都市と後衛
投稿後大筋は変わりませんがエルのクラスアップ時の会話を少し変えました。
「ふぁ~~。ここがリスターバですか。地図で大きい所とは知っていましたが想像以上に大きいですね」
「…………」
都市はクラレットの町より大きな外壁に囲まれて中の様子が見る事ができないが広さも町より3、4倍はありそうだ。
都市を見てカノンは開いた口が塞がらないといった感じだがエルはいつも通りノーリアクションだ。
彼女はあまりしゃべらないし、なにを考えているのかわからないな。今度ちゃんと話してみようかな、などと考えながらリスターバの門をくぐった。
「ありがとう。今回の冒険者は本当に優秀だな。帰りの護衛も頼みたいぐらいだ」
今回のクエストは片道だから受けたので丁重にお断りしておく。
さて、まずはギルドに行ってクエストの報告とエルのクラスアップだな。
「君達もギルドに行くなら一緒に行くかい?」
ストレさん達もまずはギルドに行くらしく場所を知らないから丁度いいか。
もしかしたらエルが来た事があって知ってたかもしれなし、わざわざ一緒に行く必要もないと思うけどいいか。
◇
中央都市リスターバは円が2つずれて重なり、上層と下層で別れた形状をしている。
上層には王族、貴族などが住む居住区があって俺達低ランクの冒険者など下々の者が入れる場所ではないらしい。下層は平民の居住区や市場など飲食店があり、日用品を買える店が多々ある。
下層の東側にギルドや武器、防具屋など冒険者用の店舗が多く、西側には居住区や店など暮らしていくのに必要な物が密集しているようだ。
などとリスターバの説明を聞きながら歩いているとギルドに到着した。
さすがは都市のギルドだけあってクラレットのギルドの2倍は大きい。
「ドロップ品を買い取ってくれ」
ストレさん達は今回のクエストで倒した魔物のドロップ品をカウンターに出しながら何故かこちらをチラチラ見ている。
「こうゆう複数のパーティーが一緒にクエストをしたらドロップも折半です。なのでわかりやすいようにギルドでの買い取りを一緒にするのが一般的です」
俺がつっ立ているとカノンが小声で教えてくれた。
なるほど。それでわざわざギルドに行くのに誘ったのか。
「一緒にこのドロップもお願いします」
カノンの話を聞き俺もリュックサックからドロップ品を出す。
今回のドロップはアイテムボックスを使わずに全部リュックサックに入れている。これもあまり目立たないようにするためだ。効果があるかは知らないけど。
ドロップ品の買い取り金額の合計を俺とストレさんで折半し、さらにそこから俺とカノンで分けた。
俺達のパーティーの方が目に見えてドロップ品が多かったのに折半とは割りに合わないと思いつつもルールだからしょうがないと割り切った。
複数のパーティーでのクエストは俺にはメリットよりデメリットと方が多いな……。スキルコピーがやりやすいけど積極的には受けたくないと思いつつストレさん達と別れた。
「この人に初期のクラスアップをお願いします」
ストレさん達と別れてエルのクラスアップのため再度ギルドに入る。
エルは火属性のマジックユーザーと言ってるから別れた後でクラスアップをしようと決めていたためだ。
「……承りました。では、前衛、後衛どちらのクラスアップがご要望でしょうか?」
「後衛でお願いします」
「え?」
受付嬢さんは俺の答えに何故か驚かれた。
俺何か変なことでも言ったかな?
「あの……、その人は奴隷ですよね?」
「そうですが……」
ああ、そういえば冒険者は奴隷を前衛にして無理矢理壁役にするんだっけ。だから受付嬢さんは嫌な顔をしたのか。俺も仕事とはいえそんな危険に晒される事はしたくないな。
「後衛で構わないので速くクラスアップをお願いします」
「し、失礼しました。では、こちらにどうぞ」
受付嬢さんは慌てて案内しようとする。
「…………」
だがエルは俺を見ながら動こうとしない。
どうかしたのだろうか? 今更戦いたくないと言われても困るが。
「……本当に後衛でもいいの?」
「ん? 前衛の方がいいか?」
「……ご主人様が言うならそれでもいい」
いや、壁役はカノンがもういるから必要ないから。
「パーティーのバランスを考えてエルは後衛の方が嬉しいな」
「……わかった」
理由を伝えたらエルは素直にクラスアップに行ってくれた。
これでもう少し感情を表に出してくれたらいいのだけど……。
「エルさん最初に会ったときより柔らかくなりましたね」
「……そうなのか?」
わからないんですか? と聞かれるが会って数日の女性の雰囲気なんてものが俺にわかるはずないだろ……。
などと雑談をしながら待っているとエルが受付嬢に連れられて戻って来たので早速鑑定で見てみる。
エル 16歳 女
マジックユーザー Lv1
お、クラスはマジックユーザーになったか。
ただマジックユーザーには4属性あるが、スキルを見ないと属性がわからないのが難点だな。 Lv1のエルがスキルを覚えてるはずのなく、できれば俺が覚えていない属性である事を願いたい。
「……マジックユーザー」
そう言うなりエルはギルドカードを見せてきた。
いつもの無表情だったが心なしか嬉しそうだ。カノンの言うとおり少しずつは馴れてきたのかな。だったら彼女を助けた身としては安心した。
エルのクラスアップが終わったから後は家だな。一軒家を買うのは無理でも借家ぐらいは借りたいところだ。
◇
「やっぱり今の所持金で家を買うのは無理か」
家を買うにしても借りるにしても仲介屋か不動産屋に聞かないといけないらしいのでギルドの受付嬢さんに場合を聞きに行ってみると家を買うには全然足りなかった。
デスヨネ~。うん、予想はしていた。こんな子供でも買える家なんてあるわけないと、人生そう甘くない……。
「なら借家でなるべく広くて安い所はありますか?」
「ふむ……でしたら丁度いい物件がありますよ」




