アメリアの告白
「それが…貴女が身分剥奪のうえ国外追放になった理由ですか?」
「はい…」
セルフィスは呆然とアメリアの顔を見つめていた。
一方、アメリアといえば小動物のようにもぞもぞと小さくなり、穴があったら入りたい心境のようだ。
アメリアが村に来て一週間が経っていた。
彼女の住まいは村長との相談のうえ、一人暮らしをしている村のお婆さんの家になった。そこから、日中は診療所に通っているのだ。
一週間が経ちアメリアは薬師として診療所での仕事にも慣れ、今は医師であるセルフィスの助手という形で働いている。
そして、村の診療所は今日も朝から患者さん達で混んでいた。
お昼も過ぎようやく途切れた頃合いに休憩がてらにお茶を淹れ、いつものように一休みをしていた。
そこでアメリアは、思い切ってこれまでの経緯を告白したのだ。
セルフィスは、彼女の衝撃の告白を聞き唖然としていた。
気分を落ちつける作用があるアメリアが淹れてくれたハーブ茶を一口飲み心を落ち着かせる。
ミントの爽やかな清涼感とセージの渋みがよく合い非常に飲みやすくなっている。また、少量のラベンダーのほのかな香りが生かされ見事な比率具合だ。
季節は夏の初め。これから蒸し暑くなる今の季節に、よく合った配合の薬草茶だ。
またここ最近セルフィスは風邪ぎみで喉が痛かったこともあり、アメリアがそれを配慮し喉の炎症に効くハーブも淹れてくれたようだ。
流石はアルベルト殿のご息女だけのことはある。いや薬師としての彼女の才能かもしれない。その才能がつぶれてしまわなくて本当に良かったと今はお茶を飲みながら安堵していた。
思考が移ろいつい別なことを考えてしまったが、彼女としては思い切って話してくれたのだ。ここは真摯に向き合わなくてはいけない。
「それで、第二王子であるフェルナンド殿下のご容体は…まさか、再起不能まで殴ったのでは…!?」
「そんな…! もちろん常識の範囲内で手加減はちゃんとしてあります。顔の腫れも、時間が経てば治ります」
「完治の見込みがあるのなら…まあ、かろうじて大丈夫でしょうね」
常識の範囲内に殴ったと彼女は言ってはいるが、基本アメリアの考えはちょっとズレている。しかしそこは触れないでおこう。
まあ相手が無事なのなら、ギリギリではあるが身分剥奪と国外追放だけの処分で済んだのだ。もし彼女が本気でボコボコにしていたら死罪は免れなかった。セルフィスは心の中で神に感謝する。
そして殴った相手がとりあえず無事だとわかり、ほっと安心したのだ。
アメリアが本気で殴った場合…成人男性でも即死。良くって頭蓋骨が陥没して日常生活を送ることはまず不可能。そうならなかっただけでも良しとする。
しかしここ隣国までその名が届くほどの馬鹿王子が、侯爵令嬢に殴られたという話は緘口令をひいても、醜聞としてすぐに広がってしまうだろう。
不謹慎だが…別な意味で可笑しくって仕方がなかった。さすがに彼女の前で笑っては気の毒なので笑いを堪えるのに苦労したが、このことはアメリアには黙っておくことにする。




