第12回『山岳地帯に潜む大蛇・多頭蛇4』
「多頭蛇の狩りは、毒を持たない蛇と同じです。巻き付いて締め上げ、全身の骨を砕いて相手を殺す。
それからゆっくりと死体を食べる……という形式になりますね」
20mの体でオーガの体にまんべんなく巻き付き、決して抵抗を許さないまま力を強めていく多頭蛇。
すると、次第にオーガの体のあちこちから骨の折れる音が聞こえ、血を吐きながらオーガがもがきます。鉄筋コンクリートさえ易々と折り曲げる力で全身を締め上げられれば、いかに体が頑丈なオーガといえどひとたまりもないでしょう。
必死に逃げようともがくオーガですが、もはや逃げることは叶いません。
おおよそ10分ほど締め上げたでしょうか。
すでに苦痛の鳴き声すらあげなくなったオーガの体から、多頭蛇が拘束を解いて離れていきます。
その場に残されたのは、最初の大柄な体格が半分になってしまったかのように感じるほど、全身の骨を折られてぐにゃぐにゃになってしまったオーガの死体です。
「ああして多頭蛇が獲物の全身の骨を砕くのは、何も殺す手段だからというだけではないんです。
ちゃんと食べる時のことも考えて、ああして骨を砕くという攻撃手段を選んでいます」
食べる時のことを考えて全身の骨を砕く……それが一体どういう意味なのか。
それは、多頭蛇が動きだしたことですぐにわかりました。体の先端にある2つの主頭、多頭蛇はその主頭をオーガの頭と足先へと近づけます。ちょうど体がCの形になるように曲げて、大きく口を開きます。
そのまま頭と足先をそれぞれの主頭が食らいつくと、ボキボキと音を立てて顎が外れていくのがわかります。
なるほど、多頭蛇は普通の蛇と同じく獲物を丸呑みすることで捕食します。その際に飲み込みやすくなるように、全身の骨を砕いで柔らかくしたということなのでしょう。
「その通り、いくら彼らの体が大きく顎を外すことでかなりの大きさまで吞み込めるとはいっても、限界があります。
オーガは身長が5m、体の幅も同じく5mほどと広いですから、そのままでは呑み込むのは大変です」
多頭蛇の体は長さこそ20mと長いですが、体の幅は2mから3mほどとあまり太いとは言えません。
体長が自分よりも大きなオーガをそのまま呑み込むのは、確かに骨の折れる作業になるでしょう。しかし全身の骨を折ってグニャグニャになったオーガの体なら、簡単に呑み込むことができます。
多頭蛇が相手の全身の骨を折るのには、食べやすくするという意味があったわけですね。
「ちなみに、主頭両方で食べ始めるのにもしっかりと理由があるんですよ」
体の先端にある2つの主頭。
確かに食べるだけならどちらかだけで十分な気もします。わざわざ体を曲げて食べるのでは、その分視界も狭まってしまいますから、多頭蛇の有利さを消してしまいかねません。
そんなリスクを冒してまで、彼らが主頭両方で獲物を食べる意味とは何なのでしょう。
「実は、彼らは身体の丁度真ん中から鏡映しとなるように、まったく同じ臓器が存在しているんです」
……驚きの事実です。
多頭蛇は、その20mという巨体の中にまったく同じ臓器を二つずつ持っていたのです。
彼らの体の真ん中には薄い膜があり、そこを中心として鏡映しとなるように臓器が存在しています。心臓や胃も二つありますし、消化器系の内臓もまた二つ。
つまり主頭両方で獲物を食べるということは、それぞれの胃に食べ物を送るためだったわけです。
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その5へ続きます。
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