第3話 【共犯関係】共犯が「深まる」条件――なぜある本では刺さり、ある本では刺さらないのか
では、これらの共犯関係はどのように深まるのか。いくつかの条件を考えてみる。
条件①「信頼」――書き手への信頼感
まず、書き手への信頼が必要。「この書き手は、私をがっかりさせない」という確信。それは、これまでの読書体験の積み重ねから生まれることもあれば、冒頭の数行で感じる「言葉の手触り」から生まれることもある。
もしこの信頼がなければ、読み手は「余白」を「説明不足」と感じる。創造する共犯は成立せず、物語はただの「わかりにくいもの」になる。
条件②「覚悟」――読み手自身の姿勢
次に、読み手自身の覚悟が必要。「騙される」ことを受け入れる覚悟。「わからない」ことを受け入れる覚悟。答えを出さなくてもいいという覚悟。
この覚悟がなければ、読み手は「答えを早く教えてくれ」と焦る。対話する共犯は成立せず、物語はただの「もどかしいもの」になる。
条件③「タイミング」――自分の現在地
そして、最も見落とされがちなのが「タイミング」。同じ作品でも、読むタイミングによって共犯の深さは変わる。疲れているときは、観測する共犯で十分かもしれない。でも、心に余裕があるときは、対話する共犯や創造する共犯を求める。その「現在地」によって、読み手が求めている共犯のタイプは変わる。
だから、もしある作品で「共犯できなかった」と感じても、それは作品のせいではない。ただ、タイミングが合わなかっただけかもしれない。時間を置いて、もう一度開いてみる。そのとき、共犯が深まるかもしれない。




