5:初武器購入
家に帰りつき食卓のテーブルに備え付けの椅子に座る。
そして俺への質問は無駄なのでこの家の家族の説明から始まり国の事、この町の事まで説明を受けた。要約するとこうなる。
家族に関して。
両親共に健在だがそのどちらの祖父母も他界しており生きていない事。
父の名はヴァレン三十五歳。母の名はリーン三十二歳。そして俺には上に兄がおり、長兄はリンズハルト十七歳。次兄はヴァロッサ十五歳。そして妹のリーズ八歳の六人家族。そして当然全員が猫人族だ。
父の職業は交易商並びに雑貨店を経営。現在は交易に出かけており後四日程度経過しないと帰らないそうだ。
上の兄二人は魔物ハンターとなり父の交易に護衛として赴いている事。
そして母と俺と妹は家に残り雑貨店の切り盛りをしている事。
そして国に関して。
国名は獣王国ガロンラルド。現在の国王はガロンラルドの名を引き継いだガロンラルド十六世陛下が統治され、今住んでいる雑貨店兼我が家は、首都であるガーラルド西部に位置している事。
そして国名と同じく獣人が中心の国で他の種族はあまりいない事。
そして現在は女神歴千三百六十五年十月三週の三日目である事。
死亡した翌日にこの体を乗っ取った事が判明していた。
「ねえ、この国に教育機関は無いの? お金は自分で工面するからあるなら行きたいな」
武器さえあれば魔物狩りをして稼げばいい。記憶喪失扱いだが。経済的負担をかけるには忍びない。
「一般常識も奇麗さっぱり忘れているようだし、それを考えれば学校に通う事が最良かもしれないわね」
だよね、賛成してくれると思ったよ。
「それでお金はどの位必要なの?」
「行先次第で大分違うわね。貴族御用たしの難関学校で六年間。それも一括払いで白金貨三枚位かな。
次点で貴族の次男以下と大商家の子供たちが通う五年間の学校で白金貨一枚程度。
そして魔物ハンターの技量のみを教える一年間の学校なら基本無料ね。これは魔物ハンターギルドへの登録と五年間国内でハンター業務を行う事が義務付けられているわね。
十歳から試験を受けられるからテリスト君は来年は受験が可能よ。
そして嬉しい事に、各学校には成績優秀者は特待生として無料で学業に励める事ができるのよ。
試験内容は簡単よ、先ずは魔術と武器の技量の確認ね。この成績で一次審査が行われるわよ。次は筆記試験ね。歴史、計算問題、一般教養、テリスト君は取得しているスキルから判断すると此方が問題ね。
計算問題はうちの売り上げ計算で勉強すれば良いとしても、やっぱり歴史と一般教養が問題ね、それと文字を書けるかも問題ね」
魔術と近接戦闘なら問題無いな。其方はレベルをある程度上げれば体の動かし方は昔学んだ杵柄でたぶん行ける。
そして書く方は魔導書を諳んじるほどで文字すら丸暗記してるからこれも大丈夫。字が汚いかもしれない点はご愛敬だな。そして計算の方だがどうやら家にある品の値段札を見た感じ十進法の様だから売り上げ計算なら十桁程度でも計算は出来る。ただ、暗算は苦手だが。
「それなら五年の学校を受験したいな。特待生になれなかったら入学しない方向で、そして次の一年間を使ってお金を稼ぐよ。それなら家に負担を掛けなくて済むからね」
「その位気にしなくて良いのよ、白金貨一枚なら何とでもなるのよ」
本人ならそれでも良いんだけどね……。
「良いんだよ母さん。それでお願いがあるんだ、最初の武器一つ分のお金を貰えないかな」
どんなのがいるか分からないが、流石に素手では死にに行くような選択だ。せめて武器一つ確保すれば後は自力で調達できる。
その為にはいくらするのか分からないが買ってもらう他ないのだ。
「……一つ約束して頂戴、狩場を厳選して無理はしない事。そうね、登録はしてほしくないけどその辺りは魔物ハンターギルドに行って聞くと良いわね」
主要都市にはあると聞いていたが、首都なら当然あるのか。それに、登録しなくても情報を貰えるんだな。
「ありがとう母さん」
銀貨五枚を受け取った。
さて、受け取ったものの価値がさっぱりだ。さっきの学費でんでんの会話をした訳だが、其方の価値基準もさっぱりだ。ここは信用できるお店を紹介してもらい、行くのが最良だな、という事で聞いてみた。
「それで母さん。お勧めの武器屋さんは無いかな?」
「ライアちゃん所のお店がお勧めね。リーズちゃん案内お願い、母さんお店の番をしながら食事の支度をしておくから、魔物ハンターギルドにも行ったら一度帰って来るのよ。治ったと言っても病み上がりなんだから無茶は禁止よ」
はーいと返事をして二人で出かける。先ずはさきほど言っていたライアちゃんの家? が経営している武器屋さんだ。
家から大通りへ出る。そこは丁度果物屋さんが店舗を構えていた。帰る際に目印にしよう。そこまで行けば後はすぐそばだからすぐにわかるなと目星をつけておく。
そこから東へ行く事五分程度で到着して二階建ての建物の中に入る。
刀剣類を中心に槍、鈍器、弓が並んでいる。
「おはようーライアちゃんいますかー」
そしてのそのそと現れるおっさん、ドワーフか? 相当に背が低いが全身筋肉だるまといった感じだ。
