護衛クエスト
そろそろ時間なので待ち合わせ場所の門の前に行くと50代の男がいて、その後ろには大きな屋根付きの荷馬車が止まっていた。あの人が依頼人のようだ。
「私は防具屋のブレンだ。もう1組冒険者達が来るからもう少し待っていてくれ」
「晴輝です。よろしくお願いします。こっちは仲間のカノンとエルです」
依頼人のブレンさんと握手をして自己紹介をしてパーティー申請をする。
前回護衛をした道具屋のハックさんと冒険者のガルドさんがパーティー申請してくれたので今回もパーティーに入ってくれるはずだ。
「悪いがもう1組も3人のパーティーだからその人達と組んだほうがいいぞ」
ちっ、パーティーの人数上限は6人だからしょうがないが、それでもこの人のスキルも欲しいんだけどな……。
「ならその人達が来るまででいいので念のためパーティーに入ってください。いつ何が起こるかわかりませんし」
俺は無理矢理に理由を付けてパーティーに誘ってみる。ブレンさんも俺に気圧されたのかなんとかパーティーに入ってくれた。おっしゃー! スキルゲットー!
【防具製造・強化】
冒険者で生産系のスキルを持っている人は少ないから手に入れれる時に手に入れないとね。
しばらくして3人のパーティーが近づい来た。
前衛クラスでソルジャーLv13の20代後半の男性と後衛で土属性のマジックユーザーLv12の男性、ヒーラーLv10の女性、2人供20代前半だ。
「防具屋のブレンだ。今回はよろしく頼む」
「Eランクの冒険者、ストレだ」
「ゼストです」
「キリナです」
パーティーのリーダーなのか、ソルジャーの人が自己紹介をした後にマジックユーザーとヒーラーの人も名前を言う。
ギルドランクは俺とカノンと同じEか。レベルは俺達より高いけどスキルの差かな?
俺達のレベルは俺Lv6、カノンLv4、エルLv3だ。
俺達も自己紹介をしてブレンさんをパーティーから外し、ストレさん達にパーティー申請をする。
「3人とも若いな。本当にEランク以上なのか?」
「彼女は違いますが俺達2人はEランクですよ」
俺とカノンはギルドカードを出して見せる。ストレさん達は驚きながらも納得してくれた。
このクエストはEランク以上じゃないと受けれないからその確認だろう。
エルはGランクだけどパーティーの半数が指定ランク以上なら問題ない。
ストレさん達をパーティーに入れさっそく【スキルコピー】をさせてもらった。
個別スキル以外にもまだコピーしていなかった土属性魔法が手に入った。
今回みたいな複数のパーティーでのクエストはスキルコピーしやすいから今後もやっていこうかな。
◇
荷馬車はあまり整備されていない森の中の道を進む。
馬車の護衛は交代制で今は左側に俺とエル、右側にカノンが配置してストレさん達は荷馬車内で休んでいる。
今の所、近辺に魔物はいないけど護衛をしてますと形だけでもやらないとね。
「……ご主人様、見張りだけなら私だけでもできる。休んでいい」
「いや、パーティーで護衛をするから俺だけ休む訳にはいかないよ」
「……そう」
エルは俺の奴隷だから気遣って言うのか、無表情なのでよくわからない。
嬉しいけど最初にパーティーでの交代制でやると決まったから断っておく。
エルの装備は盗賊から手に入れたアイアンソードを持たせて、他はシューズだけだ。
武器を渡した時は何故か首をかしげられたが無理矢理に押し付けた。カノンも何も言わないので変な行動ではないだろう。
それとカノンも足装備をサンダルからシューズに変えている。
都市に着いたらエルの防具を買うか作るかしないとな。
しばらくするとレーダーから魔物がこちらに向かって来ているのがわかった。
「カノン、こっちに魔物が3体接近中。戦闘準備だ」
「はい」
「どうかしたの?」
カノンに注意を促していると荷馬車からヒーラーのキリナさんが声をかけてきた。
魔物がいると言ったら私達も行きましょうかと言い出したが、たった3体なので遠慮しておく。
エルには馬車の護衛と残し、俺とカノンで魔物を倒しに森の中に入る。
「新しい武器を試したいから2体は俺が倒す。カノンはもう1体を頼むな」
「まかせてください。ハルキさんから貰ったこの盾で役立ってみせます!」
俺の腰にはいつものブロンズソードではなく、盗賊団のリーダーが使っていた片手剣、リーフブレイドがある。
剣身は薄緑で鍔の所に緑色の石が埋め込まれている風属性の剣だ。
カノンには昨日採掘した鉄鉱石で作った鉄の大盾を渡してある。
いろいろ試した結果、アイテムボックス内のアイテムも【製造・強化】スキルの対象でドロップアイテムが素材として選択できた。
選択できないアイテムは文字が灰色になりわかりやすい仕様だ。
にしても俺が両手で持つので精一杯だったのにカノンは軽々持ってやがる。専用武器だからそこら辺のデメリットがないのか?
そんな思考を横に流し、そろそろエンカウントする魔物に意識を向ける。
3体のウェアウルフが一斉に襲ってくるがカノンが1体を盾で受け流し、俺は1体を避け、もう1体を蹴り飛ばしリーフブレイドの付与スキル、斬撃を飛ばす【エアースラスト】で追撃する。
刀身と同じ薄緑色の斬撃が一直線にウェアウルフを切り裂き、その2発でウェアウルフは煙になった。
俺は残った1体に集中する。カノンがもう1体を抑えているからやりやすい。
ウェアウルフの爪を剣の腹で受け、蹴りを入れ態勢が崩れたところを斬り戦闘が終わる。
フロンズソードより攻撃力が高いためすぐに倒せたな。スキルも直線に飛んで行くから扱いやすい。
カノンの方を見たらあちらも終わっていたようだ。
「おつかれ。盾に違和感とかないか?」
「はい。前の盾より重さも少し軽くなって頑丈で衝撃も少なくとても使いやすいです」
防御力が上がったのは当然だが、衝撃が少なくなったのはただカノンの体捌きや盾の熟練度が上がったからだと思うが。攻撃力はやはり盾だからなのかあまり上がってないようだ。
「それとスキルを覚える事ができましたよ!」
「本当か! やったな!」
カノンのステータスを見るとLv5に上がり【プロテクション】というスキルを覚えていた。
効果は自身のVITを上げるみたいだ。
壁役にはありがちなスキルだな。これでカノンの防御力にも磨きがかかりパーティーの要になりそうだ。
俺は嬉々として残ったドロップを持って護衛に戻った。
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戦闘後の会話、スキル習得を加筆しました。




