37:ジョーカーさんと美人姉妹
「おい、し、篠塚。か、かかかかかか、会長が来てる」
「ぶっ」
美紅とアイリスと智也と昼食を食べ、ゆったりとした時間を過ごしていると、廊下側で食べている男子が俺を呼んだ。すごく、動揺し、購買で買ったパンのカスを飛ばしている。
俺も、飲んでいた牛乳が器官に入りむせた。
「ごほっ。げほぉっ。な、ななななな」
まるで、俺を呼ぶ男子のように声をつらませて立ち上がり、男子の方へ駆け寄る。何で、深琴先輩がいるんだよ! 男子の目線が俺に突き刺さる。当たり前だ。先輩美人で成績優秀なのに授業以外ほとんど図書室の奥の部屋に篭っている。三年生とも離す事のない先輩が俺だけと話すのだ。女子とすらも話さないという。そんな近寄り難いが憧れの先輩が何にも特徴のない俺に話しかけるのだ。誰もが嫉妬と驚愕の目線を送るに決まっている。
「先輩、どうしたんですか!?」
廊下に出ると、男子の言ったとおり、深琴先輩は笑って立っていた。
「あら、陽向くん。ちょっと用事があったの」
「はあ」
「今日、図書室に来てくれないかしら」
「はあ!?」
「あら? ダメなの?」
「嫌ですよ! 何でですか! 俺には家に帰ったら藍に飯を作んなきゃいけないし、時間ないです! それに、俺何も取引してないですよね!?」
「ええ」
「じゃあ、なんで行かなきゃいけないんですか!? それから、教室には来ないで下さいといったでしょう! 用があるなら真琴に伝えてくださいと言ったじゃないですか!」
「嫌なの? あたしは、最近暇だから、陽向くんと話たいって思って」
「俺をいじりたいだけでしょう!」
「いえ。ちゃんと、最近どうなの? 見たいな事は話したいの」
「真琴がいるじゃないですか」
「じゃあ真琴も呼ぶわ」
「何故その展開に!?」
俺が突っ込むのをスルーして先輩は「じゃあ、放課後」と言って去っていった。結局俺の拒否権はないんだよなぁ。
溜息をついて、教室に入る。すると、まるで打ち合わせをしていたように、男子全員が立ち上がった。
「てめぇ……しーのーつーかー!」
全員が俺に襲ってくる。俺は、抵抗する暇も無いまま拘束された。
そして、五時間目を告げるチャイムが鳴った。
「失礼しまーす」
俺は気だるく挨拶し、嫌々ながら図書室の奥の扉を開けた。アイリスは美紅と帰るように言ったので、いない。こんな危険なところに、アイリスを呼べるか。
「おお、陽向! まさか、僕のためにここに来てくれるとは……なんと言えばいいのやら……うん、結婚しよう!」
「お前のために来てねーよ! しかも、結婚ってストレートすぎるだろ! なんと言えばいいのやらの使い方間違ってとるわぁ!」
「そーよ、真琴。結婚するのはあたしなんだから」
「そこもちげぇぇぇぇぇ!」
あー、悲しくなってきた。泣いてもいいですか? つか、泣かせてほしいです。
俺は、溜息をついて開いている席に座った。
「で、どうして、俺なんか呼んだんですか」
「それはね、文化祭の事が聞きたくて」
「文化祭?」
「ええ。出し物は、ディズニー喫茶店と聞いたわ。そして、陽向くんは女装すると」
「…………まじですか」
「ええ。大マジ。書いてあるもの」
「俺、女装するんですか」
「ええ。女装するの」
実行委員、次に会ったら、殺しちゃおっ☆(陽向、心の俳句)
「で、その衣装だけど、あたしが作ってもいいかしらっ」
目を輝かせて、深琴先輩が言う。
「しかしですね、それは衣装係が――」
「あたしが作りたいの。貴方が衣装係の子に言えばきっとオッケーしてくれるわ」
「いやいや、自分で言ってくださいよ」
「あら、教室にもう二度と来るな。次に来たら、俺はお前に罰を与えてやる。ぐへへ。と言ったのはどこのどいつかしら?」
「少なくとも俺じゃないですね」
「ええっ。陽向くんが言ったじゃない!」
「教室に来るなとは言いましたけど、先輩に罰を与えてやるまで言ってません。しかも、俺はぐへへみたいな下品な笑い方をしません」
「じゃあ、笑ってみて」
「ぐへへ」
「あら、そっくり」
思わず、乗ってしまった。本当に、俺はぐへへって笑わないから。みんな、誤解しないでね?
「分かりました。先輩が作ってください。どんなテーマかはまだ決まっていませんので、俺が伝えに来ます。露出度の低いものにして下さい」
「分かったわ」
深琴先輩は嬉しそうに笑った。いつも、そうしてれば良いのに。もったえない。
「じゃあ、俺はこれで。本当に、アイリスが腹をすかせていますので」
「ええ。もう、言っちゃうのぉ」
「また来ますから」
先輩に軽くお辞儀をして去っていく。帰り際、
「最近僕の出番が少ないのは何故!?」
と真琴が叫んでいたが、あえての無視。その台詞、どこかで聞いたぞ。それと、お前は、これ以上で番が増えると対応できないから、出なくて大丈夫です。
今回は最近深琴ちゃんがでていなかったので、藤原姉妹を出しました。