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第12回『山岳地帯に潜む大蛇・多頭蛇5』

 しかし何故、彼らは臓器を二つずつ持っているのでしょうか。



「まあ、単純にあれだけ体が大きいと、一つの臓器では賄いきれないのでしょう。

 20mの体を動かす心臓ともなれば、相応の大きさが必要になってきます。そうなると必然的に体が太くなり、獲物に近づく際に邪魔になってしまいますからね」



 多数の頭を使って広い視野を確保し、そのうえで岩陰を使って獲物に近づく。

 そんな多頭蛇の狩猟スタイルを支えているのは、3mほどという体長比べて非常に細い体です。もしひとつの心臓で体を動かそうとすれば、体の太さは5m以上になってしまうでしょう。


 なるほど、自分の狩猟スタイルに合うように体の構造を作っているわけなんですね。

 ですが、そのためにわざわざああして隙を晒す食事スタイルになってしまっているのは、本末転倒に見えてしまいますね。



「そうですね。まあ、やはりモンスターといえども彼らも生物ですから。何事も完璧……というわけにはいかないでしょう」



 博士の解説を聞いている間にも、多頭蛇はオーガの体を少しずつ丸呑みしていきます。

 既に肩と膝の両方は呑み込まれて、じわじわと体の中心部へと2つ主頭の口が迫っていくのが見えます。しかし、ここで取材班はあることに気付きました。


 頭とつま先の両方から吞み込んでいくと、結局体の中心まで呑み込んだところで止まってしまうのではないでしょうか。

 体の口は呑み込むことに特化しており、噛みちぎることには向いていません。そうなると、まさに円を描く形で消化されるのを待つことになってしまいます。



「いいところに気付きましたね。実際、このままではそうなってしまいます。

 ですが、そこは多頭蛇だって分かっています。ほら、見てください」



 そう促されて多頭蛇へとカメラを戻すと、そこには驚きの光景が広がっていました。

 なんと、多頭蛇の主頭がオーガの腰元と胸元に思いきり噛みつき、そのままオーガの体を思いきり捻じりはじめたのです。一度限界まで左右に捻じると、今度は左右を逆に限界まで捻じる。

 そういった動作を繰り返していくうちに、だんだんとオーガの体がブチブチと音を立てて千切れていきます。


 何度も何度も左右を変えて限界まで捻じることを繰り返し、ついにオーガの体はまっぷたつに捩じ切れてしまいました。

 すると多頭蛇の主頭は、それぞれ自分が咥えていた部分を持ち、ゆっくりと呑み込んでいきます。



「多頭蛇の牙は噛みちぎることは難しいですが、小さな返しが無数についているため、噛みついて固定することは得意なんです。その牙で噛みつき、ああして獲物を体を捩じ切ることで主頭両方で呑み込めるようにするんです」



 確かに捩じ切ってしまえば、主頭両方で獲物を呑み込むことができるようになります。

 しかもこれは、多頭蛇の類稀なる筋力がなせる業でもあるでしょう。20mという巨体が密度の高い筋肉で造られている多頭蛇だからこそ、このような離れ業も可能となるのです。


 そしてオーガの体を全て呑み込んでしまった多頭蛇。

 その体は、今はちょうど呑み込んだばかりだからか主頭のすぐ下あたりが大きく膨れています。



「多頭蛇はああして獲物を呑み込んだ後、暫くはその場で待機して胃袋まで獲物が移動するのを待ちます。

 ですからこのタイミングこそ、多頭蛇を討伐するには最高のタイミングだと言われています」



 実際、我々が撮影している多頭蛇も、オーガを呑み込んだ態勢のままその場を動こうとしていません。

 これは彼らの体が非常に長いため、胃袋に到達するまで時間がかかってしまうのがその理由です。途中で下手に動いてしまうと、せっかく呑み込んだ獲物を吐き出してしまう可能性があるので、動かずジッとしているわけですね。



「ちなみに、彼らの胃袋は身体の中心部に二つ並んで存在しています」



 2つの主頭からちょうど10mの体の中心と言える場所、そこに多頭蛇の胃袋があります。なぜこの場所なのかというと、多少移動の邪魔にはなりますが、メインの攻撃手段である主頭による噛みつきや、体を巻き付ける際にそこまで邪魔にならないから、というのが通説です。


 さらに言うなら、彼らはその長い体を鞭のようにしならせて複数の相手を薙ぎ払う、という攻撃手段も持っています。

 今回のオーガのように一対一の場合は使いませんが、複数の獲物を相手取る時などに見られる行動です。そういった行動の際にも、胃が体の中心にあれば邪魔にはなりません。



「彼らは通常、食べた獲物を1週間ほどかけてゆっくり胃の中で溶かして吸収します。

 その間に襲われた時、敵と戦うことになった時も考えて、体の構造ができているんですね」



 食べる時だけでなく、食べた後のことも考えて作られている体の構造。

 そこはやはり、戦うことが基本であるモンスターだからと言えるのかもしれません。また、彼らは体長20mという巨体から大食漢だと思われがちですが、実はオーガ1体を食べれば1ヶ月は食事をしなくていいほど少食だったりします。

 これは、体長に比べて体が細いため体積が少なく、さらに激しく移動することもないので魔力消費が少ないからと言われています。


 巨体に見合わず、合理的かつ燃費の良い多頭蛇。

 こういった部分もまた、彼らが山岳部中腹で強いと言われる理由のひとつなのです。






読んでいただき、ありがとうございます。

その6へ続きます。


※誤字脱字などありましたら、感想などでご連絡ください。

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