プロポーズ?
「今日はダンジョンに行くつもりだけど2人は他にやりたい事ってあるか?」
エルの作った軽めの朝食を食べながら2人に聞いてみる。
「必要な物は昨日買いましたから私は特にないですね」
「……水、あとご飯」
「水は魔法で出すから大丈夫。昼飯はギルドの食堂で買ってダンジョンで食べよう」
夕食の材料は帰りに買えばいいか。
「それで、どちらのダンジョンに行く予定なんですか?」
今いるリスターバの近くには2つのダンジョンがあり、聞いた話では魔物の強さが違うみたいだ。なんでもできたばかりのダンジョンの魔物はそこまで強くないらしく、ランクの低い冒険者には程よい狩場なのだそうだ。
「ダンジョンってそんなにできる物なのか?」
「いえ、頻繁にできる訳ではないのですが、昨日はなかったのにいつの間にかできていたというのがほとんどなので人が通らない所では発見が遅れてしまうんです」
なるほど、ダンジョンの出現ポイントはランダムで早く見つけられるかは運しだいか。
「ん~、エルがクラスアップしたばかりだけど普通の強さのダンジョンへ行こうと思う。エルもそれでいいか?」
Lv1で魔法もまだ覚えてないから戦闘には参加させられないが、早くレベルアップさせるにはこっちの方が経験値がいいはずだ。
「ん、大丈夫。問題ない」
「ならみんなの準備が出来次第に出発ということで」
◇
カザマハルキ 16歳 男
ソルジャー Lv10
カノン 14歳 女
シールダー Lv8
エル 16歳 女
マジックユーザー Lv1
自分達のレベルをチェックして出発する。
俺達が向かうダンジョンはリスターバから20分程歩いた街道沿いにあった。
前回入ったダンジョンと同じで土が盛り上がりその中には下へ降りられる階段がある。ダンジョンの入口は全部同じ構造なのかな?
前回と違うのは入口に人が立っているところだ。
「なんであの人はこんな所にいるんだ?」
「たぶん降ろし屋の人ですね」
「降ろし屋?」
聞き慣れない単語に思わず聞き返す。クラスじゃあないようだけど。
「スキルを使ってダンジョンの行きたい階層へ連れて行ってくれるんです。ただ料金が降りる階層ごと銀貨1枚掛かりますからお金がないと深い階層まで行けませんけど」
便利だけど結構ぼったくるね。いや、階層ボスと戦わずに済むなら安い方なのか?
今回はエルのレベル上げが目的だけど下手に階層を降りても危険だしな……。
「降ろし屋の人って毎日いるのか?」
「そうですね。魔物に襲われる可能性もありますけど楽に稼げますから、人によりますけど大抵いると思いますよ。あ、でも夜は危ないのでいないはずです」
なら今日は普通に潜って明日にでもコピーすればいいか。
俺達がダンジョンに入るとき降ろし屋が声をかけてきたが丁重に断ってから中に入った。
「あ、そうだ。エルにこれを渡しておく」
俺は左手に着けている指輪をエルに渡す。
この指輪は成長促進の指輪と言い、獲得経験値を上げてくれる装備品でレベルを上げたいエルに着けさした方がいいだろう。
「……プロポーズ?」
「ふぇ!?」
指輪を受け取ったエルがすっとんきょうな事を言う。つか、この世界にもプロポーズで指輪を送る風習があるのか?
「んなわけあるか。カノンもエルの冗談を真に受けるな」
というか会って数日でそんな大それた事できるか! そういうのはお互いにもっとわかりあってだな……。
「……違うの?」
首を傾げて再度聞いてくる。
最初こそは汚れやらみすぼらし格好でわからなかったがエルは綺麗な容姿をしている。そんな彼女にプロポーズなどできる度胸は持ち合わせていない。
……自分で言ってて悲しくなるな。話を進めよう。
「違う。その指輪を装備するとレベル……いや、スキルが早く覚えれるはずだ」
カノンがLv5になったときにスキルを覚えた事から俺は一定のレベルになるとスキルを覚えれると予想している。
レベルを知らない彼女達にはこう言った方がわかりやすい。
「……スキルが早く」
俺の話を聞いたエルはさっそく着けた指輪を眺めていた。ところでなぜ左手の薬指にはめたのかはスルーした方がいいのか?
「うぅ、エルさん積極的過ぎます……」
そしてなぜかカノンがエルを恨めしい目で見ていた。
そんな目で見てやるなよ。効果は違うけど君にも指輪と腕輪を渡したろ。
「すごいアイテム……。ご主人様お金持ち?」
「ん? いや、これはドロップした装備品だよ」
確かウッドゴーレムていう魔物が落とした物だったかな。
「それってユニークモンスターじゃないですか!?」
「ユニークモンスター?」
なんでもごく稀に出てくる突然変異の魔物で、ベースの魔物の何倍も強い魔物のようだ。
魔物のドロップで装備アイテムを落とすのはそのユニークモンスターと階層ボスだけで特殊なレアアイテムが多いらしい。
「ちなみにカノンに渡した2つのアイテムもそのレアアイテムだからな」
「ふえぇぇ~~。なんでそんな貴重なアイテムをポンと渡せるんですか。2つ共レアアイテムなんて聞いてないですよ……」
ぶっちゃけ、そこまですごいと思えないアイテムだったから盾役になってもらう代わりに渡しておこうと思っていた事は内緒にしといた方がいいか。
「パーティー強化には必要な事だし気にするな。それより早く進もう。今日中に1階層は攻略したい」
そうして俺達は足を進めた。




