魔王、採用する 異世界百十四日目
予告なく修正することがあります。
パーティー加入希望者の募集をした翌日、ニーナ達は狩人組合から呼び出しを受けた。案内されて向かった先の修練場に、ニーナ達と変わらない年頃の男女と、一本の頭髪も無いのに腰まで伸びた白い顎鬚の老人がいた。
組合の職員が三人を簡単に説明した後、ニーナ達の前に椅子が用意された。
「先ずは自己紹介なのじゃ。妾はニーナ。このパーティーのリーダーなのじゃ。」
ニーナは名乗ると黒目勝ちの猫を思わせる眼を細めて、ギルス達を紹介しながら三人を見詰めていた。ニーナが全員を紹介し終えると、三人が自己紹介する事になった。
「うちはヤヨイや。商人してます。仕入れから販売まで一人でやるには疲れるさかいに、こちらのパーティーにいれてもらおかと思たんよ。」
切れ長の目は鋭いながらも色気があり、後ろで結んだ黒髪は有り得ない光沢を放っていた。少女が挑戦的な姿勢と声色で話すと、どことなく背伸びしている様にも見えた。
「わいはトロン、十六才や。わいはモンスター素材を主体に扱ってる商人や。当然、仕入れも売りも一人や。」
「むう、かぶった。」
緊張感の無い口調と表情でトロンが呟く様に言うと、ティアが驚きの表情で小さく呟いた。船を漕ぎ始めていた三人目の老人が組合職員に起こされて、立ち上がってニーナ達を睨んだ。
「良い天気じゃ。」
「ヨイテンキと。って、ボケとるやないか!」
老人がとんちんかんな言葉を発した瞬間、トロンが椅子を飛ばして立ち上がって叫んだ。
「よし、採用するのはトロンだ。」
「なんでよ。実力とか見んでもええんか。うちの戦闘能力は上級騎士に匹敵するで。」
「自然な流れる様なボケに、突っ込めなかった己の未熟さを悔いろ。」
「基準はボケに対する突っ込みの速度なのか。」
「それが全てだ。」
突然、カインが採用を宣言すると、ヤヨイは納得出来なかったのか抗議の声を挙げた。カインが無機質に告げると、ギルスも納得出来ないと言う様に声を挙げた。
「ふっ、不覚。うちはまだまだ未熟やった。今から修行や。今度、会った時には、うちが一択やて言わせたる。じゃあな、あばよ。」
俯いていたヤヨイは前髪を掻き揚げると同時に顔を上げ、清々しい表情で声高らかに言うと修練場を後にした。
「うむ。これ以上、お前達に教える事は何もない。さあ、行くがいいっ!我が教えを胸にっ!」
「おじいちゃん。こんな所にいたの。さあ、帰るよ。今日の晩御飯はおじいちゃんの好きな兎の香草焼きだよ。」
「孫よ。英雄の旅達じゃ。」
「はいはい。あっ、おじいちゃんの相手をしてくれて有り難うございますう。」
老人と孫のやり取りの後に、ニーナとティアの呻き声が響き渡る。刀の柄に手を掛けたカインの肩に、アデルがそっと手を置いた。槍の投擲姿勢に入っていたギルスを、エレンが羽交い絞めにして、二人の前に両手を交差させてバツを作るミリアンがいた。
修練場を後にする老人と孫を見送ったニーナ達は、疲れ切った表情のトロンを見た。
「わいが採用されたんやな。おおきに、めっちゃ頑張るで。」
「それ、ゴールドメーカーよね。」
「そや。ほう、一目見ただけしかも、鞘に入っているのに大したもんやな。」
「ゴールドメーカー?」
頭を下げるトロンの剣を見たアデルが、決定事項だと言わんばかりに聞いた。アデルの問いにトロンは、感心したかの様に答えるとニーナ達は一斉に声を挙げた。
「魔剣よ。いえ、カースドアイテムと言った方が良いかしら。モンスターを倒すと必ずアイテムがドロップするの。」
「呪いと言うより幸運だと思うが。」
「ドロップは金や。モンスターの評価額が落ちるんや。レアなんて待つより、確実に落ちる金や。」
「うにゅう、何処かで聞いた様なセリフなのじゃ。」
アデルの説明を聞いたトロンが自慢気に言うと、ギルス達は生温かい目になって小さな溜息を吐いた。ニーナが上を向いて呟いた時、少し離れた場所でヤヨイが大きなくしゃみを放った。
「取り敢えず、エルノワールにようこそ。歓迎するわ。」
「よろしゅうに。わいは商人で剣士や。王都近くの村生まれの王都育ちや。」
「私達は凄い辺境から遥かに遠い村の出身なの。少し、この世界の常識が乏しいから、貴方の知識で助けて欲しいのよ。」
「ほえー、そういうことでっか。あんさんのレイピア、とんでもない業物やろ。それに赤目のあんちゃんのナイフ。それは・・・魔王剣?まっ、魔王剣やて!」
トロンはアデルと会話しながら、遠慮の欠片もなくニーナ達を真剣に観察していた。正確にはニーナ達の装備を観察していたようだ。そして、カインの腰裏に装備された二本の黒いナイフを見て、驚き過ぎたのか甲高い声で叫んだ。
「へえ、アイテム鑑定のスキル持ち、隠蔽を見破るとは、なかなかやるわね。」
「なっ、何を呑気な。魔王剣っていうのわな。トゥルーデーモンどころか、アークデーモンでも装備不可能や。魔力を吸われて消滅するんやで。まして、人族なんかはちょっとでも触れたら、即灰になるほどの恐ろしいアイテムやで。それを二本も持って平気やて、あんたは何者や。まさか、インペリアルか?」
「彼も私も人間よ。多分。」
アデルの答えに納得出来なかったのか、トロンは更に唾を飛ばしていていた。だんだんと支離滅裂になるトロンの頭に、ギルスとエレンが笑顔で同時に拳を叩き込んだ。その痛みを想像したのか沈痛な面持ちで見詰めるミリアンの後ろで、ニーナとティアが手を合わせて目を閉じた。
「あらあら。でも、悪い人間では無さそうね。カイン、連れて帰って。」
露骨に眉を寄せて大きな溜息を吐いたカインが、トロンの片足を掴んで宿屋まで引き摺って行った。途中の段差を通るたびに、踏みつぶされたカエルの様な呻き声が聞こえた。そして、宿屋に到着したニーナとティアは、階段を上り始めたカインに再び手を合わせた。
後頭部を何度も打ち付けられたトロンが目を覚ました頃、宿屋の娘が夕食の準備が出来た事を告げた。食堂に向かうニーナ達の後ろを、トロンは後頭部を手で摩りながら着いて行った。
「ふっふっふ、聞かせてやるのじゃ。妾達の正体を。喰らい尽くしてやるのじゃ。全ての料理を。」
空♂:ふっふっふ、私は成し遂げたのだ。
ア♀:成し遂げるなら、この物語を終わらせて。
空♂:これはまだまだ続くのだ。別口で良い事が有ったのだ。
ア♀:もう少し、投稿のペースを速めて欲しいのだけれど。
空♂:にゅにゅにゅ、何を成し遂げたか聞かないのだ?
ア♀:興味なし。ペースアップを要求する。その他、ギルスとエレンから出番が少ないと苦情が。
空♂:にょっ!
ア♀:ティアはともかく、ミリアンから苦情来たら知らないから。
空♂:にょおぉぉ。まだまだ、続けます。