「お? 久しぶりだなリーズにテリスト、遊びに来たのか? それならすまないな。今母ちゃんと食材の買い出しに出かけてるんだよ」
「違うのおじちゃん。今日来たのはお兄ちゃんの武器を買う為なの、銀貨五枚が予算なの」
「ほう、坊主も兄貴たちに触発されて魔物ハンターを目指すのか。それで、どういった武器が好みだ?」
刃物は殺傷力はあるが相手を選ぶんだよな、先ずは予備の武器を買う余裕が無い事から頑丈な事、それに手入れの手間を考えると鈍器か棒が良い、そして二者択一ならリーチの長い棒一択かな。
「金属製の棒はありませんか、長さは俺の身長位が一番良いですが」
「うーんあるにはあるが鍛冶仕事さえしていない素材の棒になるぞ、それなら短槍にしたらどうだ、若干長くて百五十cmって所だ。そうだな柄まで鉄製で銀貨三枚って所だ」
それなら予算内だな。扱う方法に関してもそれほど差異は無い。
「それを見せてもらえますか」
「坊主、口調が変わったか? まあいい、此処から此処までだ。手に馴染むのを探して裏庭に持って行け、そこで試せ」
案内された先の棚に立てかけられた武器たちだ。
全部軽く握った感じ持つ分には問題無い。後は刃先から石突き部分の丁度中間点を持った場合の重量配分だ。
中心と思われる部分を指一本で持って確かめ一番ズレの低い品を選び案内された裏庭に出る。
右足を引き半身になり左手で槍の中心を握り、右手で石突きギリギリを持ち上段中断下段への突き、足元への払い、刃先で相手の武器を跳ね上げそのまま回転させ石突きで突き、新体操のバトンを回すがごとく時計とは逆に回しジャンプ一番、着地に合わせて持ち替え大上段から真っ二つにするべく振り抜く。
最後に時計回りに回転させて自身も周り、遠心力を利用した横なぎの一閃を放って終了だ。
そして鑑定すると。
鉄の短槍
素材:鉄製
価値:銀貨3枚、銅貨5枚。
「おっちゃんこれにするよ、バランス重心もしっくりくる」
「ははは、それだけ動ければ棒を扱っても問題無いな、特注で作るか?」
「いや、止めておくよ。この代金も母さんに無理を言って出してもらったんだ。次からは自分で稼いでからお願いするよ」
「ほう、十歳にもならないのに達観してるな」
「店に並んでいた刀もおっちゃんが鍛えたんだよね」
「そうだぞ、それだけの腕が無ければ作るか? なんて声はかけないさ」
それなら頑丈で切れ味の良いのを頼んでみるかな、作れるか分からんけど。
「それじゃ大太刀を打てないかな? 将来になるけど」
「ん? 聞いた事のない名称だな、刀の種類か?」
「刃渡り90、握りを25から30、中心に鉄を入れて両サイドを鋼で覆う。重さにして通常の刀の約三倍、この注文だとおいくらほど?」
「鉄と鋼を混ぜる訳じゃないんだよな?」
「違う違う、鋼、鉄、鋼と重ねて接合させるんだよ」
「それは……可能かわからんな、少し試してみるか。値段はわからん、すんなり結合すれば良いが、手間が増えるようならその分上乗せになる」
こっちには技術が無いのかな、無いならないで仕方が無いか。成長したら自作するのも手だよな。
「料金はその時になったらだね。
それで一つ聞きたいんだけど、鍛冶スキル持ってたら設備投資すれば鍛冶できるの?」
「何言ってるんだ? 確かに鍛冶スキルLv一を取得する際には実際に火をおこして鍛冶仕事をするが、それ以降はスキルを使って自らの手で作るんだぞ」
ん? 焼いて叩いてって工程をすっとばす? 良く分からんな。
「え? 焼いて叩いて冷やしてといろんな工程が必要だよね鍛冶って、そんな事せずに手で金属をこねくり回して作ってるって事?」
「いやだからそれはな、最初の取得の際にする儀式みたいなもんで、覚えたら自らの手でするんだぞ。なんだ、覚えたいのか?」
理解に苦しむが本当なんだよな? スキルを取得したら手でインゴットをこねくり回して形を整えて販売してるって事よね。
刃入れの工程は必要だろうけど俺が言った棒なら自力調達出来るんじゃないかな、当然インゴットを手に入れる伝手があればだけど。
それなら指輪を大量に作って付与魔法で成金も可能そうだな。当然レベルが低くて今は無理だけど、永続化したスキルを付与する必要から消費MPは跳ね上がるだろうし、MP確保さえできたら稼ぎ放題だな。
「一応覚えてるみたいなんですけど、使い方がさっぱりで、聞いてみたかっただけです」
「それなら臨時雇いって事で俺が教えてやる。その気があるなら来い。但し、一日開けておけよ、半端な時間教えるってのは無理だからな」
「それは良いですね、ありがとうございます。来年から学校に行く予定で、可能なら在学中にお願いするかもしれません」
「魔物ハンターになるんじゃないのか?」
「それがですね、記憶がすっぱり無くなって変な知識ばかりがあるんですよ。それで勉学に励まないと将来危ういんですよ、そういう訳でまたねーおっちゃん」
そう一方的に伝え料金を支払って後にした。
注釈すれば槍は持ち歩いてる、勿論革製の保護具は装着済みだ。




