国外追放!それって神様からのご褒美ですか!
あの後、フェルナンドはお前なんか死罪にしてやる!――と騒ぎながら治療のため側近たちに引きずられ、王宮のホールを後にした。
さすがのアメリアも、反省する・・
殴るなら2回ぐらいに止めておくべきだったと、そう思ったのだ。
つい、今までの鬱憤からフェルナンドをタコ殴りにしてしまったが、遠巻きにこちらを見ていた貴族たち、特に年頃の令嬢は扇子で口元を隠しひそひそ話をしていた。
「嫌だわ・・あんなに殴られて、王族の威厳もないなんて・・それに母上助けて!とか言っているしひょっとしてマザコン・・」
「今までは、素敵な方だと思っていたのにがっかりだわ」
「いくら王族でも・・ああいう方はちょっとね・・」
フェルナンドに対する落胆と、蔑みの声が多く聞こえてきた。
結局彼の服も破け、顔をボコボコにして、ぼろ雑巾のような状態にしてしまったのである。
後にフェルナンドにとっては、この出来事は大きな汚点となったのだ。
「え~! 身分剥奪の上、国外追放でいいんですか!!神様ありがとうございます。心より感謝いたします」
「ああ、確かに伝えたぞ・・」
アメリアは満面の笑みで、目を輝かせたのだ。そして、神に心からの祈りを捧げる。
これでコルセットなんか着なくてもいいし、今まで叔父様に禁止されてた、好きだった薬師の仕事にも戻れる!薬草を摘んだり、薬を作ったりまたできるなんて、なんて幸せなの・・
彼女は謹慎のため閉じ込められた個室で、処分の内容を聞かされたのだ。
処分の内容を伝えに来た行政官は少し・・いや、かなりドン引きしていた。
今までは、身分剥奪のうえ国外追放と伝えるとうな垂れ、悲しみに打ちひしがれる者たちは見てきたが、こんなに大喜びする貴族、いや令嬢など初めて見たのだ。
行政官は羊皮紙に書かれている内容を何度も確認する。言い間違いなどしていないはずだと自分に言い聞かせるが、本当に訳の分からぬまま彼は、アメリアの部屋を後にしたのだ。
そして彼女は数日後、身分剥奪の上国外追放になったのである。