がってしまったのだが……。


「……ご主人様、私達必要?」


 エルだけじゃなくカノンからもジト目で見られる。いや、君には説明したでしょ!

 2人にはレベリングをして貰いたいと言ってもレベル自体知らないから通じないだろうし……。

 しばらく2人の視線が痛かった。



 ◇



 俺のレベルが上がった事により火属性の魔法なら1撃で倒せるようになってしまったので、最初に2人で戦ってもらい危なくなったら後退、俺が殲滅という流れになった。


「エルさんそろそろ私が攻撃するので離れてください」

「……ん」


 2人の戦闘をしばらく見ていたら少しわかった事がある。

 魔物のターゲットは攻撃頻度で変わるみたいだ。ゲームで言うヘイトみたいに一定数攻撃したらエルにターゲットが変わった。

 だから定期的にエルが退きカノンが攻撃しなければならない。

 そのカノンは今3体のシュガーアントと戦っている。元々HPと防御力の高いカノンが【プロテクション】でさらに防御力を上げているためダメージは少ないらしく、3体に囲まれてもなんとかなっている。時折俺が【ヒール】を使い回復さしているし、もしものために買った回復薬も持たせている。

 薬草を持ってはいたが薬草をそのまま使う事は少なく【調合】のスキルで回復薬か魔力回復薬にしてから使うのが一般的らしい。なので昨日の買い物の時に買っておいたのだ。

 カノンが敵をひきつけエルが杖で殴って攻撃し時間は掛かるが二人でもちゃんと戦えている。

 エルもLv4になったしそろそろスキルを覚えてもいいはずだ。

 カノンがLv5でスキルを覚えたからLv5が最初の習得スキルが手に入る条件だと俺は睨んでいる。


「ハルキさん、これドロップです」


 戦闘が終わったカノン達が戻って来た。何故かカノンが嬉しそうだけどどうかしたのか?


「それと私新しいスキルを覚えたんです」

「え?」


 カノン 14歳 女

 シールダー Lv10


 スキル

【プロテクション】【挑発】【鉄壁(中)】【生命力(大)】


 あ、本当だ。Lv10になって【挑発】を新しく覚えてる。

 ゲームでよくある敵をひきつけ効果があるスキルだ。これでカノンにターゲットが集中するから攻めやすくなるな。

 後はエルがスキルを覚えたらこの階層のボス部屋に行ってみよう。

 その後、数体のシュガーアントを倒したらエルがレベルアップした。


 エル 16歳 女

 マジックユーザー Lv5


 スキル

【ウインドボール】【魔力強化(大)(中)】


 エルは風属性の魔法を覚えたか。まだ覚えてないスキルだからコピーしておこう。


「…………」


 エルの奴スキルを覚えたのに相変わらずリアクションなしか。【鑑定】で見えるけど報告ぐらいはしてくれ。


「……ごめんなさい」

「エル?」


 スキルを覚えたはずなのにカノンと対照的に悲しそうな顔をするエル。


「いきなりどうしたんだ」

「……私風属性だった。……せっかくクラスアップさせてもらったのに……ご主人様の役に立てない」


 俯きながらエルは少しずつしゃべりだした。

 おいおい、自分の属性が風だったってだけで役に立てないと言うのはどうかと思うぞ。


「ハルキさん風属性は前衛のシールダーと同じでマジックユーザーではなりたくない属性なんです。なんでも4属性の中で1番威力が低いらしく……」


 またか。ダメージソースにならないだけで不遇の扱いかよ。

 相手にあわせて弱点の属性を使ったり、使い方しだいでどうとでもなるはずなんだ。

 戦略も立てずに力でゴリ押しするだけならきっと何処かで限界がくる。


「エル、カノンはシールダーだ。おまえは一緒に戦ってみて役立たずに思えたか?」


 ずっと俯いていたエルが顔を上げ首を横に振る。その時気づいたがエルは涙目になっていた。


「魔物をおさえていたから攻撃しやすかったし、途中から魔物があっちにばっかり行くから楽だった」


 カノンが【挑発】を覚えてからずっとひきつけてくれたからな。

 カノンの負担が増えてしまうがその分他が攻撃に集中できるため戦闘時間は短くなる。


「なら風属性でもちゃんとやれる事かある。だから2人で上手く使えるやり方を考えよう」

「……私捨てられない?」


 そうか、役に立たない奴隷は捨てられるのか。たぶん売られたりするんだろうな……。その発想はなかった。

 俺に捨てられると思ったから泣いていたのか。最初こそはどうしようとも思ったけど今ではちゃんとした仲間だ。捨てるはずがない。


「大丈夫。捨てたりしないからもう泣くな」


 と、つい年下の子をなだめるようについ頭を撫でてしまった。


「……ん」


 嫌がれるかと思ったけど案外嬉しそうなのでもうしばらく撫で続けた。


「エルさんだけズルイです」


 なんで君がむくれるんだ?

 何故かカノンの頭も撫でる事になった。ワケわからん。

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