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第1話【涙の正体】なぜ泣いたのか、説明できない
物語を読んで、泣いたことがある。
作者はよく泣く。
いや、よく泣く時期もあれば、そうでない時期もある。
えっ、ここで泣く?、という場合もある。
その"なぜ"をこれから深掘りしていきたい。
ページをめくる手が止まり、気づけば涙が落ちている。その瞬間は、確かに覚えている。けれど――なぜ泣いたのかと聞かれると、うまく説明できない。
悲しい話だったから、というわけでもない。
登場人物に共感したから、とも言い切れない。むしろ、なぜそこで泣いたのか、自分でもよくわからないことがある。
さらに、不思議なことがある。
同じ作品を読み返したとき、前は泣いたはずなのに、今回は何も感じなかった。
逆に、以前は何も思わなかった場面で、突然、涙が出てきたこともある。
この違いは、どこから来るのか。
作品は、変わっていない。
文章も、展開も、結末も、すべて同じはず。
それなのに、受け取る感情だけが変わる。
ここで、ひとつの疑問が生まれる。
泣かせているのは、本当に「物語」なのか。




