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第2話【読書モード】ズレているのは、誰か
では、なぜズレるのか。
作品は変わっていない。
だとすると、変わっているのは——読む側。
ただし、それは「人が変わった」という話ではない。
もっと細かい話。
同じ人間でも、読むタイミングによって状態が違う。疲れている日であれば、「深く考えるのはしんどい」。だから「Yes」の数は減る。せいぜい2〜3個。
追われるものもなく余裕のある日なら「深く考える」のはむしろ楽しい。「Yes」の数は5〜6個になるかもしれない。
そのときどき、自分の“受け取り方”は微妙に変わる。
つまり、こういうこと。
人は固定された「読者タイプ」を持っているのではなく、その瞬間ごとに異なる「読みの状態」にいる。
同じ人間の中に、いくつもの読者が存在している。
これは「あなたの読み方が間違っている」という話ではない。
むしろ逆。
読むたびに感じ方が変わるのは、あなたが「生きている」証拠。
そう考えると、前作でやっていたことの意味も、少し変わる。
あれは「人を分類する試み」ではなく、「そのときの状態を切り取る試み」だったのかもしれない。




