31.残り一年。
二章が始まりました!
よろしくお願いします!
一年生最後の行事となる球技大会を終え、春休みは特に何もなく、いつの間にか二年生としての最初の日である、始業式を迎えた。
登校中、理香が俺に話しかけてきた。
「今年も同じクラスかな?」
「どうだろうね」
何気にクラス替えに緊張してしまっている俺は、適当に相槌を打つ。
すると、理香は人差し指同士をつんつんさせて、何か言いたそうにしていた。
「……あ、彩人はさ、どっちがいい?私と同じクラス?それとも別々?」
「そ、それは……」
どう答えればいいのだろうか……
自分自身、分かっていない。
今までだったら同じクラスと迷わず言うが、もうそうとはいかない。
俺はどっちがいいんだろうか。
どっちを、望んでいるのだろうか……
「分かんないなぁ、こればっかりは運次第だから」
わざと、曖昧に答える。
理香としては、ちゃんと答えてほしかったのだろう。
頬を膨らませて、歩く速度を少しだけ速めて歩き出してしまった。
それに追いつこうと俺は走ろうとすると、くるりと理香が後ろを振り向いた。
「……彩人!早く行こ!」
どうやら、俺の事を本気で怒っているわけではないようで、機嫌が直り俺の事を待ってくれた。
その時の顔を見てやはり思うのだ。
あぁ、やっぱり可愛いな……と。
これから先も、理香の隣にいたいなぁ……と。
***
学校に着いた俺と理香は、新クラス名簿の載っている紙が掲示板に貼られているのを見つけた。
「ついに、分かっちゃうんだね……!」
理香は、わくわくと言った感じで、掲示板前まで走った。
それに追いつくために走って、掲示板まで向かう。
「ねぇ彩人、先にさ、私と彩人が同じクラスか確認してくれない?」
「うん、いいよ」
毎年理香は、最初に俺に見させてから結果を聞いてそれが嘘か本当か確認するために、自分も見るという謎システムを採用している。
一応、樹と同じクラスであるかどうかも同時に確認するか……
恥ずかしくて言えてないだけで、多分、理香はそれが一番知りたいだろうし。
俺もそれなりに緊張してはいるので、ゆっくりと目を開けて俺と理香と樹の名前を探す。
「あっ、俺いた」
「ど、どうだった!?」
「まだ、分からないよ」
余程、結果が気になるのか理香は「うぅ~!」と声を漏らす。
俺の苗字は雨宮でア行なので、割と早く見つかる。
あとは、その下に樹と理香がいるかどうか。
「伊藤……川上……小林……さっさささ」
サ行に突入するところで、一度目を瞑ってから目を思いっきり開いてサ行を見る。
「佐藤……斎藤……佐伯……理香……あっ、理香の名前だ」
まさかまた同じクラスになると思わず、見間違いだと思い俺はもう一度ア行から確認する。
それと同時に、心臓の鼓動が早くなる。
「雨宮彩人…………佐伯理香……間違ってないのか……あ、樹も一緒だ」
何とも言えない。
嬉しいけど、嬉しいとははっきり言えない。
そんな変な気持ちになっていると、理香が俺の袖を引っ張った。
「どうだったの!?同じクラスだった?」
理香にも聞こえるように言ったつもりだったが、どうやら周りのはしゃぎ声で聞こえなかったらしい。
「えっとね……」
「う、うん……」
理香の反応が面白いので少しだけ溜めて言う。
「一緒だったよ、樹もね」
「え、本当に!?」
「うん、確認してみなよ」
俺がそう言うと、理香は嬉しそうに紙を見て確認する。
「本当だぁ~!やったぁ~!」
理香は、信じられないといった様子で瞳を輝かせて俺に抱き着いてくる。
「ちょっと、理香そういうのは……」
俺が『好きな人とやりなよ』と言おうとした瞬間に、理香は俺に抱き着くのをやめて俺から離れた。
「ご、ごめんね……はしゃぎすぎちゃった……!」
少し顔を赤くして理香は謝る。
喜んだ理由が俺と一緒なのか、はたまた樹と一緒だからなのか……
そんなの聞かなくても分かる。
あぁ、俺は理香のことを諦められるのだろうか。
抱き着かれただけで、こんなにドキドキして。
これから先も、ずっと隣にいたいと願ってしまう。
その気持ちを人は何て呼ぶのか。
そんなの、自分が一番よく知っている。
気付かなければよかった。
鈍感でありたかった。
気付かなければ、今後も理香と一緒にいれるのだろう。
毎朝一緒に登校して、昼は一緒に食べて。放課後は二人笑い合いながら帰る。
でも俺は、その先を夢見てしまった。
デートを一緒にする姿を。
今とは違う関係で、俺に接してくれる理香の姿を。
3年になったら受験でそれどころじゃなくなるだろう。
だからきっと、この一年は俺と理香の関係を終わる…
理香の隣にいられる最後の一年なのだと思う。
あぁ、恋なんて、しなければよかった。
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